ワークシェアリングとは【メリットや導入におけるポイントについて解説します】

記事更新日:2021年08月25日 初回公開日:2021年08月25日

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近年、過労が原因とされる事故が発生したことなどもあり、一人当たりの労働時間や労働量を見直す必要性が再認識されています。そこで注目されたのがワークシェアリングです。ワークシェアリングを行うことによって一人当たりの労働量を調整できるだけでなく、社会全体の雇用量を増やすことにもつながります。しかし同時にデメリットがあるのも事実です。この記事ではワークシェアリングによってもたらされるメリットとデメリット、さらに導入する際のポイントについて解説します。社員のハードワークを問題視しているという企業の担当者の方は、ぜひご一読ください。

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ワークシェアリングとは

労働者同士で仕事を分け合うこと

ワークシェアリングとは、これまでは一人で担当していた仕事を複数人に分けるという考え方です。欧州で失業者が増加してしまったことをきっかけに、ワークシェアリングは注目を集め始めました。一人当たりの仕事量を減らすことによって、同じ仕事量をこなすには新たな雇用を生み出す必要があるためです。このように失業対策として注目され始めたワークシェアリングですが、日本においては過労を防ぐという目的でも注目されています。

ワークシェアリングが注目される背景

失業率の増加

先ほど述べたようにワークシェアリングが注目されたはじめのきっかけは、失業率の増加です。一人で行っていた仕事を複数人で分担するので、必要な人材の数は必然的に増えます。これによって企業は新たな人材を雇用することになり、社会全体として見ると失業者の数は減少すると考えられます。失業率は国の経済状況にも大きく関係する指標であるため、ワークシェアリングの導入は企業だけでなく国全体に良い影響を及ぼすともいえるでしょう。

過労による事故の増加

過労による事故の発生も、ワークシェアリングが注目されている理由の一つといえるでしょう。一人が抱えている業務量があまりに多すぎると、残業をはじめとして労働環境が悪化していくことが考えられます。その結果として社員が体調を崩してしまうだけでなく、会社を辞めてしまうことも充分にあり得ます。ワークシェアリングの導入で一人あたりの業務量をうまく調整し、社員が快適に働ける環境を整えることによって自然と会社への定着率も向上するでしょう。

ワークシェアリングの目的

社会全体の雇用数を増やす

社会全体の雇用数を増やすことが、ワークシェアリングを行う大きな目的の一つです。雇用数が減少する、すなわち失業者数の割合が増えると国にとって良い影響はほとんどありません。働きたくても雇用してもらえないという人材にとっては、ワークシェアリングによって雇用を創出することは大きな助けとなるでしょう。このようにワークシェアリングの導入は企業や個人に取ってだけではなく、国全体の経済にも影響を及ぼすことが考えられるのです。

労働者ひとりひとりの負担を減らす

ワークシェアリングを実施すると労働者一人あたりの負担を減らすことができますが、これも大きな目的といえるでしょう。一人当たりの業務量が必要以上に多いと、過労や退職につながる可能性があります。それだけではなく企業のイメージダウンの原因にもなってしまい、優秀な人材を採用することが難しくなってしまうということも考えられます。常に良好な健康状態で業務に取り組んでもらうためにも、ワークシェアリングを導入して社員の負担をできるだけ減らすことが大切です。

ワークシェアリングのメリット

業務の効率化が図れる

ワークシェアリングの導入によって、業務の効率化が図れるというメリットがあります。一人当たりの業務量が減るということが、非常に大きな要因といえるでしょう。今までこなしてきていた業務の量が減り、社員にとっては少なからず余裕がうまれることになります。すると任された業務に対してさらに高いクオリティで成果を残すために、様々な工夫を取り入れることも可能になるでしょう。業務の量が減った分、その質を追求することが可能になるので企業全体として業務の効率化が見込めます。

社員のモチベーションが上がる

社員のモチベーション向上も、ワークシェアリングによってもたらされるメリットの一つです。日々の残業で身体的に疲れてしまうことや精神的なストレスも減るため、仕事以外の時間も充実させることが出来るでしょう。休暇を利用してうまくリフレッシュすることによって業務に対して常に高いモチベーションで取り組むことができます。社員のモチベーションは企業の生産性にも大きく関係するので、ワークシェアリングは生産性向上にも直結する取り組みともいえるでしょう。

企業のイメージアップにつながる

ワークシェアリングは企業のイメージアップにも役立ちます。リストラなどによって人員の削減を行っている企業に比べて、多くの労働者を雇用している企業のイメージが良いのは当然といえるでしょう。また、一人当たりの業務量が適切であることも企業のイメージを大きく向上させるのに重要なポイントです。優秀な人材を採用するためにも企業のイメージは非常に大切ですので、採用活動のためにワークシェアリングで企業のイメージアップを図るのも有効な手段といえるでしょう。

ワークシェアリングの種類

雇用創出型

雇用創出型のワークシェアリングは現在休職中の人を雇用できるように、労働者一人当たりの勤務時間を短くするというものです。新規採用を活発に行うことになるため、失業者の数を減らすことを重要視した形式となっています。しかし一人当たりの労働時間の減少によって、給与額が減少してしまうということも同時に考えられます。そこで国によってはそうした取り組みを行っている企業に対して、国からの助成金を与えているところもあります。

雇用維持型

雇用維持型と呼ばれる、中高年の社員を対象に実施するワークシェアリングもあります。中高年対策型のワークシェアリングと呼ばれることもあります。中高年とは主に定年退職を迎える社員のことを指しており、ワークシェアリングの実施によって定年後も雇用を続けるという目的があります。業務の経験が豊富な社員を定年後も継続して雇用することによって、企業としては人材育成にかかるコストを抑えられるというメリットがあります。

緊急対応型

緊急対応型のワークシェアリングは何らかの理由によって一時的に企業の状況が悪化、もしくは業務量が減少した際の一時的な措置として実施されます。本来このような状況に陥った場合、人員の削減を行わなければならないという場合も考えられます。しかし急な人員削減は企業のイメージダウンはもちろん、社員との信頼関係にも当然悪い影響を及ぼすことになるでしょう。さらに、再び業務量が増加した場合にも人手不足が起こってしまう可能性があります。給与の減少などを避けるのは難しいですが、雇用の維持によって企業の信頼性を保つことができます。

多様就業促進型

多様就業対応型とはその名の通り、多様な就業形態をとることによって雇用を維持するワークシェアリングの形式です。様々な事情によって正社員と同じようにフルタイムで勤務することが難しい労働者に対して、働く機会を与えるのがこのワークシェアリングの目的です。パートタイム勤務の導入は多様就業対応型のワークシェアリングの一例といえるでしょう。特に女性社員の多い企業などにおいては、妊娠や子育てなどの理由でフルタイム勤務が難しいという状況が考えられます。そのような社員たちが退職という選択肢をとらなくても済むように、有効な手段だといえるでしょう。

ワークシェアリングの事例

オランダ

オランダは、ワークシェアリングに積極的に取り組んでいる代表的な国の一つです。1980年代のオランダが主に実施してきたワークシェアリングは雇用創出型のもので、短時間の雇用を新たに生み出すことに注力しました。オランダでは企業が新たな雇用を創出するだけではなく、労働組合や政府の協力もあってワークシェアリングの効果が発揮されました。その結果オランダの失業率は1983年には11.9%だったのに対して2001年には2.7%まで低下し、ワークシェアリングがその効果を十分発揮したといえるでしょう。

フランス

フランスも1980年代にワークシェアリングを実施し、一週間の法定労働時間を40時間から39時間に短縮させました。しかし短縮時間が短かったということもあり、その効果は大きいものではありませんでした。その後1998年には一週間の法定労働時間を35時間まで短縮し、さらに早期に導入した企業へのインセンティブ措置なども取られました。フランスでの事例は、特に政府の主導によって実施されたワークシェアリングの一例といえるでしょう。

ワークシェアリングを円滑に導入するためのポイント

業務内容の見直しと分担を行う

ワークシェアリングを円滑に導入するために、まずは業務内容の見直しと分担が必要となります。具体的にはそれぞれの業務に対してどれくらいの人数が必要なのか、さらにどのような方法で取り組めば効率がいいのかなどを分析する必要があるでしょう。もしこれまで行っていた業務の中で無駄だとされるものがあれば、ワークシェアリングの導入をきっかけに改善するようにしましょう。業務の分担を適切に行うことによって、引継ぎもスムーズに行うことができます。

引き継ぎにかける時間を最小限にする

業務の分担と関連して、引き継ぎにかける時間は最小限に抑えるように心がけましょう。これまで一人で行っていた業務を複数人で分けることから、新たにその業務に取り組む社員にはその内容を的確に指導する必要があります。しかしだからといってその引き継ぎのために必要以上の時間をかけてしまっては、生産性が下がってしまいます。ワークシェアリングによって勤務時間はこれまでよりも短くなることが想定されるので、引き継ぎに時間がかからないような仕組みを作るように心がけましょう。

業務マニュアルを作成する

ワークシェアリングの実施において、それぞれの担当業務におけるマニュアルの作成は非常に効果的です。特に先ほども述べたように業務の引き継ぎはできるだけ時間をかけずに行う必要があるため、初めてその業務に携わる社員が見ても内容を把握できるような業務マニュアルを作成するべきでしょう。マニュアル作成のために一時的に業務量が増えることも考えられますが、長期的な視点で見れば業務の効率化につながるので、入念に作成しましょう。

まとめ

ワークシェアリングで社員が安心して働ける環境を作りましょう

ワークシェアリングを実施することによるメリットやデメリット、導入の際のポイントについてお分かりいただけたでしょうか。実際に海外においては、ワークシェアリングの導入によって離職率の減少などの成果がもたらされた国もあります。それらと比較するとまだ日本においては導入の事例が多いとはいえませんが、働き方が多様化していくと考えられる中でワークシェアリングはより重要な施策となるでしょう。国と企業のためだけではなく、社員一人一人が安心して働ける環境を作り出すために、ワークシェアリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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