社内公用語英語化のメリット・デメリット【導入企業・失敗例も】

記事更新日:2020年06月12日 初回公開日:2020年06月05日

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経済のグローバル化という言葉が定番化し、2010年頃より日本企業でも社内公用語を英語化させる動きが話題になりました。本記事では、社内公用語を英語にする試みについて、メリットやデメリット、導入時の注意点や導入事例に関して解説しています。日本では楽天が大規模な英語化を行ったイメージが強いですが、他の事例を聞くことは少ないのではないでしょうか。英語化に失敗してしまう理由について知っておくことも参考になりますね。企業のグローバル戦略として社内公用語の英語化がいかに効果をもたらせるのか、その実情を確認していきます。

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なぜ社内公用語を英語にするのか

日本企業の海外展開が避けられない情勢

日本企業が英語を社内公用語とする理由の一つに、現代のビジネスにおいて海外展開が必須となっていることが挙げられます。グローバル化により、支社や工場など海外拠点を持っているのが当たり前となったことで、現地スタッフとの円滑なコミュニケーションも必要となりました。世界共通語である英語を使うことで、全世界の拠点と共時的にビジネスを進めることができ、長い目で見ると業務効率のアップ、企業価値のアップに繋がると考えられています。

優秀な人材を世界中から確保できる

また、英語を社内公用語とするもう一つの理由として、優秀な人材の確保のためという点が挙げられます。今までは優秀な人材を欲している企業と、技術力の高い日本企業で働きたい外国人の間で、言語の壁がネックとなっていました。社内公用語を英語とすることで、外国籍の方にも安心した労働環境を提供できます。言語に捉われないダイバーシティ経営を行うことで、世界中の優秀な人材を集めやすくなり、結果的に企業の戦力を向上させられると言われています。

社内公用語を英語にするメリット

海外取引のビジネスチャンスが増える

次に社内公用語を英語とすることで企業が得られるメリットを確認します。第一には、海外取引におけるビジネスチャンスが増えること。日本国内のマーケットは少子高齢化の影響から縮小傾向にあるため、新規マーケットの開発は急務です。未知の顧客を開拓し、ビジネスを展開していくためには社員1人1人が英語を使い、海外取引を増やしていくことが望ましいとされています。新規ビジネスの開拓の根幹となるのはやはり人と人との信頼ですから、通訳など第三者を介さず、迅速なコミュニケーションが取れることは強みになるでしょう。

人件費の削減につながる

第二に、人件費を中心にしたコストカットができるという点です。通常は、海外企業や現地スタッフと商談や会議を行う際に、通訳を雇ったり、英語が話せる社員に担当させたりと、新たなコストまたは負担が発生します。参考書面や議事録も2言語で作成しなければならないケースが多く、どうしても二重に費用や手間がかかります。英語公用語化をし、全社員が英語を話せる、書面は全て英語、という状況であれば、上述のような手間やコストは軽減できるでしょう。

社内公用語を英語にするデメリット

会議の質が下がる場合がある

一方で、もちろん英語を社内公用語とすることでのデメリットもあります。まずは、英語での会議などでうまく説明がしきれず、議論内容の質が下がる場合があることです。第二言語同士の会話は、誤解が生じやすかったり、相手が理解できているのか不安になってしまったり、ということも多いと言われています。日本語には曖昧なニュアンスを含むものや、場の空気を読むといことも多いですが、英語公用語での会議となるとうまく表現できない場合も多いでしょう。

導入までの準備期間がかかる

また、英語公用語を導入するにあたり、今まで利用してきたシステムやデバイス、書面などを変更する準備が膨大にかかることもデメリットの一つです。社員の英語教育も導入する必要があり、基本的には英語学習にかかる費用も企業が負担することがほとんど。社内の規則やシステムが多ければ多いほど、また社員数が多いほど、準備にかかる時間とコストが大きくなります。このような準備期間のコストを投資と捉えられるかどうかがポイントになるでしょう。

英語が嫌いな人が離職してしまう

さらに、英語を苦手とする社員が離職してしまうという点も、英語公用語化のデメリットとして理解しておきましょう。会社として社員教育にはサポートをしますが、どうしても苦手意識を感じる社員は一定数いるでしょう。「英語化」によりモチベーションが下がってしまい、優秀な人材が離職してしまうことは会社にとっても痛手となります。長い目で見ると、世界レベルで優秀な人材を集められると考えられていますが、初期段階ではこのような事象は避けられません。

社内公用化を英語にするポイント

まずはメールや資料から英語化を目指す

では、英語公用語化を行うためには、どんな点に注意すれば良いのでしょうか。第一には、メールや資料など一部業務から徐々に英語へシフトしていくことです。社員が全く英語に不慣れという状態であるのに、全てを英語化してしまうと、業務効率が著しく低下してしまいます。全てを英語化するのではなく、まずはメール・書面など読み書きから実践してみること。これは日本の英語教育にも馴染みやすく、実際の英会話よりは格段に実践しやすくなります。

研修や教育を通じて社員全員の意識を高める

次に、研修や教育を通じて、社員全体に英語化への意識を高めていくことが大切です。どんな活動であっても、導入段階に大事なことはその目的を明確にし、目的意識を一人一人が理解して取り組むことですよね。社内公用語を英語とすることで、自社は何を果たしたいのか、そのために、社員一人一人はどの程度のレベルの英語を身につけ。どのように業務に取り組んで欲しいのか。それを明確に社内に浸透させた上で、英語研修・教育を拡充することが必要でしょう。

社内公用語の英語化が失敗してしまう理由

日本人同士だと日本語で会話してしまうから

次に、研修や教育を通じて、社員全体に英語化への意識を高めていくことが大切です。どんな活動であっても、導入段階に大事なことはその目的を明確にし、目的意識を一人一人が理解して取り組むことですよね。社内公用語を英語とすることで、自社は何を果たしたいのか、そのために、社員一人一人がどの程度のレベルの英語を身につけ、どのように業務に取り組んで欲しいのか。それを明確に社内に浸透させた上で、英語研修・教育を拡充することが必要でしょう。

日本語の企業が多いので取引で英語を使う機会が少ない

さらに、実際の商談などで英語を使う機会が限られている点も、「英語化」が成功しない要因の一つではないでしょうか。確かにグローバル化が進み、海外との直接のコミュニケーションも増加していますが、やはり日本拠点の企業は取引先とのやりとりは日本語で行うはず。公用語英語化で書面など翻訳の作業の手間が減るのはごく一部の部署・社員のみで、そのほか大多数の社員はそれをさらに日本語で理解し日本の取引先とビジネスをする必要があるのです。これでは英語化に失敗してしまうというのも頷けますね。

社内公用語を英語にした企業例

楽天株式会社

では、社内公用語英語化を実践した企業例として、楽天の事例を紹介します。楽天では2010年の年頭スピーチで三木谷社長が社内公用語英語化を宣言。約2年の準備期間を経て、2012年に本格的な英語化を行い、業界を超えて大きな話題となりました。楽天では「世界一のインターネットサービス企業を目指す」ためとして、間違いを恐れずシンプルな英語でコミュニケーションを行うことを推奨。「業務での日本語禁止」など英語化の徹底を図りました。2015年には 社員のTOEICスコアの平均が800点を突破し、現在では全社員の2割が外国籍社員であるなど、大きな成果が得られています。

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社は、社内英語公用化に向けた「準備段階」の企業といえます。2010年より、長期経営計画の一つとして国際感覚を求める社員像として掲げており、英語力工場のための支援施策をスタートしています。あくまでも自主学習をメインとするものですが、CACECと呼ばれる現状の英語力チェック、また社内公募制の海外派遣事業も始まりました。この「海外武者修行(グローバル・チャレンジャーズ・プログラム)」では、社員が海外の提携企業へ半年間出航し、英語によるコミュニケーションや、現地での事業運営に必要な基礎経営知識を身につけることが期待されています。

株式会社ユニクロ

ユニクロ、ジーユーを展開するファーストリテイリングでも、2012年より社内英語化を導入しています。当時、海外で勤務できる最低水準として、本社社員・店長約3,000人にTOEIC700点以上の取得を義務づける、という方針があったようです。 移行期間の2年間の間に、社員にはコミュニケーションを図れるだけの英語力を身につけるよう課せられ、勉強時間の確保や学習費用補助など施策が用意されていました。導入にあたり賛否両論はあったようですが、2012年には新卒採用者の約8割が外国籍という結果を残したと言われています。

株式会社資生堂

化粧品王手の資生堂でも、2018年10月を目処に本社部門約2,700名の公用語を英語にするという発表がありました。2015年、地域本社制にして日米欧中アジアなど、地域ごとの収益管理や商品開発を進める体制とした同社ですが、日本本社は各地域の業務支援の役割を求められています。日常会話は日本語のまま、会議言語や資料や社内文書を英語にすることで、世界拠点への円滑な業務支援をするとしています。具体的には、TOEICテストのスコアを基準とし、社員に基礎英語力トレーニングの外部英語教育の機会を提供。社員も概ね好意的に取り組んでいるといいます。

シャープ株式会社

SHARPでは2016年の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業への買収契約をきっかけに英語力が重要視され始め、現在では一部部門で英語公用化を実施しています。まずは研究開発部門を対象とし、最終的には社内全部署で英語を社内公用語化する方針。さらに一部の社員には海外勤務を義務付けるなど、国内の電機メーカーとしては画期的な試みを行っています。鴻海傘下に入って以来、コスト削減などによるV字黒字回復が評価されているSHARP。社内公用語に関しても一定の成果が出ているのかもしれません。

三井不動産株式会社

三井不動産は英語公用語化の段階ではありませんが、全社員に英語教育を推進している企業です。ドメスティックなイメージが強い不動産業界にありながら2011年より海外事業を成長戦略の柱として位置づけ、各種研修やTOEIC取得を推奨。総合職全社員に対してTOEIC730点以上の取得を設定したり海外語学学校に4~8週間派遣をさせる必修検収を導入したりと、具体的な改革を始めました。英語に対するアレルギーがなくなり、すぐに海外業務を始められる社員も格段に増えたと言います。このように、英語公用語化とまではいかずとも、社員の英語レベルを引き上げる試みは多くの会社で行われています。

社内公用語の英語化だけで業績が上がるわけではありません

社内公用語英語化はグロバールビジネスで戦い抜く戦略の一つです

企業のグローバル価値向上の手段として注目を集める「社内公用語の英語化」。本記事では日本企業が英語を社内公用語化する試みについて、そのメリットやデメリット、導入のポイントなど説明をしてきました。もちろん、「英語化」させるだけで会社の業績が上がるわけではなく、長期的な戦略の一つとして理解する必要があります。グローバルビジネスにおいて社員一人一人の能力を高めるにはどうすれば良いか、企業の競争力を高めるにはどうすれば良いか、企業戦略の一つとして理解しておくと良いでしょう。

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