記事更新日:2021年02月05日 | 初回公開日:2020年12月16日
人事・労務お役立ち情報 外国人採用・雇用 派遣社員初めに休業手当とは何なのかをしっかりと説明します。休業手当とは企業側の事情によって労働者を休業させた際に、該当となる従業員に対して支払われる手当のことです。通常であれば従業員の労働時間や役職、成果などに応じて賃金が支払われるので、労働していなければ給与を支払う必要はないと考える方もいるでしょう。ところが企業の事情による場合は一定金額の手当を保障しなければなりません。経営不振や従業員不足などによって休業をした場合は、休業手当を支給する対象になります。
休業手当はいくら支払われるのでしょうか?休業手当の支給額については、「平均賃金の6割以上」という決まりがあります。ただしここで言う平均賃金は基本給だけではありません。厳密には休業になった日以前の3か月に支払われた賃金の総額から休業期間の総日数を割った数の6割以上が休業手当として支給されることになります。ですので、休業手当の支給額を算出するためには、適切な計算式に当てはめなければなりません。平均賃金に基づいて計算されるので、当然同じ会社内でも個人によって支給額は異なります。
休業手当はどの企業でも支給しなければならないのでしょうか?休業手当に関しては、しっかりと法律上で明記されています。それが労働条件の基準を定める法律である労働基準法です。労働基準法の第26条には、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」という記述があります。つまり企業が休業手当を支給しなかった場合は、法律に違反する行為となってしまいます。
休業手当と間違いやすい言葉として休業補償が挙げられます。休業手当と何が違うのでしょうか?休業補償は、業務または通勤による怪我や病気が原因で働けなくなった従業員に対して支払われる補償のことを指します。この場合は、休業開始から4日目以降に労災保険から平均賃金の8割が支給されます。3日目までは休業手当と同様に、企業が平均賃金の6割以上を従業員に支払うことになります。簡単にまとめると、休業の理由と支給金額の割合が異なるということになるでしょう。
休業補償と同様に、休業手当と間違えやすい言葉として有給休暇が挙げられるでしょう。有給休暇は正式には年次有給休暇と呼ばれています。有給休暇は、企業から賃金の支払いを受けられる休暇日のことで、労働基準法で定められた労働者の権利です。有給休暇が付与されるには、雇用契約を開始した日から6か月間継続して、全労働日の8割以上出勤するなど一定の条件があります。休業手当は会社の都合で休業になった場合にのみ付与されますが、有給休暇は継続して働くことで得られるといった違いがあるといえるでしょう。
休業手当の目的は、休業中も労働者がしっかりと生活が出来るように、金銭面から生活を保護することです。厚生労働省のホームページにも「労働者の最低限の生活の保障を図るため」という文言が記載されています。仮に企業が経営状況によって自由に従業員を休業させたり、解雇出来るような仕組みであった場合、従業員の立場が非常に弱くなってしまうでしょう。休業手当はそういった事態を未然に防ぐために、法律によって労働者の生活を保護しています。普段の給料よりはもらえる金額は減りますが、それでも労働者にとってはとても重要な制度になっています。
休業手当の対象者は正社員だけではありません。パートやアルバイト、契約社員などを含むすべての従業員に対して適用されます。なぜなら先程述べたとおり、休業手当はすべての従業員の生活を保護するために作られた制度だからです。ただし注意が必要なのが派遣社員です。例えば派遣先の会社が休業したとしましょう。そうなると派遣社員に対して休業手当を支払うのは派遣先ではなく派遣元の企業になります。また内定者に関しては労働契約が既に結ばれている場合にのみ休業手当の支払いが適用されます。
企業側の事情によって休業した場合は、すべての従業員に対して休業手当を支給しなければならないと先程説明しました。しかし休業期間中の休日や代休日に対しては、休業手当を支払う必要はありません。公休日や就業規則で休日とされている日は、元々労働日ではないからです。代休は企業側の事情ではないという理由から支払いがありません。また従業員がストライキ中や病気などで労働能力を失っている場合も休業手当支給の対象外となってしまいます。簡単にまとめると従業員が働く意思がある、あるいは働ける状態にも関わらず、企業の事情で休業する場合に休業手当は支払われるということです。
世界的に大流行した新型コロナウイルスによって休業を余儀なくされた企業も少なくありません。それによって生活が困窮してしまう人が増加していますが、この場合は企業側は休業手当を支払う義務はありません。なぜなら「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと判断されるからです。しかし会社が休業になったことで、生活が困窮してしまう方が増加しているという事実もあります。そういった方々に対する支援として、政府は給与の8割を補償する「新型コロナ対応休業支援金・交付金」の支給を2020年の7月から対象者に向けて開始しました。
休業手当に関連した補助金として雇用調整助成金があります。雇用調整助成金とは、やむを得ない理由によって休業や出向などの一時的な雇用調整を行った企業に対して政府が支援をする助成金のことです。ここで挙げられるやむを得ない理由とは、例えば景気変動や産業構造の変化などが挙げられるでしょう。企業は雇用調整助成金を従業員に対して支給する休業手当の一部に充てることが出来ます。支給額は企業の規模によって異なり、中小企業は企業の負担額の3分の2、それ以外は2分の1になります。
一般的な給料は所得税が課されますが、休業手当の場合はどうでしょうか?結論から言うと休業手当はあくまでも賃金の一部という扱いになるので課税対象になり、源泉徴収が必要になります。有給休暇なども同様ですが、休業補償の場合は賃金ではなく補償であると見なされるので課税はされません。ですので、従業員が企業側から休業手当を受け取る際は、所得税があらかじめ引かれた上で支給されることになります。所得税が引かれることで、結果として休業手当の支給額は平均賃金の6割以下を下回ることもあるでしょう。
休業手当は所得税だけでなく、社会保険料や雇用保険料なども支払うことになります。社会保険は病気や怪我、出産、障害、死亡などに対して必要な保険給付を行う公的な保険を指します。また雇用保険は国が行う社会保険の一部で、失業や雇用継続などに関する保険の制度です。いずれも通常の給料から天引きされているので、休業手当の場合も同様の扱いとなるでしょう。よって実際に従業員が受け取る合計金額は、休業手当から所得税や社会保険料などをすべて差し引いた残額となってしまいます。
あまり好ましいことではありませんが、実際に休業手当を支給することになるかもしれません。ここでは実際に休業支給を行う際の、流れを確認していきましょう。まず初めに行うのは、休業期間の対象となる給与の支払日を確認することです。賃金締切日以前と以降では休業手当の支払日が異なります。ですので休業期間が当月分の支払いに含まれるのか、あるいは翌月の支払いで良いのかといった点を最初に確認しなければなりません。あらかじめ確認をしておくことで余裕をもって支給の手続きを進めていくことが出来るでしょう。
給与支払日を確認したあと、次にやるべきことは、休業手当の支給額の計算です。ただし賃金締切日が過ぎるまでは支給額を計算することは出来ません。ですので賃金締切日が過ぎたらなるべく早く対象となる従業員に対する休業手当の支給額の計算を終えるように心がけましょう。計算方法は、基本的にはまず休業した日以前の3か月分の平均賃金を計算します。その後に平均賃金と休業した期間の日数をかけたあと、最後に0.6をかけます。ただし休業手当の条件は平均賃金の6割以上ですので、企業によって支給額の幅はあるでしょう。
所定の計算方法に従い、休業手当の支給額の計算が終わったら、最後に支払いになります。休業手当の支給額が確定次第、振込の準備をしましょう。先程も書いたとおり、休業手当は賃金と同様の扱いになります。ですので支払日や支払方法などは通常の給料を振り込む場合と変わりありません。政府から雇用調整助成金の支給があった場合は、休業手当の支払いの際に利用することが出来ます。対象日にきちんと支払いが完了出来るように、計画的に準備を進めておくと良いでしょう。
今回の記事では休業手当について様々な面からご紹介してきました。この記事を通じて休業手当に関する知識を深めることが出来ましたでしょうか?休業手当は企業で働く全員に関係することなので、しっかりと理解をすることが必要です。また休業手当は、従業員一人ひとりの生活を保護するためにとても重要な制度です。企業にとっては休業しないことが理想ですが、止むを得ない理由で休業する可能性もあるかもしれません。いざとなったら休業手当の支給が必要かどうかを状況に応じて判断し、手続きを進めましょう。
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