不利益変更とは何か【変更の手続きの進め方やその際のポイントについても解説します】

記事更新日:2024年01月22日 初回公開日:2024年01月22日

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コロナウイルス流行や世界情勢による物価高騰など、企業を取り巻く環境は日々変化しており経営者はその時々で最適な判断をしなければなりません。そういった外部要因の変化がありつつも、企業は労働者に対しての保護や働きやすい環境の提供などが求められています。労働基準法などにより、労働者は保護されており労働条件の不利益変更などには一定の制限が掛かっています。労働者の同意を得ずに就業規則などを変更してしまうと、企業は大きなリスクを負う事になります。今回は不利益変更について解説します。労務担当の方は参考にしてみてください。

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労働条件の不利益変更とは

賃金や労働時間などを不利益に変更すること

労働条件の不利益変更とは、賃金や労働時間などを不利益に変更することです。賃金の引き下げや福利厚生の廃止など労働者が不利益を被る方向へ就業規則を企業が勝手に変える事を指しています。但し労働契約法第9条では、使用者は労働者の不利益となるような労働条件の一方的な変更は、原則禁止とされています。しかし企業側は全く不利益変更が出来ない訳ではなく、労使間や従業員と合意が取れていれば不利益変更も可能とされています。

不利益変更の例

賃金に関する不利益変更

不利益変更の例として、賃金に関しての不利益変更があります。賃金の不利益変更に該当するのは、基本給の減額や諸手当の減額・退職金の減額や定期昇給の停止などです。減額や停止も不利益変更に該当するのは勿論ですが、手当や旅費の支給条件を勝手に変更するのも不利益変更に当たります。従来であれば日帰り出張でも旅費や出張手当の対象であったにもかかわらず、宿泊出張のみ対象とする場合などです。また全員を対象とせずに一部の従業員が不利益を被る場合にも不利益変更となります。

休日や有休休暇に関する不利益変更

不利益変更は、休日や有給休暇に関しても該当します。決められている年間所定休日を勝手に減らす・法律上の有給休暇とは異なり別の有休での特別休暇を設定していたが削除するといったような行為が該当します。また以前は創立記念日や会社に関わる休みを設けていたのに、翌年から設定しないようになる場合も不利益変更です。労働基準法では、法定休日が定められておりそれを下回らなければ問題ないと考えている企業もあるかもしれません。しかし元々あった休日を勝手に減らすのも不利益変更になります。

シフト変更に関する不利益変更

不利益変更の対象となるのは、シフト変更に関しての不利益変更です。シフトの変更は、一見すると就業時間が変わるだけで労働時間に増減が無ければ不利益変更ではないように見えます。しかし従業員からすると今まで就労義務が発生していなかった時間に働かなければならず、不利益変更に当たるとされています。また合意を得ず労働時間を勝手に増減するのも勿論不利益変更です。中でも不利益が大きいのは、労働時間減少で賃金が減少するパターンです。

割り増し賃金に関する不利益変更

割増賃金に関しても不利益変更の対象となります。今まで支払わなかった会社で、月給額を変えず固定残業代を新しく作る場合は所定内賃金(所定労働時間中の就業の対価として支払われる賃金)が減り、不利益変更となります。また営業手当などのインセンティブとして付与していた手当を、固定残業代に置き換える場合も所定内賃金が減ることから不利益変更になります。実際に外勤手当を固定残業代に置き換える変更を行った企業が、裁判により無効と判断された事案があります。

不利益変更禁止の原則

労働条件は原則双方の合意によってのみ変更できる

不利益変更禁止の原則は、労働条件は原則として双方の合意によってのみ変更できるようになっています。労働者にとって不利益になる変更は、原則として従業員の個別の同意を元に行わなければなりません。先述した通り、労働契約法第9条では使用者は労働者と合意することなく就業規則を変更することで、労働者の不利益になる変更はできないとされています。しかし労働者の合意が取れていればこの限りではないとしており、同意がある場合には不利益変更を行えます。

不利益変更できる条件

変更に合理性がある場合

不利益変更できる条件は、変更に合理性がある場合です。原則として就業規則を変更する場合は、従業員の合意を得る必要があります。しかし就業規則を不利益変更することに合理性があると判断された場合は、個人の合意を得る事をせずに変更することが可能です。そのため、従業員の合意を得ずに不利益変更したい場合は、合理性があるかどうかで変更が法的に有効か無効か判断されることになります。また合理性があると判断された場合は、従業員はその適用を拒否することは出来ません。

変更後の規則を周知している場合

不利益変更は、変更後の規則を周知している場合に実施することが可能です。就業規則の変更は変更に合意性があった場合でも変更後の就業規則が周知されている事が不可欠です。労働基準法106条1項、労働基準法施行規則52条の2では就業規則の周知に関して定められており、書面で従業員の目に付きやすい場所に掲示する必要があります。就業規則は労働者が守らなければいけない物であり、周知されていないと守るものも守れなくなります。書面で掲示せずに従業員の目に付きやすい方法であれば問題ありません。

不利益変更手続きの進め方

個別に労働者から同意を得る場合

不利益変更手続きの進め方として、個別に労働者から同意を得る方法があります。企業に労働組合がある場合は、事前に労働組合と協議を行い不利益変更を受け入れてもらえるように説得します。しかし労働組合がない企業では、従業員一人一人に説明を行い不利益変更を受け入れてもらわなければなりません。変更後の就業規則に同意した従業員は、変更の合理性が必ずしも有効であるとされなかった場合にも変更後の就業規則に拘束されることになります。

社内に労働組合がある場合

社内に労働組合がある場合は、事前に労働組合と協議し合意を得る事で不利益変更を行う事が出来ます。企業に労働組合が存在する場合は、まず労働組合と協議する必要があります。労働組合との協議を行わずに実施すると支配介入などの不当労働に該当する可能性もあるので注意しましょう。労働組合と合意が出来た場合は、労働協約を締結します。労働協約は、就業規則に優先するため労働協約にしたがって就業規則も変更することが一般的です。労働組合の合意を得られたら、組合員ではない従業員にも適用となります。

不利益変更の際の気を付けるべき点

同意を強要しない

不利益変更の際に気を付けるべきことは、同意を強要しないことです。不利益変更を行う会社は、今までと比べて経営状況が悪化しており人件費を削減しなければならなくなった場合が多くあります。人件費を削らなければ会社として存続が難しくても従業員の同意を得ずに不利益変更を行う事は出来ません。また差し迫った選択であっても、しっかりと説明を行い従業員に納得して同意してもらう必要があります。同意を強要してしまった場合は、不利益変更が無効と判断されるため注意しましょう。

十分な説明を行なう

不利益変更の際は、十分な説明を行うように注意しましょう。労働組合や従業員相手に不利益変更を行う旨を説明しても、中々スムーズに合意を取ることは出来ないでしょう。従業員にとって不利益変更は、労働時間や賃金など何かしらに影響を及ぼされるためすぐに同意できるものではありません。その場合は納得してもらえるまで説明を行い、納得してもらえるまで何度も話し合いの場を持ち説明を行います。同意が取れない場合、不利益変更に合意性があるかが焦点になりますが十分な説明を行ったかも重要になっていきます。

不利益変更によるリスク

労使紛争の原因になる

不利益変更によるリスクは、労使紛争の原因になることです。不利益変更に関して労働組合と合意が取れなかったにもかかわらず、不利益変更を実行してしまうと反発した労働者が反旗を翻して労使紛争になる可能性があります。基本給の減額や手当の削減・退職金に関して不利益変更を行おうとすると、減額される前の金額を支払ってもらうために労働信販や裁判を起こされるリスクがあります。変更の合理性が認められない場合は、変更前の金額を労働者全員に支払う可能性が出てきます。

労働者のモチベーションが低下する

不利益変更は、労働者のモチベーションが低下するリスクがあります。不利益変更に合意を得た場合や、労使紛争に勝利し不利益変更を行った場合でも労働条件の不利益変更によって働いている社員のモチベーションは低下します。今までやる気をもって働いていた社員も賃金や手当の減額をされることによってモチベーションを維持することが難しくなります。また例え労使紛争にはならずとも社員のモチベーションが低下していくと、生産性も下がっていき業績も低下するため不利益変更の目的が果たせなくなります。

企業のイメージが低下する

不利益変更を行う事で、企業のイメージが低下する恐れがあります。企業が一方的な不利益変更を社員に押し付けたという事実が取引先や顧客に広がってしまうと、企業のイメージは悪くなります。そういったイメージがついてしまう事によりブラック企業だと認識され、新しく人材を採用することも出来なくなってしまいます。労働審判や裁判でもし会社が勝ったとしても、不利益変更で社員と争ったというイメージがついてしまい会社のイメージ低下は避けられません。実施したという事実で企業のイメージ低下に繋がります。

離職率が上がる

離職率が上がるのも、不利益変更を行うリスクです。不利益変更を行ったという事実は企業内で働いている社員のモチベーションを低下させます。従来までであれば業務に意欲的であった社員も、不利益変更によって賃金や労働時間が変わることによって会社への不信感が高まります。社員を大切に思ってくれない会社だと思われてしまうと、社員は他の会社へ転職することを考えるようになります。1人が離職することによって、同じく不利益を被っている他の社員も転職を考えるようになり結果として離職率上昇に繋がります。

不利益変更の判例

山梨県民信用組合事件

不利益変更の判例として、山梨県民信用組合事件があります。この事件は山梨県の信用組合が合併することに伴い、退職金が減額になることの同意書を社員に求めましたが後に社員から訴訟を起こされた事件です。裁判所の判決では、同意したこととして認められないとし同意書での減額を認めませんでした。賃金や退職金に関しての不利益変更の同意は、労働者が自由意志の元で同意したと認める客観的合理性が必要であるとされました。使用者からの強制ではなく、労働者が自分で同意したという客観的な事情が必要とされます。

まとめ

不利益変更を理解し適切に対処しよう

不利益変更の例や不利益変更できる条件、不利益変更によるリスクなどについて解説しました。就業規則を不利益変更するには労働組合や労働者の合意を得ていない場合、変更の合理性が必要です。しかし社員から同意を得ずに変更した場合社員からの信頼を失う場合や社員が業務に対してのモチベーションを低下させるなど様々なデメリットがあります。トラブルに発展させないためにも、事前にしっかり話し合いを行い理解を得る事が大切です。不利益変更を理解し適切に対処しましょう。

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