みなし残業とは【メリットやデメリット、違法だった時の対処法について解説します】

記事更新日:2023年08月08日 初回公開日:2023年08月08日

用語集 人事・労務お役立ち情報 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド
みなし残業は採用することによって従業員と企業どちら側にも様々なメリットを享受できる制度です。最近では企業の求人票や雇用契約書でもよく目にする制度のため、一度目にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。しかし、みなし残業を利用するには様々な注意点があり、種類によっては細かな規定や対象となる職が異なります。誤った認識を持ったまま導入してしまうとトラブルを招いてしまう可能性も少なくありません。そのため、取り扱いには慎重な検討が必要です。今回はそんなみなし残業について、その種類と導入によるメリットや注意点についてご紹介していきます。

就労ビザ取得のためのチェックリストをダウンロードする

みなし残業とは

一定の残業時間を見込んで基本月給に残業代を含めること

みなし残業とは、時間外労働が発生することをあらかじめ見越して、一定時間分の金額を賃金に含めて従業員に支払う制度のことです。みなし残業で支払われる残業代には労働時間が週40時間を超過した際の割増賃金と深夜割増賃金や休日出勤の割増賃金なども含まれています。また、従業員の就業場所が自宅や客先など労働時間の把握が困難である場合も一定時間働いたこととみなし賃金を支払うことも、みなし労働制またはみなし残業と呼ばれています。

みなし残業の種類

事業場外労働

事業場外労働とは、従業員が主な業務を事業所の外で行うため実際の労働時間の把握が困難な場合に適用されます。この制度は具体的には外回りの多い営業職や在宅勤務の人が所属する会社で利用されています。事業場外労働を利用すると実際の労働時間が把握できない従業員でも一定の時間労働したこととみなすことができます。ただし、事業場外の労働でも、労働時間の管理等を監督する人が居る場合や随時指示を受けられる状態の労働であれば、みなし労働時間制の適用対象にはなりません。

専門業務型裁量労働制

従業員の受け持つ業務の専門性が高く管理者や企業側が業務の進行や労働時間の配分などの具体的な指示が難しい場合に多く利用されるのが専門業務型裁量労働制です。この制度を適用すれば従業員は一定の報酬を貰いながら、仕事の進捗に合わせて自分の裁量で労働時間を調整できます。ただし、適用できるのはライターや弁護士など法律で定められた要件を満たす19の業種のみで、主に専門知識が無いと業務内容の把握が難しい職業が該当します。

企画業務型裁量労働制

企画業務裁量労働制は専門性の高い業務に従事している労働者が固定の報酬を貰いながら自分の裁量で労働時間の調整等を行える制度です。企画業務裁量労働制は事業の運営に関して企画や調査など、特定の業種を対象とする専門業務裁量労働制とは違い特定の職種が対象となっています。専門業務型裁量労働制と似ている制度ではありますが、どちらも導入する際には異なる要件を満たさなければいけないため、混同しないよう注意しましょう。

みなし残業のメリット

生産性を向上させれば得をする

通常残業代は残業をした分の時間数に合わせて支給されます。しかし、みなし残業の場合は残業の有無に関わらず一定額が支払われるシステムです。これを従業員側から考えると残業時間を減らせば減らすほど金銭的には得をするので、多くの人はなるべく残業しないよう効率的に仕事を進めようとすることが予想されます。そのため、みなし残業の投入は職場全体の生産性の向上を促し、非効率的な残業の抑制にも一定の効果が期待できます。

残業代計算が楽になる

みなし残業は、従業員の時間外労働が事前に定めている労働時間を超えなければ別途残業代を支給する必要がありません。また、実際の残業時間が規定労働時間以内であれば、従業員それぞれの残業時間が異なっていても支払う金額は同じです。そのため、給与計算の際にも従業員1人1人の残業代を個別に計算する手間を省けます。さらに、従業員の所得の増減が殆ど無いと月ごとに社会保険料や税金の額を計算し直す必要も無くなるので、事務処理の負担を大幅に削減できます。

人件費の見通しが立ちやすくなる

みなし残業は残業が一定以上の時間数を超えてしまった場合を除いて残業代が固定されているので、必然的に企業側が支払う毎月の人件費も大きく変動することはありません。また、従業員が定められた時間内に仕事を終わらせようと動くことで照明や暖房等の光熱費の削減にも繋がります。そのため、企業側の人件費や光熱費などの会社運営に関わる費用の見通しが立ちやすくなるメリットがあります。事前に今後の支出額が分かると資金繰りなどの点で経営戦略を立てられるので、適切に資金管理を行えます。

従業員が安定した収入を得られる

通常の残業では働いた時間分の報酬が支給されるため、残業時間に波があると毎月従業員の収入が増減します。そのため、収入面で安定性に欠けるという事情から基本給だけでは収入が足りず、無理に残業しようとする人も少なくありません。対してみなし残業では毎月決まった額が支給されるため、安定した収入を得られます。また、収入が安定していると従業員の不満も湧きにくく、収入や不均衡なワークライフバランスを理由にした離職の予防も期待できます。

みなし残業のデメリット

規程された時間は残業しなければならないと勘違いされやすい

みなし残業は実際の残業時間に関わらず残業代が賃金に含まれているため、定められた時間分必ず残業しなければならないと従業員に勘違いされやすい一面があります。みなし残業は必ずしも既定の時間分労働しなければならないという決まりはありません。しかし、残業代を貰ってしまっているので帰りにくい、残業しなければいけない、という風に圧力に感じてしまう人も少なからず存在します。そのため、みなし残業を導入する際には従業員にも十分に制度や導入理由を説明し、理解してもらう必要があります。

サービス残業を促進させる恐れがある

みなし残業で規定されている労働時間を超過してしまった場合、超過分の残業代は別途支給しなければなりません。しかし、既に残業代が賃金に含まれているので、超過分の残業代は支払われないという間違った認識を持っている人も存在します。このような事情から制度の仕組みをしっかりと従業員に理解してもらわなければ、サービス残業を促進させてしまう恐れがあります。そのため、みなし残業を導入している場合でも従業員の実労働時間はしっかり管理しましょう。

みなし残業を導入する際に気をつける点

みなし残業の超過分については残業代を支払う

みなし残業は決められた残業時間を超過した場合には別途で残業代の支払い義務が発生します。勘違いされがちですが給与に残業代も含まれているからと言って従業員を際限なく拘束できるわけではありません。超過分の残業代を支払わずトラブルになった場合、労働基準法違反となり懲役または罰金の支払い義務を課される可能性もあります。そのため、導入の際は従業員の労働時間の管理を徹底し、従業員側にも規定の労働時間を超過した場合にしっかりと申告を行うよう周知させることが大切です。

休日出勤や深夜労働の割り増し賃金を反映させる

みなし残業に休日出勤や深夜労働を含める場合は、その分の割り増し賃金を給与に反映させなければ違法になってしまいます。また、時間外労働の割り増し賃金の倍率は一定ではないので、導入の際は細かな取り決めが必要です。例えば休日出勤の場合、残業手当は1時間あたりの時給の1.35倍になります。しかし、時間外深夜労働の場合では時間外の割り増し分と深夜労働分を合わせた1.5倍を支払う義務が生じます。このように、従業員の労働時間や働く時間帯によっても割増賃金の額は変動するので注意しましょう。

求人広告に必要事項をしっかりと記載する

みなし残業を導入している場合は求人広告の必要事項にもしっかりとみなし残業を導入している旨を記載しておきましょう。必要事項の記載は職業安定法によって義務化もされているので、みなし残業を導入する際には必須になります。求人広告の内容には、みなし残業代の金額や規定の時間数から、残業代の計算方法と基本給の額などの5つの項目の記載が必要です。また、必要事項の記載は法律の遵守だけでなく事前に求職者と企業側で認識をすり合わせて採用後のトラブルを未然に防ぐという意味もあります。

金額の設定に違法性がないか確認する

みなし残業は労働基準法で守らなければならないルールが定められています。例えば、みなし残業を導入している企業でも、給与からみなし残業代を引いた際に残った基本給の額が最低賃金を下回っていると違法になります。また、みなし残業の導入では従業員と36協定という取り決めをする必要がありますが、この協定では1か月の残業時間の上限が45時間までと定められています。そのため、企業は基本的に月45時間以上の残業をみなし残業として設定することもできません。上記のように様々な取り決めがあるので、導入する際には法律に違反していないか確認しておきましょう。

みなし残業が違法だった時の対処法

労働時間の実態を把握する

所属している企業のみなし残業に違法の恐れがある場合、まずは従業員の労働時間の実態を把握することが大切です。実態を把握するにはタイムカードや勤務管理表などを確認しましょう。必要であれば、当事者の従業員への聞き取り調査も有効です。実際の労働時間と、みなし残業で設定した労働時間との差があれば超過分の残業代を支払うなど、適切な対応が必要になります。また、自分の残業代に未払いの疑いがあるなど、給与と実労働時間におかしい点がある際も後で残業代の請求ができるよう物的証拠を残しておきましょう。

交渉が決裂した場合の対処法

労働裁判

違法なみなし残業が原因で残業代を支払ってもらえない場合、従業員は労働審判を起こすことができます。労働審判とは個人の従業員と企業の間にトラブルが発生した際に迅速に問題解決することを目的とした制度です。この特性上労働審判は双方の話し合いで問題解決を目指すことに加え、殆どの場合申し立てから半年で審理が終了します。そのため、短期間で問題解決できるというメリットがあります。また、労働審判で下した判決には法的拘束力があるため、審理後企業側が判決に従わなかった場合はペナルティがあります。

訴訟

労働審判で決着がつかなかった場合、企業に対して訴訟を起こすことも可能です。労働審判の審理が3回なのに対し、訴訟は審理の回数に制限が無いため長期化しやすいという特徴があります。通常、審理にかかる手間や時間を考えると労働審判を利用した方が原告の負担は少なく済みますが、判決は異議申し立てで失効してしまうこともあります。そのため、訴えを起こす前から内容が深刻で決着のつきにくい問題であると感じた時には、労働審判よりも必ず結論が出る訴訟を初めから選んでおくのも1つの手段です。

まとめ

みなし残業についてよく理解してトラブルなく活用しましょう

みなし残業は企業の業種や従業員の役職によっては上手に利用することで、企業側が得をするだけでなく従業員側も働きやすくなる制度です。しかし、みなし残業を導入するには守らなければならない法律が沢山あることに加え、制度そのものの仕組みを勘違いされやすいという特徴があります。また、明確に規則を定めなければ従業員との間にトラブルが発生する可能性も少なくありません。このようなトラブルを防ぐためにも、みなし残業を正しく理解し、法律を守りながら活用していくことが大切です。

外国人・グローバル人材の採用をお考えの企業様へ

事例

「日本語+英語+さらに語学が堪能な社員の採用」「海外の展示会でプレゼンが出来る人材」「海外向けサービスのローカライズ出来る人材」「海外向けWebサイト構築・集客」など、日本語も堪能で優秀な人材へのお問い合わせが当社に相次いでいます。

他社の外国人採用成功事例はこちらからご覧ください。

【無料】就労ビザ取得のためのチェックリストがダウンロードできます!

就労ビザ取得のためのチェックリストダウンロードバナー

グローバル採用ナビ編集部では外国人の採用や今後雇い入れをご検討されている皆様にとって便利な「就労ビザ取得のためのチェックリスト」をご用意いたしました。また、在留資格認定申請書のファイル(EXCEL形式)もこちらよりダウンロード可能です。

こちらのチェックリストはこのような方におススメです!


  1. 外国人採用を考えているがビザの申請が心配。
  2. 高卒の外国人は就労ビザの申請できるの?
  3. どのような外国人を採用すれば就労ビザが下りるの?
  4. ビザ申請のために何を気を付ければいいの?
  5. 過去に外国人のビザ申請をしたが不受理になってしまった…
  6. 外国人材を活用して企業の業績アップを図りたい方。
  7. 一目で分かるこんな就労ビザ取得のチェックリストが欲しかった!


他社での事例やビザ申請の際に不受理にならないようにまずは押さえておきたい就労ビザ取得のためのポイントを5つにまとめた解説付きの資料です。

就労ビザ取得のためのチェックリスト(無料)のダウンロードはこちらから!

ページトップへ戻る
ダウンロードはこちら
ダウンロードはこちら