縁故採用のメリット・デメリット【リファラルとの違い・意味・面接について解説します】

記事更新日:2020年05月25日 初回公開日:2020年03月04日

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企業の採用担当者の中には、人材不足や採用後のミスマッチなどに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。近年は、採用期間の短縮化によってますます優秀な人材の確保が難しくなってきました。そんな採用課題を解決するための手法として、日本で古くから存在する採用方式の縁故採用があります。縁故採用にあまり良いイメージを持っていない人もいますが、企業側からすると経費削減などさまざまなメリットのある採用手段でもあります。今回は、縁故採用とはどのようなものか、メリットやデメリットなど、企業が実施する際の運用ポイントなどみていきましょう。

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縁故採用とは

縁故を利用して人材を採用すること

「縁故」という言葉には、血縁や婚姻などによる繋がり、人と人との繋がりなどの意味があり、縁故採用とは企業と求職者との間に何らかの縁故がある採用のことを指します。簡単に言ってしまえば、社員や知人など関係のある人から求職者を紹介してもらい採用へと繋げること。縁故の範囲は幅広く、企業の重役や取引先企業の親戚のみを指す場合もあれば、一般社員の知り合い程度の関係であっても縁故採用とみなされるケースもあります。

【企業から見た】縁故採用のメリット

広告費などの採用コストの軽減が期待される

新卒や中途採用など、さまざまな採用方式がありますが、いずれの募集にも費用も時間も要し、採用担当者の負担も年々増えてきました。その点、縁故採用は人の縁・繋がりを活用する採用方式のため、求人媒体や人材エージェントなどを利用する必要がなく、採用コストを削減することができます。また、親しい関係性の紹介によって求職者と接点を持つことで、採用後のミスマッチを減らすなど、費用対効果の良い人材募集をすることが可能になるでしょう。

紹介者がいる事から離職率の軽減が期待される

縁故採用の場合は紹介者がいるため、何かあればフォローしやすく、困った時は紹介者の協力を得ることができます。そのため、入社直後のフォローが行き届かず、早期で離職してまうリスクも防ぎやすくなるでしょう。とくに地方の企業などの場合、縁故採用は取引先との関係強化のため用いられることことも多く、紹介者に配慮して採用直後に辞める人が少ない傾向にあります。そのような点からも縁故採用が一般的な企業も多いようです。

【求職者から見た】縁故採用のメリット

採用の可能性が高くなる

縁故採用は、応募前にすでに企業に対して話が通っているため、通常の応募・試験・面接のフローで受けるよりも、採用の可能性が高くなります。場合によっては、応募や試験などの選考をパスして、面接のみで業務説明や待遇などを本人と確認するだけで入社できることもあります。ただし、縁故採用でも大学時代の成績や態度などで落ちる可能性はおおいにあるので、一般の採用試験と同様に企業分析や志望動機など自身の言葉で話せるようにしましょう。

紹介者がいるので企業からのサポートが受けやすくなる

縁故採用は紹介者がいるので、試験などで落とされにくく採用してもらえる可能性が高いことに加え、入社前に一般試験だけではわからない社風や業務内容などを詳しく知ることができます。また、入社後も良い待遇や将来の出世が約束されているといった、暗黙の了解のようなケースもあるようです。優遇面だけでなく、人事部としても入社前に縁故採用者の情報を知ることで、入社後もコミュニケーションを取りやすく、信頼関係も築きやすいでしょう。

【企業から見た】縁故採用のデメリット

正規で入社した社員に不公平と思われる可能性がある

一般的な応募・面接フローではなく、紹介をもとにする採用方式なだけに、公募して募った応募者と比べ公平さに欠ける可能性があります。大々的に縁故採用を公表している企業はなく、表向きは公平さを謳っていないと企業としてのイメージダウンにも繋がりかねません。縁故採用で入社した社員と紹介者との距離感が近すぎると他の社員との関係が悪くなることもあるため、トラブルを防ぐためにも事前に通達するなど対策を取りましょう。

紹介者によっては、辞めさせたくても解雇できない場合がある

縁故採用者は、紹介者との関係性を考慮して辞めさせたくても解雇できない場合があります。とくに役員・部長クラス、お得意先の御子息などの縁故採用だと、能力不足が判明しても人事異動さえも難しいこともあるようです。また、能力だけではなく遅刻の常習犯だったり、怠け癖があったりするなど社会常識に欠けていてる人いるなど、教育に苦労することもあるでしょう。取引先などとの関係性は良好に保てたとしても、戦力になるとは必ずしも言い得ません。

【求職者から見た】縁故採用のデメリット

紹介者との関係性によっては退職しにくい

企業側が辞めさせにくいのと同様に、紹介によって入社した場合は、縁故採用者も紹介者の顔を立てて、すぐに離職がしづらいケースが多くみられます。たとえ、紹介者から聞いていた仕事内容と違ったり、自分のやりたい仕事と違っても、自分が離職することによって紹介者の面子を潰したり、不利益となる状況になることも。離職する場合には、余裕を持った退職報告や紹介者に事前に話をするなど、事前の配慮や気遣いは必要になってくるでしょう。

自分の行動が紹介者の評判に関わるためプレッシャーがかかる

縁故採用で入社した場合、自分の行動や成績が紹介者の評判にも関わるため、過度なプレッシャーを感じてしまう人もいます。どんな採用方式で入社したとしても、本人の努力と実力で評価されるべきです。しかし、紹介者が実力者であればあるほど、周囲からの期待も大きくなることもあるでしょう。そのようなプレッシャーを感じてしまう体質であるなら、はじめから縁故採用ではなく正規ルートで応募するほうが本人のためにも良いかもしれません。

リファラル採用との違い

縁故者を戦略的に採用することがリファラル採用

縁故採用とリファラル採用は広義では違いはありません。現代日本のビジネス用語としてリファラル採用は、すでに働いている社員からの紹介を受けて戦略的に人材を採用する採用手法という意味です。リファラル採用は積極的に縁故採用の採用手法を利用すると言ったところでしょうか。リファラル(referral)は、英語で紹介・推薦という意味があり、アメリカではメジャーな採用手法としても知られ、採用全体の約3割を占めているとも言われています。求人媒体や人材エージェントなどを使用せず、社員の人脈を使って募集をかけることで、採用コストの削減や信用のある即戦力の人材確保などのメリットもあるでしょう。

コネ入社との違い

能力、適性は関係なく個人的な都合で入社することがコネ入社

コネ入社とは、コネクション入社の略称を意味し、社長の後継者など血縁関係のある者が高待遇で入社したり、重要クライアントの血縁者が入社する場合によく使われます。コネ入社も縁故採用も特別な採用ルートでの採用方式には違いありません。縁故採用は企業と何らかの関わりがある一般社員も含まれることを採用条件している企業が多く、コネ入社よりも比較的幅広く定義している場合は多いようです。コネ入社の場合は、採用基準よりも著しく低い能力を持つ求職者であっても、さまざまな圧力から雇わなければならず、採用後は苦労する担当者もは少なくないようです。

縁故採用(リファラル採用)を実施する流れ

どんな人材を採用するか採用基準を定める

トラブルを未然に防ぐためにも、縁故採用を実施する前には人事部などで採用プロジェクトを発足し、中心となって動くメンバーを集めて運用ルールを決めておくと良いでしょう。縁故採用だからといって全ての人を採用できる訳ではないので、どのような人材を募集するのか、採用・不採用の基準などはとくに重要になってきます。また、紹介を受け付けない人の条件や紹介報奨制度(金銭など)の有無など多岐に渡ります。選考における公平性を保つためにも、採用人数も予め決めておくと良いでしょう。

社員が紹介しやすい環境を整える

運用ルールが決まったら、人材の条件や配置部署、待遇などの詳細を公表し、全社員に対して告知をしましょう。縁故採用は、応募者が不採用となった場合、紹介者と応募者の関係が悪くなる可能性もあり、推薦したい人がいても紹介まで発展しないケースも珍しくありません。そのような懸念点を払拭するためにも、求める人材の条件はできるだけ詳しく伝え、求める人材の紹介を獲得しやすいような工夫をすることも重要になります。また、不明点があった場合の問い合わせ先の周知も忘れないようにしましょう。

実際に募集してみる

実際に募集を始めると想像以上に応募が集まることもあれば、全く紹介者が出てこない場合などさまざまなケースが予想されるでしょう。とくに紹介者がなかなか現れない場合は、早急な見直しをする必要があります。社員にヒアリングを行い、もし紹介手続きにかかる作業が面倒で紹介者が少ないのであれば、フローを簡略化するなど具体的に動くことで改善が期待できます。ITの導入や報奨金の金額を見直すなど、その時々で社員が利用しやすい仕組みを構築するようにしましょう。

自社に合った選考をする

社員からの紹介があれば選考へと移りますが、一般的な書類・面接といった採用フローとは違う流れで進めることも多いので、自社に合った選考方法を考える必要があります。縁故採用であっても通常の採用フローと同じように書類・面接を通す、または面接のみで選考するなど、自社で規定したルールに沿って現場が混乱しないようにしましょう。また、縁故採用は入社に至るまでのリードタイムが長いため、求人サイトなど他の採用チャネルと組み合わせた運用を行い、採用人数を割らないようにすることも大切です。

会社に必要な人材を採用する

採用活動の本来の目的は、人材不足の解消や新しい人材の活躍による企業のさらなる発展であり、しがらみや癒着ではありません。当たり前のことではありますが、適材適所の観点から会社にとって必要な人材を採用することを念頭に入れ、能力に合った役職や待遇である必要があります。また、縁故採用でいきなり大量の募集をしてしまうと社内のバランスや風通しも悪くなることもあります。良質な人材を採用することを目標にし、周囲から指摘された場合にも納得できる回答を用意し、仕組みを整えていきましょう。

縁故採用の注意点

公平性を保つためのルールが必要

縁故採用は、社員の紹介や取引先からの紹介によって採用するフローのため、選考における公平性を保つことが難しくなります。公平性を保つためにも、事前に運用ルールを決めて周知する、変更があった場合にも一斉に社内に通達するなどの徹底が必要なるでしょう。縁故採用者に対して必要以上の待遇を用意すると、他社員から不満が上がったり、不快に感じることも多いにあり得ます。トラブルを防ぐためにも、採用には一定の基準を設け、その基準に沿った運用を行うことが重要です。

公務員は縁故採用が禁止されている

国家公務員法や地方公務員法には、採用に関して社会的身分や門地による差別は禁止され、能力に基づく採用をすべきと規定されており、縁故採用は禁止されていると言えます。ただし、地方の規模の小さい自治体ほど縁故採用をしている割合は高く、有力な市議会議員や国会議員の近親者が入職しているのも事実です。人口の少ない市町村では人間関係も密接かつ、出所のハッキリしている人を採用したがる傾向が高いなど理由はさまざまです。少子高齢化が進み採用コストの削減がなされているなど、経済的な問題も含むため一概には言えません。

縁故採用で良質な人材を確保しましょう

縁故採用は、ネガティブイメージで用いられることもありましたが、採用費用の削減、優秀な人物と巡り会えるなどの理由から昔から取り入れられてきました。その反面で、採用までに時間がかかるので、今すぐ人材が欲しいという状況にはあまり向かないなどのデメリットもあります。活用するためには、求人媒体などの他チャネルでの採用活動との併用や、運用体制を整えるなどの工夫も必要です。縁故採用はメリットの多い採用手法であることは間違いないので、紹介者への配慮など運用ルールを整え、縁故採用を積極的に活用していきましょう。

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