学習性無力感とは【具体例や克服するための予防策についても解説します】

記事更新日:2023年11月21日 初回公開日:2023年11月21日

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学習性無力感とは回避できない強いストレスを受け続けることにより、自分で物事を考えて行動できる力を奪われている心理状態のことです。職場でよく見られる無気力な社員も、実は本人に問題があるだけではなく、職場環境のストレスから学習性無力感に陥っている可能性があります。学習性無力感は放置していると本人のパフォーマンスを下げるだけでなく、最終的には心身の健康を害してしまう恐れがあります。そのため、管理職はこのような状態に陥る前に、予防策を講じていかなければなりません。今回は学習性無力感の原因や予防策についてご紹介していきます。

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学習性無力感とは

長期のストレスにさらされるとストレスを避ける抵抗すら諦めてしまう現象

学習性無力感とは長期間ストレスにさらされ続け、現状を打開する行動自体を諦める心理現象のことです。通常、人は強いストレスを受けると、自分なりの対応でストレスを回避しようと行動するものです。しかし、ストレスが避けられない者である場合、心身が疲弊し、「何をやっても無駄。」と学習することで抵抗を諦めてしまいます。また、自分で考え行動すると悪い結果を招くと考え、自分から考え行動することを放棄してしまいます。

心理学の理論である

学習性無力感は、アメリカの心理学者であるマーティ・セリグマンが発表した概念です。セリグマンは実証実験の結果を経て、人は避けられない苦痛を受け続けると、それが回避可能な状況に変化しても耐え続けてしまうことを発見しました。また、昨今の研究結果で人の脳は長期間ストレスを受け続けると、原因をコントロールできる方法は無いと思い込むようにできているとも述べられています。そのため、学習性無力感は本人の気質に原因があるわけではなく、全ての人が無力感に陥る可能性を秘めているとも言えるでしょう。

犬を用いた実験で実証された

1967年に行われた実証実験でセリグマンは初めに二つのグループに分けた犬のうち、片方は身動きできない状態で電気ショックを与え、もう片方には何もしませんでした。翌日、双方のグループの犬を電気の流れる箱の中に入れました。電気を回避するためには箱の周りの柵を飛び越え、隣の床に移動しなければなりません。しかし、実験を行うと後者の犬は隣の床に移動したのに対して、前者の犬はその場に留まり続けました。結論として後者の犬は、前日に電気ショックの苦痛を避けられないものと学習したと考えられます。

人を用いた実験でも実証された

人を用いた実験では、不快に感じるほどの大きな音が流れる部屋を使用しました。被験者のうち、一方はスイッチを押すと音が止まる環境に、もう一方には何をしても音が止まらない環境に置きます。これを行うと、人も先述した犬と同じように、後者の環境に置かれた人は抵抗を諦めてしまい、音を止めようとはしなくなります。このことから、回避不能な強いストレスにさらされると、動物だけでなく人も同じように抵抗しなくなってしまことが分かりました。

学習性無力感を感じる原因

周りから継続して否定される

学習性無力感に陥る原因として特に挙げられるのは、周囲の人から継続して否定される経験をしたことです。人は自分の行動や価値観を他人に継続的に「間違っている」と否定され続けると正当性の有無に関わらず、意見を口に出す前に「どうせ否定される。」と断定しがちになります。これは、仕事の場面だけでなく、その人の家庭環境によっても起こり得る状況です。そのため、自分の意見をなかなか言えない人は、学習性無力感に陥っている可能性があります。

行動の成果が見出しにくい状況にある

行動の成果が見出しにくい状況にある時も学習性無力感を感じる場合があります。仕事や学校生活など一つの課題に取り組む際には、目標達成のためにあらゆる手段を講じていかなくてはなりません。しかし、様々な方法を試しても問題解決できない場合や思い通りの成果が得られない場合は、自分の努力に意味はあるのか分からなくなってしまうケースも少なくありません。どんなに努力しても、それに見合う成果を得られないと「どうせ努力しても無駄。」という考えを持ってしまい現状打開を諦めてしまうのも自然な考えです。

モラハラやパワハラが多い

職場やプライベートでモラハラやパワハラを受ける機会が多い人は学習性無力感を感じるリスクが高まります。モラハラやパワハラなどを受けた際に、何度嫌だと言っても聞き入れてもらえないと、多くの人は「抵抗しても意味が無い。」と思います。下手に反発すると被害が悪化する恐れがあるので、慎重な対応が必要な分個人での抵抗は困難です。特に職場の場合は自分と価値観の合わない人でも、上手に関係を築かなければという意識が働きがちになるため、自分ばかり我慢して無力感を感じてしまう場合も少なくありません。

学習性無力感に陥りやすい人の特徴

完璧主義である

学習性無力感に陥りやすい人は多くの場合完璧主義です。完璧主義は理想が高い分、自分の現状と目標とする地位や成果のギャップの大きさにダメージを受けがちです。理想と現実の格差ばかりに注目していると、小さな進歩も見逃してしまい、自分は努力しても大きな成長や成果は得られないと感じてしまいます。そのため、完璧主義が徹底していると、自分を過小評価することになり、結果として無力感を感じがちになります。このように、周囲の環境と価値観の相性が悪いことも、学習性無力感の要因になることもあります。

睡眠が乱れている

睡眠不足や生活習慣の乱れも、学習性無力感に陥りやすい要因の一つです。一般的に、人は1日の睡眠時間が4時間半に満たない生活が続くと、不安や混乱などの抑うつ傾向が高まると言われています。睡眠時間はメンタルの状態と深い関係があり、睡眠時間が短いと本来就寝中に整理されるはずの記憶や感情を処理できず、嫌な記憶や感情だけが残ってしまいます。また、睡眠不足は認知や判断能力を鈍化させる影響もあるので、睡眠不足が続くと必然的に精神が不安定になり物事をネガティブに捉えやすくなる恐れがあります。

自己肯定感が低い

自己肯定感が低い特徴がある人は学習性無力感に陥りやすい傾向があります。自己肯定感とは自分で自分自身を認められる感覚のことです。この感覚が未発達だと、他人の些細な言動にも敏感に反応してしまい、自分ではなく他人主体の価値観で物事を判断しがちになります。自分の価値観で物事を判断できないと、他人の意見が正しく異なる意見を持っている自分は人として正しくないと誤認するケースも少なくありません。そのため、自己肯定感が低いとネガティブな事柄を重く受け止めすぎて、無力感を感じやすくなります。

過去に強く人格を否定されたことがある

学習性無力感に陥りやすい人は過去に強く人格を否定された経験のある場合も少なくありません。例えば、幼少期に親に自分の言動を強く叱責される、学校の先生や上司に自分の意見を聞いてもらえなかった経験が該当します。自分の意見や気持ちを受け止めてもらえない経験があると、自分の言葉は口に出したところで相手には伝わらないと考えてしまうのも自然な反応です。このようなネガティブな経験が自分の中に強く残っている人ほど無力感を感じやすく、強いストレスを感じても抵抗ではなく耐える選択をしてしまいます。

学習性無力感のビジネスにおける具体例

社員のパフォーマンスが悪くなる

学習性無力感は個人の心理状態のため、他人が認知するのは難しいですが、この状態に陥っている場合行動にその特性が見えられるケースがあります。特にビジネス面で多いのは社員のパフォーマンスが悪くなるという点です。強いストレスにさらされている人は自分に無力感を感じているだけでなく、正常な判断や行動を自分で行えなくなります。このような特徴が仕事に影響すると自然と社員のパフォーマンスは下がります。そのため、業務所での些細なミスが増える、仕事の進捗が遅れるなどのトラブルが頻発している場合は、社員が学習性無力感に陥っている可能性があります。

社員が意見を出しにくくなる

ビジネスでは会議や業務改善の話し合いなど、社員が積極的に自分の意見を出さない消極的な様子が見られた場合、その社員は学習性無力感の恐れがあります。自分の意見を分かりやすく提示するためには日常的に、他人と会話し自分なりに考えをまとめる機会を増やさなくてはなりません。しかし、職場で日常的に上司に叱責され、自分の意見が反映されないと上記の機会には恵まれないだけでなく、意見を出しても聞いてもらえないと学習してしまいます。そのため、社員が意見を出さない職場は、根本的に社員が意見を出しにくいと感じている職場でもあります。

集団のパフォーマンスが下がる

学習性無力感は社員個人だけでなく、集団のパフォーマンスを下げる可能性があります。学習性無力感に陥っている人は本人が意識していなくても、ネガティブな言動をとりがちです。ネガティブな言動をする人が職場にいると、自然と職場の空気が悪くなり、他の社員にも無力感が伝染するケースも考えられます。また、個人の生産性が低いと、その分の穴埋めをするのは他の社員です。そのため、一人の無気力な社員により社員全体に不満や鬱憤が溜まりやすくなるのも、パフォーマンスが下がる理由の一つです。

精神疾患を引き起こす

学習性無力感は放置すると精神状態の不安定さから抑うつ状態に陥り、精神疾患を引き起こす恐れがあります。ストレスにさらされた人が、精神的な不調を引き起こすのは珍しいことではありません。一度心のバランスを崩してしまうとその社員は仕事を続けることが難しくなり、休職や退職をせざるを得ない場合もあります。また、職場の環境が悪いと不調をきたす社員は複数でてくる可能性もあるので、放置していると離職や休職の人数が増え、会社自体が人手不足に陥ってしまいます。

学習性無力感への予防策

職場の雰囲気を変える

社員の学習性無力感を予防するためには、職場の雰囲気を変える必要があります。学習性無力感を感じやすい職場には、共通して上下関係が厳しく部下は無条件で上司の命令を聞かなくてはならない空気や、社員同士の繋がりが薄い空気が蔓延しています。そのため、上記のような雰囲気を払しょくするためにも、会社はチームの結束力の維持や部下の意欲を汲む空気を作らなくてはなりません。具体的には、社員同士が交流できる機会を多く設ける、ハラスメントの相談窓口を設置し積極的に周知に努めることなどが予防策として挙げられます。

社員の意見をよく聞く風土をつくる

学習性無力感は「意見を言っても相手に聞き入れてもらえない。」という経験や考えから起因するものです。そのため、学習性無力感を予防するためには、上司が部下や後輩の意見をしっかりと聞き入れる風土を作る必要があります。具体例としては管理職に向けたマネジメント研修の実施等が挙げられます。学習性無力感を予防するためには、高い地位や役職にある人物が先んじて働きかけることが大切です。管理職や上層部が積極的に、部下とどのように接するべきなのか学習し、実行していきましょう。

まとめ

学習性無力感を理解して良い組織づくりに活かそう

学習性無力感は他人からは認知しにくいので、陥っていても単なる無気力な性格の人と思われるケースも少なくありません。しかし、無気力に見えるのは強いストレスに耐えるために、自分の感情をシャットアウトしている可能性も考えられます。そのような状態が続くと、周囲の人に影響するだけでなく、最終的には心身のバランスを崩す恐れがあります。そのため、無気力な社員が職場に居る時は個人の問題として片付けるのではなく、学習性無力感を疑い適切な対応を取らなくてはなりません。学習性無力感の特徴を理解して、社員が意見を出しやすい組織づくりに努めましょう。

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