モラールサーベイとは【厚生労働省方式やNRK方式といった実施方法を交えて解説します】

記事更新日:2023年10月18日 初回公開日:2023年10月18日

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普段一緒に働いていても、本音を聞き出すのは簡単ではありません。経営陣や管理職という立場が上になるほど、従業員は本音を伝えにくくなります。しかし企業運営を長く続けていくためには、従業員の不満や意見をしっかりと吸い上げ職場改善などを行っていく必要があります。従業員の本音や意識を引き出す方法として、よく活用されているのがサーベイです。サーベイを活用することによって、従業員からの本音や意識を引き出すことが出来ます。今回はサーベイの中でも、モラールサーベイについて解説します。人事担当者の方は参考にしてみてください。

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モラールサーベイとは

従業員の意識調査のこと

モラールサーベイとは、従業員の意識調査のことです。モラールとはフランス語で、士気や意欲という意味を持っています。従業員の士気は、働く場所や業務量・裁量の大きさ、職場での人間関係など様々な要素で構成されています。モラールサーベイでは年に1、2回従業員にアンケートを行い、組織としてのやる気を分析します。結果から問題点を分析し、解決策を考えます。問題解決を行う事で、従業員の企業への愛着度や信頼度の向上に繋げます。

モラールサーベイが必要な理由

従業員の士気を上げることに繋がる

モラールサーベイが必要になっている理由は、従業員の士気を上げる事に繋がるからです。人間は、組織のメンバーと同じ目的を持ち対等な立場で協力して働くことに高い満足感を感じるほどモラール(士気)が高く、生産性も向上するとされています。モラールサーベイでは、働き甲斐や企業への愛着度を計ることが出来る側面を持っているため、企業が抱えている問題が何なのかを把握しやすくなります。組織強化を行うためには従業員が高い士気を持っておく必要があり、注目されています。

モラールサーベイとパルスサーベイの違い

パルスサーベイは高頻度で質問がシンプル

モラールサーベイと似たサーベイにパルスサーベイがあります。パルスサーベイは月次や週次の高頻度で実施するサーベイで、質問がシンプルなのが特徴です。パルスサーベイは、回答結果から組織の状態の推移を記録し対策を講じる方法です。新しく入ってきた従業員が職場に馴染めているかの確認や、従業員のストレスチェックなどにも向いています。活用方法などはモラールサーベイと似ている部分もありますが、モラールサーベイは労働環境や条件に問題がないかなど中長期的な指標に関する確認を行う点も異なります。

モラールサーベイの実施方式

厚生労働省方式

モラールサーベイの実施には2種類あります。厚生労働省方式は、1957年に一般社団法人日本労務研究会が考案した厚生労働省方式 社員意識調査(NRCS)です。厚生労働省方式は、中小規模の事業者を対象にしたサーベイです。仕事・給与・上司の3つのアンケートから従業員の意識調査を行っていきます。結果を分析することで従業員の意識を明らかにし、従業員の不平不満を改善していく解決策を考えていきます。厚生労働省方式は、サービス業に対してNRSCⅡという業種特化のサーベイも提供しています。

NRK方式

モラールサーベイのもう一つの方式は、NRK方式です。NRK方式も厚生労働省方式と同じく、日本労務研究会が開発した手法で従業員数300人以上の大規模企業を対象にしたサーベイです。従業員にマークシート方式で質問に答えてもらい、その結果を分析していきます。結果は、労働条件・人間関係・管理・行動・自我の5つの観点を元に分析を行います。ベースとなる質問は決まっていますが、NRK方式では企業が従業員に質問したいと考えている項目をオプションで追加することも可能です。

モラールサーベイの実施方法

自社で行うか外部に依頼するか決める

モラールサーベイの実施方法は、まず自社で行うか外部に依頼するかを決めます。外部機関は、モラールサーベイを開発した一般社団法人日本労務研究会以外にも社労士事務所や労務のコンサルファームなどに依頼をすることが可能です。自社で実施する場合よりもコストが掛かりますが、外部に依頼することによって質の高い調査を行うことが出来ます。調査をしっかり行えることで、適切な評価を得られ職場環境の改善も確実に行う事が可能です。

事前に実施の背景や流れを説明する

モラールサーベイは、事前に従業員に実施の背景や流れを説明しておきましょう。モラールサーベイは、社内の課題や問題点を分析し職場環境を行うため、従業員にとってもメリットのあるサーベイです。しかしサーベイに回答するには、個人の業務時間を使って回答しなければいけないため、モチベーションが低下する可能性もあります。実施する場合は、事前に実施する目的や流れを説明し従業員へのメリットを理解してもらう事が大切です。

集計と分析をしてフィードバックを行う

モラールサーベイを実施した後は、集計と分析を行い従業員にフィードバックを行います。従業員の回答を集めたら、出来る限り早く分析を行いフィードバックを伝える事が大切です。実施から結果を説明されるまでの時間が短ければ短いほど、次回のサーベイ回答へのモチベーションが高くなります。時間が掛かってしまうと、その分従業員からの関心が低くなってしまう可能性もあります。モラールサーベイを実施して、問題の分析・職場改善を行う事でサーベイ実施の意義を理解してもらう事が出来ます。

モラールサーベイ実施のメリット

解決すべき自社の課題が明確になる

モラールサーベイを実施するメリットは、解決すべき自社の課題が明確になる点です。組織的な課題は、経営者や管理職の目線では気付きにくい場合があります。モラールサーベイを実施して集まった回答は、従業員の意識が表れており企業としての課題といえます。モラールサーベイは科学的な根拠に基づいた調査であり、調査結果には精度と客観性が担保されています。経営陣にとっては、耳の痛い内容になるかもしれませんが組織運営を行う上で、従業員の意識を把握することが大切です。

従業員の本音に向き合う機会となる

モラールサーベイは実施することで、従業員の本音に向き合う機会になるメリットがあります。経営陣が良かれと思って導入している制度や手当を従業員のためを思い導入していたとしても、実はあまり従業員から評価されていないという場合もあります。こういった従業員の本音と向き合う機会が出来るのも、モラールサーベイのメリットです。また経営陣側だけでなく、普段中々言えない不満や意見を従業員が会社に伝えることが出来る場にもなります。サーベイを通して、従業員の本音を経営陣に届けられます。

従業員の離職を防ぐことに繋がる

従業員の離職を防ぐことに繋がるのも、モラールサーベイ実施のメリットです。モラールサーベイの実施により、企業として取り組む課題が明確になり、改善していくことで離職の原因となる問題を排除することにも繋がります。従業員にとって働きやすい職場環境が整い、離職を防ぐことに繋がります。またモラールサーベイの結果によって職場が改善されていくことで、従業員は自分たちの意見が通ったと感じ企業への信頼や愛着度も高められるのもモラールサーベイのメリットです。

モラールサーベイ実施のデメリット

さまざまなコストが発生する

モラールサーベイ実施のデメリットは、様々なコストが発生する点です。モラールサーベイ実施は企業にとって従業員の本音を聞ける重要な機会ですが、実施を外部に委託した場合は相応のコストを支払う必要があります。自社で実施しようとした場合も、担当する人の人件費や分析に掛かる時間など様々なコストが発生します。最も重要なのが、回答する従業員の負担と人的コストです。従業員の本音を多く引き出そうとして、質問数を増やしてしまうと回答に時間を要し通常業務に影響が出る恐れもあるため注意が必要です。

従業員満足度が減少する可能性がある

従業員満足度が減少する可能性があるのも、モラールサーベイ実施のデメリットです。問題や課題を改善し、職場環境を良くすることが出来れば従業員満足度を高めることが出来ます。しかしサーベイ回答に時間を要したにもかかわらず、フィードバックされない場合や改善が感じられない場合にはモチベーションが低下してしまう可能性があります。企業は意見を集約するだけで、しっかりと対応してくれないといった印象を持たれてしまうかもしれません。サーベイを行ったら結果を共有し、改善を示していくことが大切です。

モラールサーベイを活用する上でのポイント

実施の目的を明確にする

モラールサーベイを活用する上でポイントとなるのは、実施の目的を明確にすることです。モラールサーベイに限らずサーベイを実施する時は、実施目的を事前に従業員に説明しないままサーベイを実施してしまうと従業員の本音を引き出すことは出来ません。実施目的をしっかりと言語化し、事前に従業員に理解してもらう事で本音で回答してもらう事が出来ます。従業員が本音で回答してくれたサーベイの結果を分析することで、企業の課題が明確になり改善を行う事で従業員の満足度も上がって行きます。

継続して実施する

モラールサーベイは継続して実施することで、効果を発揮することが出来ます。モラールサーベイは高頻度で行うサーベイではありませんが、少なくとも年に1度実施し結果を分析する必要があります。単発実施や時期を決めず不定期で行ってしまうと、組織のへの取り組みに対して従業員の意識の変化を捉えることは出来ません。従業員の意識の変化を捉えてパフォーマンス向上や改善に繋げていくためにも、実施する側が改善を行う意識を持ち、定期的に実施していくことが重要です。

モラールサーベイの実施事例

株式会社富士ゼロックス

モラールサーベイの実施事例は、株式会社富士ゼロックスです。同社では1978年からモラールサーベイを実施しており、2013年には職場環境の意識改善を掲げて質問項目を本社と関連会社で統一しています。統一した結果、経営陣に対しての不信感が浮き彫りとなり従業員の挑戦する心を促す制度を導入するなど、職場改善対策を導入しています。また自社で長年培ってきたモラールサーベイの経験を活かし、他社向けのモラールサーベイを利用したコンサルティングなども行っています。

株式会社日立ソリューションズ

株式会社日立ソリューションズもモラールサーベイを実施している企業です。同社は、日立グループの情報分野の中核を担っており半年に一度、モラールサーベイとして課長以下の従業員に対し従業員満足度アンケートを実施しています。そのサーベイの結果から社内の問題点を洗い出し、従業員へのサポート体制を整えていくことで企業全体の改善に取り組んでいます。従業員に対しては、サーベイの結果や考えられる問題点・改善点を公表し、経営方針を決定する際の資料としても活用されています。

まとめ

モラールサーベイを実施して従業員の本音を引き出そう

モラールサーベイの実施方法やメリット・デメリットについて解説しました。モラールサーベイを実施することで、従業員が組織の状況や労働環境などについてどのような意識を持っているのかを、科学的な指標に基づいて知ることが出来ます。しかしサーベイを行うだけで、フィードバックや改善が見られないと従業員からの不信感に繋がり、逆効果になる可能性もあります。効果的に行うためにも、従業員の匿名性保護や実施する目的をしっかりと言語化し理解してもらう事が大切です。モラールサーベイを実施して、従業員の本音を引き出しましょう。

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