記事更新日:2023年10月30日 | 初回公開日:2022年10月25日
採用・求人のトレンド グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報 用語集カウンターオファーとは、英語で対案、反対申し込みという意味を持ち、転職や退職を考える社員に引き止め交渉をすることを指します。元々は人事の用語ではなく、貿易などの契約交渉で用いられていた用語です。これが転じて人事面でも使われるようになりました。辞めようとする社員や従業員に対して好待遇の条件を譲歩として提示し、会社に留まってもらうことが主な目的です。基本的には一定の条件を提示して従業員を説得しますが、ただ上司から説得を受けることもカウンターオファーと呼ばれます。
カウンターオファーをしたことのある企業は、65パーセントだそうです。実際に多く感じないでしょうか。また、カウンターオファーを受けた社員が承諾する確率はどれくらいなのでしょうか。エンジャパン株式会社は、「エン転職コンサルタント」にて、30歳以上の人388名を対象にカウンターオファーに対するアンケートを行っています。カウンターオファーを受けたことがある人で実際に依頼を受け入れた人は、24パーセントという結果でした。オファーの成功率は、決して高いとは言えません。
企業がカウンターオファーをする理由として優秀な人材を手放さないことが挙げられます。やはり業績が良い、リーダーシップのある、その人にしかできない能力を持っているような人材に辞められてしまうと会社にとっては大きな痛手になるに違いありません。また、その社員が同業他社への転職を考えているのであれば、会社の競争に負けてしまうというリスクもあります。譲歩として条件を高くするデメリット以上に、こうした優秀な人材が会社に留まってくれることに大きなメリットがあると言えます。カウンターオファーには一定の合理性があると言えるでしょう。
カウンターオファーの交渉内容として、昇給が考えられます。会社を辞めようとする人は、給料に不満を感じている人が少なくありません。自身がもらっている給料と比較して、仕事の量が多すぎる、給料が自分の能力に対して上がっていかず、今後も上がる可能性が低い年功序列の会社などです。カウンターオファーを成功させるためには、どのくらいの給与水準を目指しているのかを聞き出し会社が今以上の給料を提示するとともに、今後も能力に応じて給料が上がっていくことを伝えると良いでしょう。
カウンターオファーの交渉内容として、昇進が考えられます。従業員が退職する理由として、待遇に不満があるということは少なくないでしょう。上司からの指示が絶対であり自分の裁量を持って自由に仕事をすることができない、上司との性格が合わず関係がうまくいかず悩んでいるという人も多いです。これらの問題は昇進をさせることで解決できるでしょう。昇進させることで仕事の裁量権が増え、自分のペースで仕事ができるようになるでしょう。
カウンターオファーの交渉内容として、配置や職場環境が考えられます。給与や地位といった要素の他に職場での人間関係に不満を持って退職や辞職を考えている人は少なからずいるでしょう。こうしたことを踏まえ、希望している部署への異動を考えることで従業員の希望を叶えるのと同時にジョブローテーションによるスキルのさらなる向上という効果もあります。また、ハラスメントや残業などを理由に辞めたいということも考えられます。こうした場合には職場環境の改善に努め、問題をなくすことが交渉内容として期待されます。
カウンターオファーの交渉内容として、契約内容が考えられます。会社を辞めたい理由として自身の将来性が深く関わっています。例えば、雇用形態が非正規雇用であればいつ契約は永久的でないために不安を感じて転職を考えてしまうでしょう。こうした場合社員は安定を希望しているということなので、カウンターオファーとして正社員への契約変更が効果的であると言えます。また、育児などのために勤務形態をフレキシブル制にすることも交渉内容として考えられます。
カウンターオファーのデメリットとして、社内のモチベーションが下がることが挙げられます。カウンターオファーを行うということは、ある人の待遇を他の社員よりもよくするということを意味します。つまり、他の社員からすれば辞めることを防ぐために好待遇をとることは不公平感を生みだす可能性があり、仕事へのモチベーションに関係します。留まった社員の成績が他より良くないのに待遇が良いままであると他の社員は正しく評価されていないと会社に不信感を抱き、仕事へのモチベーションが下がってしまうでしょう。
カウンターオファーのデメリットとして、社員が会社に居づらくなる可能性が考えられます。カウンターオファーを受けた社員は、オファーを承諾したとしても周りの社員との関係が悪くなる可能性が考えられます。なぜなら、退職を検討していたことや、カウンターオファーを受け承諾したという噂が他の社員に流れてしまう危険性があるからです。カウンターオファーは慎重に行いましょう。会社に留まった社員は、人間関係のもつれや気まずさから再び転職活動をすることも少なくありません。
カウンターオファーのデメリットとして、再度離職する可能性があることが考えられます。交渉で決まったカウンターオファーの内容が十分に反映されていない、または元々抱えていた問題が解決されていない場合、さらに会社に対しての不信感が募ってしまいます。また、他の社員との待遇の違いから他の社員との人間関係が上手くいかない可能性もあります。こうした理由からまた離職を考えてしまうかもしれません。
カウンターオファーのデメリットとして、悪しき前例になる可能性があることが考えられます。退職をする際にカウンターオファーを受けられるということが社内全体に認識されると、これが慣習化してしまう恐れがあります。それにより退職を願い出る人が増えてしまいます。また、カウンターオファーを一つするのにも人事とってはかなりの負担になってしまうため、カウンターオファーの乱発はできる限り防ぎたいでしょう。
カウンターオファーをする際の注意点として、条件は書面に残して実行することが考えられます。その後の対応に関して、交渉したことは確実に実行することが大切です。社員を留まらせるために、提示した条件を忠実に実行することが大切です。社員が留まったことをいいことに交渉したことを会社側が実行しないケースもごくまれに見られます。そうすると、社員は会社に不信感を抱くと共に、大きな憤りを感じます。そして、再び転職活動を始めることになるでしょう。せっかく留まってもらうのですから、双方にとって良い結果になるように心がけましょう。
カウンターオファーをする際の注意点として、周囲の従業員にも注意を払うことが考えられます。カウンターオファーを受けた社員と共に働く周りの社員も、事情を知っていれば気を使うかもしれません。他の社員へも業務で困ったことがないかを聞くなど、フォローを忘れないようにしてください。本人を気にかけてしまいがちですが、周囲の人のケアも怠らないようにしましょう。周囲の人のケアをすることで、社内の雰囲気も自然と良くなるはずです。全員で協力しあう気持ちを常に忘れないようにしましょう。
カウンターオファーをする際の注意点として、労働環境や条件を見直すことが考えられます。本来、社員が退職を考えること、そしてカウンターオファーをしなければいけない状況は会社にとって望ましくないことは明白です。本人の事情である場合を除いて社員の退職が会社側に原因があると考えられる場合は、それを解消することが会社側に求められます。そして何らかの問題が生じていると言えます。つまり、まずは労働環境が全社員にとって満足のいくものであるかや、評価項目や条件によって正しい人事評価ができているかを見直すことが重要です。
カウンターオファーをせず退職や離職を防ぐために、十分にコミュニケーションをとることが考えられます。従業員や社員同士でのコミュニケーションは業務の効率性や人間関係の観点からたしかに重要ですが、上司や人事担当がしっかりと社員との相談をする時間を作ることも重要であり、コミュニケーションの一環です。悩みや不安を早い段階から寄り添って聞いてあげることで従業員のモチベーションの向上や信頼感が増し、事前にカウンターオファーをすることを防げる可能性があります。
カウンターオファーをせず退職や離職を防ぐために、社員が働きやすい環境を整えることが考えられます。先ほども述べた通り、社員が退職や離職をしてしまう原因に職場環境が考えられます。つまり、従業員が働きやすい環境を整備することが離職退職防止につながります。例えば、福利厚生を見直して休暇を取得しやすくする、子育て手当を与えるなどは効果的でしょう。特に女性にとっては子育て、仕事との両立は難しく、こうした会社側の補助があると安心感を得られるでしょう。
カウンターオファーをせず退職や離職を防ぐには、スキルアップの支援を行うことが考えられます。キャリアアップとスキルの向上には強い関係性があり、スキルを高めていくことで職場での地位が上がり、収入も上がっていきます。また、会社にとっても社内全体の業務効率が上がるため、効果的と言えます。
カウンターオファーは退職や離職を考える人を会社に引き留めるための有効な手法ですが、他の社員に注意を払う、オファーを有言実行していくなど様々な注意をする必要があります。こうした配慮が足りない場合には会社への信頼度が全体的に下がってしまい、今後の人材の採用にも影響が出てしまいます。こうしたリスクを十分に理解をし、できる限りカウンターオファーをせずして予め職場の環境を高水準保っておくことが一番重要です。
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