アルムナイ制度とは?【メリットから実際の事例まで紹介】

記事更新日:2020年09月11日 初回公開日:2020年09月07日

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近年HR領域において「アルムナイ」という言葉を使われることが多くなりました。人材不足の中、一度退社した社員との関係性を見直そうという動きです。戦後長らく続いた終身雇用の崩壊や人材の流動化が進んだ今、労働者のキャリアプランは可能性が広がり続けています。本記事では、そのような人材不足の企業が採用力を高める方法の一つとして、アルムナイ制度について紹介しています。アルムナイ制度が注目される理由や導入の際のポイント、実際の取り組み事例など、参考になりましたら幸いです。

アルムナイが注目される理由

終身雇用制度の終焉

次に、現在アルムナイが日本でも注目を集めている理由として、終身雇用制度の終焉という背景を押さえておきましょう。新卒入社の企業で長く働くことが当たり前だった時代は終わり、現在では転職・副業・企業など人材の流動化が進んでいますよね。企業の人材確保が重要な課題となる中で、会社を辞めていく人々を「裏切り者」として捉えていたような古い考え方も変わりつつあります。成果主義の導入や副業解禁、フリーランスなど働き方の構造転換を背景に、アルムナイを活用する動きが拡大しているのです。

優秀な人材リソース確保の困難化

また、労働者が自分の興味やライフステージに合わせたキャリアチェンジが一般的になっていくにつれ、「優秀な人材を雇用し続けること」の難易度が上がっているという背景も重要です。優秀な人材であればあるほど、その人材の流動性も高く、企業にとっての損失が大きくなっています。このような状況の中、企業側も優秀な人材を新しく雇用することは大変に困難なもの。それよりは、過去に在籍経験があり実力がわかっている人材を再雇用候補として囲い込んでおく方が効率的だと言われているのです。

アルムナイ活用のメリット

優秀な従業員の雇用

次に、アルムナイ活用のメリットを5点紹介します。一つ目は、上記に課題としても挙げた優秀な従業員を雇用しやすいという点です。この「優秀な人材」というのは、求めるスキルや経験を持っている点と、それを自社で発揮できる適応力がある点の2点が必要になりますが、このアドバンテージを得られるのがアルムナイ制度。アルムナイも企業のビジョンや風土を理解しており、企業側もアルムナイのスキルなども理解しているため、再雇用後も高いパフォーマンスを発揮しやすいと言われています。

採用/育成コストを抑えられる

二つ目に、採用・育成にかかるコストを削減できるという点。アルムナイ制度の場合は基本的に退職者本人からの応募や、在籍中社員からの推薦となるため、求人媒体など募集にかかる必要がありません。また、自社のビジョンや働き方を把握・理解している場合がほとんどなので研修・育成コストについても大幅に削減することができます。何かしらの不満があっての退職が前提となるため、そこを丁寧に確認しクリアしさえすれば、採用後のミスマッチが起こる可能性はほとんどないといえるでしょう。

企業の活性化・ブランディング効果

他にも、企業の活性化・ブランディングとしてイメージアップに繋げられるというメリットもあります。再雇用した人材が新しい風を巻き起こしてくれ、組織の活性化、コミュニケーションアップに繋がることは想像がつきますよね。それだけでなく、一度退職した人材が再雇用後も活躍できていれば、他の在籍中社員からも「一度退職してもまた戻ってきたい」とエンゲージメントを向上させることができます。このような活動を広報できれば人材輩出企業、働きやすい企業、として評判が上がりやすいのではないでしょうか。

有力な情報を得られる

アルムナイ活用のメリットの4点目として、再雇用候補とならないアルムナイでも、有力な情報提供をしてくれるという点があります。アルムナイは内部の視点に加え外部からの視点を持ち合わせているため、例えばアルムナイを対象に定期的にアンケートを実施するだけでも、有益な情報を取得しやすいのです。現在、外部の意見を利用して新しいものを生み出す「オープンイノベーション」に注目が集まっていますが、アルムナイの活用はこのオープンイノベーションにも繋がる可能性を秘めているといえるでしょう。

顧客やアンバサダー、パートナーになってもらうことができる

再雇用に繋がらないアルムナイを更に、顧客やアンバサダー、セールスパートナーとして活用できるという点も、メリットとして挙げておきましょう。アルムナイと良好な関係性を築けていれば、アルムナイが自社の商品や取り組みについて推薦、紹介をしてくれたり、業務委託先としてビジネスを一緒に拡大してくれたりすることもあります。内部を知る人の意見は信頼感が強いため、良い口コミが広がることで企や商品のイメージアップに繋がることもあるでしょう。

アルムナイ導入のポイント

イグジットマネジメント

アルムナイ制度を導入するためのポイント1点目は、イグジットマネジメントを強化することです。イグジットマネジメントとは、雇用における出口管理のことで、いわゆる「円満退職」を増やすための取り組み。具体的には退職時、退職後のステップアップ支援などを取り入れる、研修で社内の意識改革を行うなど、退職者の不安を軽減させ、快く送り出しをできるための活動を指します。退社時に自社に対して良い印象を持っていなければ、継続的な関係構築はできないため、大変重要な観点ですね。

退職者を受け入れる体制づくり

次に、会社全体で退職者を受け入れる体制、風土を構築することも重要なポイントです。まずはアルムナイ制度をきちんと設計し、社内に周知すること。アルムナイ側からの応募を待つ受けの姿勢ではなく、企業側から退職者向けのイベントなどを開催するなど、関係性を保ち続ける施策も必要となります。実際に再雇用となった際、例えば退職にあたり迷惑をかけられたと感じている社員などは再雇用に良くない心象を持つ人もいるでしょう。両者に「気まずさ」が残らないよう、アルムナイ活用への理解を示す社内教育をしていきたいですね。

雇用形態に多様性をもたせる

アルムナイはそれぞれ何らかの理由があり退職をした背景があります。「フルタイムでは働けない」「将来的に自分のビジネスを立ち上げたい」など、現実的な課題がある場合も多いため、雇用形態のバリエーションを増やすことも、アルムナイ活用のポイントとなり得るでしょう。正社員だけでなく短時間勤務のポジションや、兼業および業務委託のポジションを提示することができれば、採用に至る可能性は高くなります。双方にとって満足度の高い採用を実現するためには、自社の利益を考えながらもアルムナイ側のメリットも意識した歩み寄りが必要ですね。

アルムナイ導入に向く業種・職種

従業員数が多く、専門スキルが高い業種

一般に、アルムナイ制度導入に向いていると言われるのは、従業員数が多く、専門スキルが高い業種の企業です。従業員数が多いと必然的に退職者も多くなるため、アルムナイ制度を活用できるチャンスが増えますよね。また業務で使うスキルの専門性が高い業界として、医療や製薬業界、金融業界などもアルムナイ制度の恩恵を受けやすいでしょう。専門性が必要な業界は採用が難しく、採用単価も上がりがちだからです。自社でアルムナイ制度を導入した場合の費用対効果も確認しておきましょう。

個人のポータブルスキルが求められる職種

職種に関して言えば、企業や組織環境に関わらず発揮出来る個人の能力、いわゆるポータブルスキルが求められる職種がアルムナイの活用に向いていると言われます。コンサルタントやエンジニアはその典型例ですよね。ポータブルスキルのある人材はいつでも副業・独立ができるスキルを持ち、活躍の場を自分で見つけることができるため、キャリアチェンジの回数が多いといわれます。このような人材が揃う企業は強いですが、雇用し続けるための工夫としてアルムナイ制度の導入を是非検討しましょう。

アルムナイ活用の事例

アクセンチュア

企業におけるアルムナイ活動の事例をいくつか紹介していきます。先述の通り外資系コンサルティング会社は積極的に「アルムナイ制度」を取り入れており、特にアクセンチュアのアルムナイネットワークは有名。卒業生が自由に活用できるwebサイトで、世界規模で約15万人もの登録があるといいます。アクセンチュアへの再就職サポートだけでなく、アルムナイの近況報告ややイベント・フォーラムなどの告知など、帰属意識を維持し続ける取り組みがなされています。

スープストックトーキョー

スープストックトーキョーでは、アルムナイ向けに「バーチャル社員証」という制度を導入しており、退職後も社員価格で食事ができる他、メルマガや社内報で情報が得られたり、試食会や社内イベントに参加できたりします。バーチャル社員証に登録するがどうかは本人の意思に委ねており、よりアルムナイに寄り添った制度になっているのだとか。卒業後も一番近いお客様でいてもらいたいという考えのもと、再雇用もその先の一つの形として残されているのです。

サイボウズ

サイボウズのようなIT企業では、キャリアチェンジのスパンが短く、優秀なエンジニアの獲得が重要な命題となっているため、アルムナイ制度を導入にも積極的です。サイボウズでは毎月、エンジニア同士が交流できるイベント「Cybozu Meetup」を開催。その中でも特に「サイボウズを退職したエンジニア」を集めたパネルディスカッションイベントを企画し注目を集めました。実際に自社で働いたことがあり、その後外部での経験も持つアルムナイの意見を組み上げ発信することが、現社員のエンゲージメントアップや採用力強化にも繋がりつつあります。

ベーシック

株式会社ベーシックでもサイボウズ同様、エンジニアのアルムナイを招き、エンジニア向け勉強会「LTイベント」を定期的に開催されています。社外の勉強会は内部にいると気付きにくい考えを知るきっかけとなることが多いですが、特にアルムナイ目線の話は自社の特性を踏まえ自分事化しやすいというメリットがありますよね。円満退職ができアルムナイとのリレーションが図れていれば、このように社員向け教育、オープンイノベーションに繋がる機会も創出できるのです。

アルムナイを活用し採用力を強化しましょう

本記事ではアルムナイ制度のメリットやポイントを紹介してきました。アルムナイとの関係性を見直すことが長期的な人材力強化に繋がるという点を再認識頂けたのではないでしょうか。日本企業は終身雇用制を前提としていることが多く、退職後は関係性が切れてしまう場合がほとんどです。多様な働き方、ダイバーシティ改革が唱えられている現在ですが、社員がよりよく働ける環境を整えていくことの一貫として、アルムナイの活用にも是非目を向けてみてください。

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