記事更新日:2020年05月15日 | 初回公開日:2020年03月04日
用語集 人事・労務お役立ち情報パタハラは、英語で父性を意味するパタニティ(paternity)に対するハラスメントの略で、男性の育児休業取得を妨害する行為を指します。男性が育児休暇を取得しようとしたときに上司から嫌がらせを受けたり、降格や不当な職種転換など、男性社員が不利益を被る行為です。実際に男性が育児休暇の申請しても企業が認めない、休暇申請をした男性に復職後に仕事を与えないなど、不利益な扱いを受ける事例が報告されてきました。
マタハラは、マタニティー・ハラスメントの略で、妊娠や出産を理由に上司や同僚が女性社員に嫌がらせや不利益な扱いをすること指します。一方のパタハラは、子育てを妻に任せきりにせず、積極的に関わろうとする男性社員への嫌がらせのことです。どちらも育児休暇の取得や、育児に携わろうとする人に対して企業側がハラスメントをする行為。妊娠・出産する女性に対するハラスメントは「マタハラ」として広く知られていますが、その男性版と考えるとわかりやすいでしょう。
世界的に見ても日本の女性管理職や経営者が極端に少ないことから、近年では日本においても女性の社会進出を促す施策が取られてきました。その原因とも言えるのが、女性が家事や育児に携わる時間の多さです。とくに出産をきっかけに能力のある女性が仕事を離れざる負えなかったり、管理職になれない状況がありました。男性が育児に参加することで、女性の育児負担も軽減され、生産性のある働き方や今までなかった価値観の経済発展が期待できます。
経済的な理由以外に、2人目や3人目を諦める要因とも言われているのが「男性の育児参加の低さ」です。少子高齢化の進んだ地域では母親学級のみで、父親や両親学級は開催できないケースも多く、少子化と男性の育児は切ってもきれない関係。少子高齢化対策のためにも、父親を子育てのスタートである出産から巻き込み、継続的に子育てに参加する体勢を整えることが大切になってきます。生まれた時から「育児に参加することを当たり前」である社会体勢が今後の少子高齢化の肝になってくるでしょう。
男性の育児休暇については約7割の人が知っているものの、実際に育休を取得したことがある人は少なく、パタハラ問題についてもまだまだ認知度が低い現状です。そもそも、男性の取得率が低いため、女性に比べハラスメントを受ける頻度が低いことも挙げられるでしょう。ただし、現状の仕事スタイルのままでは育児休暇を取れない男性も多く、取得するためには職種を変えなければいけないと考える人もいます。出産という物理的に仕事に来れない女性とは違い、男性が希望して取得する育児休暇が取りにくい環境であることは間違いありません。
パタハラが起こる要因のひとつとして、昔から日本では「育児は女性が行うもの」という根強い意識が根底にあることが挙げられるでしょう。実際に厚生労働省の概要報告(平成30年度)によると、配偶者が出産した男性の育休取得率は約6%。女性の約82%の育児休業取得と比べると、まだまだ大きな差があるのが現状です。また、男性の育児休暇取得日数は、5日未満が36%ともっとも多く、取得はしているものの出産の立ち合いだけというケースもみられます。
実は働く男性の6割以上が育休取得を望んでいるものの、さまざまな要因から取得できないずにいる男性も多くいます。その大半が、企業や上司の理解を得られない、キャリアや復職後の不安などの職場環境に対するものです。「男性が育児休暇を取得できる雰囲気がない」という環境も多く、まだまだ男性が育児休暇を取れる雰囲気でない職場が多いといえるでしょう。職場環境の改善のためには、これまで育児に携わってこなかった男性や独身男性の意識改革も必要です。
人事部に務めていた男性が育児休暇を取得した際に受けた対応が不当として、慰謝料の支払いや懲戒処分の無効化などを求めている裁判。この男性は、第一子が生まれた際に約1年間の育児休暇を取得したものの、復職後には肉体労働の部署に異動させられたことは不当とし、弁護士を通じて会社と交渉。再び人事部に配置転換がてきたものの、第二子出産の際に育児休暇を取得するも、復帰後に専門外の英訳などの仕事を命じられました。こうした一連の経緯を不当な扱いと主張し、パタハラがあったと訴えています。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券に務める外国籍の男性が、育児休暇の取得をきっかけにパタハラを受けたとして損害賠償などを求めた事案です。男性社員は、復職後は会議に呼ばれない、大事な案件から外されるなど、精神的なパタハラでうつ病を発症し、療養後も正当な理由なく休職命令を受けたと訴えました。しかし、判決では不利益な扱いは認められず、損害賠償請求や賃金請求は認められないとした判決。日本におけるパタハラ訴訟として、国内外のメディアで大きく報じられ、注目を集めました。
多くの男性が育児休暇を取りたいと思っているのに取得できない理由に「上司や同僚の理解を得られない」と答えている社員が多くいます。これは代替要員がいないなど、人手不足の部分以外にも今まで取得してこなかった男性社員の根本的な意識の問題も大きいのではないでしょうか。育児休暇を取ることで迷惑を被ると被害者意識を持つことから、取得する男性社員を排除、妨害することにも繋がり、結果としてパタハラが起こってしまうのです。
中小企業などでは、そもそも育児休暇制度がしっかり構築されていないケースなどバックアップ不足もまだまだ多くみられます。男性の育児休暇は、同じ事業主での雇用期間が過去1年以上ある、出産予定日から取得可能など、企業の大小に関わらず取得できるもの。育児休暇を取得できるタイミングが日数、休業申請があった場合のチーム内の人事大勢の完備など就業規則や社内規定によって明記すべきでしょう。育児休業制度が整っていないという理由で認めないのは雇用側の横暴であり、ルール違反として扱われ裁判になる可能性もあるので注意が必要です。
パタハラは、セクハラやモラハラと同じく「違法な行為である」と企業内で共通認識を持つことが大切です。育児休暇を申請・取得することは、雇用者の権利でもあり、もしもパタハラが企業内で起こった場合は迅速かつ、適切な対応が求められます。また、パタハラの事前防止に向けた対策や制度を整えることも必要になってくるでしょう。パタハラが起きないためにも、まずはパタハラがもたらす企業内外のダメージなどを社内で浸透させることが第一歩です。
例え企業側が男性社員の子育て参加を推進し、育休取得を認めていても、上司や同僚などの他の社員が育児休暇を取得する男性に嫌がらせを行う可能性は十分あります。防止対策として、パタハラ被害を受けた男性社員が気軽に相談できる社内の相談窓口を設置しましょう。相談を受けたらすぐに調査を開始し、実際にパタハラが行われている事実はあれば適切に対処することが大切です。パタハラ被害を受けた男性社員への対応を適切に行うことでトラブルが大きくなることを避けることにもつながります。
パタハラが起こってしまった場合、まずはパタハラ被害の状況について事実確認をする必要があります。本当にパタハラが行われたといえるのか、どのような内容のパタハラが行われたのかなど、加害者と被害者の双方向からヒアリングをしましょう。また、当事者以外の周りにいた社員からのヒアリングも正確な情報収集のためには大切です。企業のパタハラがマスコミに取り上げられ報道されるようなことになれば、企業の評判が低下し株価に影響するなど、企業が受けるダメージは大きなものになります。
パタハラの加害者を確認できたら、加害者に対する措置も考えましょう。まずは加害者に直接注意をし、それでもパタハラ行為が続くような場合には、加害者の配置転換などの処分も検討すべきです。ただし、減給や昇格など処罰があまりに重いと裁判で争われるケースもあるので注意が必要です。パタハラは違法行為であり、企業内で起こることは「恥ずかしい行為である」と加害者はもちろん、他の社員にもしっかりと伝えて改善を促すようにしましょう。
社内でパタハラが発生してしまったら、同じような行為が起こらないよう再発防止に向けた措置を講じる必要があります。まずは、トラブルが発生した理由を調査・分析し、その原因を取り除きましょう。人材不足などが原因であれば、人事部や経営者との会議を設定し、人材確保に向けた施策を投じるべきです。上司や同僚社員の嫌がらせなど、空気感や根底意識の問題が大きいのであれば、社内研修などを通して理解を深めるようにしましょう。
日本企業でパタハラが発生しやすいのは、まだまだ社会で男性が育児に参加する意識が少ないからです。そんな現状の改善策として、厚生労働省は男性の子育て参加や育児休暇の取得促進などを目的とした「イクメンプロジェクト」をスタートさせました。働く男性が育児により積極的に参加し、育児休暇を取得しやすい環境を整えることを目的としたプロジェクトです。小泉大臣など積極的な育児休暇の取得事例を紹介し「男性が育児休業を取得するは当たり前である」と社会全体の空気を変えていこうとしています。
政府が行っている政策以外にも、男性の育児参加を浸透させるために働きかけている民間団体やNPO法人があります。そのひとつが、NPO法人ファザーリング・ジャパンが実施している「父親であることを楽しもう」という思いを大切にしたプロジェクトです。「よい父親」ではなく、「笑っている父親」を増やすことで、家庭や地域が変わり、しいては企業や社会が変わることに繋がっていくと。日本社会に大きな変革をもたらすということを信じ、さまざまな事業を展開しています。
子供が生まれるということは、家族や社会にとっても素晴らしいことですよね。それにも関わらず、子育てをするためにキャリアや上司の顔色を伺わないといけないのは、社会として矛盾をはらんでいます。そんな現状を改善すべく、政府も企業でも男性の育児休暇率の上昇に向けてさまざまな取り組みを行っています。かたちばかりの制度ではなく、男性が積極的に育児参加するという意識を根付かせ、パタハラのない皆が働きやすい社会へとしていきましょう。
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