国際分業とは【メリットやデメリットについてわかりやすく解説します】

記事更新日:2023年07月04日 初回公開日:2021年10月04日

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近代の産業において経済のグローバル化が進み、私たちは「国際分業」で互いの国の産業を支え合っています。国際分業とは、貿易を前提として互いの国で得意な物を生産し、輸出入し合う関係のことです。日本においては、足りない材料は他国の輸入に頼りながら、日本が得意な工業技術を駆使した製品を輸出するという形で国際分業を行ってきました。繊維・縫製分野では人件費の安いカンボジアやベトナムに生産を委託し、輸入をするという形をとっています。これにより、低コストでの生産と、互いの国の発展と成長を図るWIN‐WINの関係を築いています。

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国際分業とは

各国が得意とする商品を生産して輸出し合うこと

国際分業とは、各国が得意とする物を生産して輸出入し合う経済連携のことを言います。国によって社会的・自然的条件が違うため、同じ物を生産する場合にコストや生産効率に差が生じます。例えば、一年を通して温暖な地域でしか育たない農産物を日本で生産しようとする場合、四季による寒暖差のあるため生産効率や生産量が落ちてしまいます。また、温暖な気候を1年にわたって維持し続ける設備にもコストがかかるでしょう。それぞれの国で低コストで生産できる物を多く生産して輸出入した方が、生産性やコストを削減できるのです。

グローバル化に伴い国際分業が発展している

世界経済のグローバル化に伴い、新事業展開や新しい市場の開拓、コスト削減を求め様々な企業が海外に進出しています。一つの工業製品を生産するにあたり、部品や原材料ごとに得意な国に拠点を設ける形で国際分業が発展しています。先進国が発展途上国に拠点を増やすことにより、現地の雇用機会を増やし、生産をより多く効率的に行うことができるのです。私たちが普段利用している様々な工業製品は、複数の国との分業関係があって生産されているといえるでしょう。

国際分業の種類

垂直的国際分業

国際分業には、2つの種類があります。1つは「垂直的国際分業」です。これは、先進国と途上国間での経済連携のことです。垂直的国際分業は途上国で製品の原材料を生産・輸出し、先進国で輸入した原材料から工業製品をつくり、国外に輸出するという仕組みです。垂直的国際分業では、付加価値の高い工業製品を製造できる先進国が多くの利益を得やすくなる特徴があります。Apple社やIBM社などは、この垂直分業によって、他国に一部の生産を委託しながら自社製品の生産を行っています。

水平的国際分業

2種類の国際分業におけるもうひとつは「水平的国際分業」です。これは、垂直的国際分業とは対を成すもので、先進国同士の経済連携を指します。先進国同士で工業製品を相互に輸出入し合う貿易関係です。一つの製品における需要が多様化したことにより、デザイン性や機能が違う工業製品を中心に貿易が行われています。水平的国際分業では互いに付加価値のある製品を貿易し合うため、利益についても大きな差は生まれず水平的となります。

国際分業の歴史

第二次世界大戦以前:植民地での垂直的分業体制

第二次世界大戦前は、先進国が植民地を指揮するという垂直的国際分業が行われました。世界的大恐慌に直面したアメリカが経済回復を試み、ブロック経済を形成したのです。植民地を持つ先進国は自国の配下にある植民地を指揮して垂直的分業体制で生産を行い、ブロック内での貿易を盛んに行うことで経済回復を試みました。しかし先進国同士の貿易を排除するという点からブロック間での経済摩擦は強まり、第二次世界大戦に発展する原因となったのです。

第二次世界大戦以後:自由貿易が実現し水平的分業体制へ

第二次世界大戦後期から、世界経済は徐々に回復していきます。戦争が終結するとブロック経済は撤廃され、自由貿易における体制が整備されました。これにより、先進国同士での貿易と水平的分業も可能となったのです。先進国同士の水平分業と自由貿易の影響でさらに技術力が発展し、世界経済は大恐慌から立ち直りました。水平的国際分業により、先進国の工業生産の技術がさらに進歩していき、それが現代のグローバル化につながっているのです。

国際分業のメリット

人件費や生産コストを抑えられる

国際分業のメリットとして、コスト削減が挙げられます。一番安く、有利なところに生産を委託することで、国内生産よりもコストを抑えることができます。労務費・生産コストの安いカンボジアやベトナムなどのアジア諸国で生産を行うことで、低コストが実現するのです。日本企業では海外に拠点を設ける企業も多く存在しており、2017年時点での日本企業の海外拠点数はおよそ75,000にものぼります。日本だけではなく、アメリカなどの先進国もアジア諸国に進出しており、国同士で協力しながら生産を行っています。

途上国の経済発展に貢献できる

国際分業は、低コスト生産だけではなく、生産委託した途上国の経済発展にも貢献できるというメリットがあります。 日本のグローバルメーカー企業では、生産業務を委託するだけでなく、委託した国に工場を建て、途上国の雇用と産業の発展を支えています。途上国における潤沢な労働力は、日本の産業において大量生産を可能にし、生産性向上とともに低コストも実現しているのです。高い技術力を有した日本メーカーが進出することで途上国の経済発展を促進することで、双方にとって大きなメリットが生まれます。

国際分業のデメリット

政治的問題や輸送に伴うリスクがある

国際分業は、国境を超えて他国に生産を依頼することになるので、いくつかの障害が存在します。たとえば、通貨等の違いや、委託先の国の政治的あるいは自然環境的事情で物流が止まることがあります。国内で一貫して生産を行う場合とは違い、こうしたリスクが発生することも忘れてはならないポイントです。物流が止まってしまう場合には、日本側で生産する物の納期が遅れることにもつながります。委託先の国でのアクシデントやその大小については予測不可能なこともあるため、海外進出において理解しておかなければならないポイントです。

全体をマネジメントするのが難しい

政治的問題などによって物流がストップすることは、日本企業側では予測ができません。そのため、生産スケジュールの全体をマネジメントするのが難しくなります。たとえば、大規模テロや自然災害、コロナウイルスによる都市閉鎖などがあった場合、長期的に生産がストップする場合も考えなければなりません。生産がストップした拠点の業務を他拠点に依頼するなど、カバーをするための策を講じなければならないなど、その都度臨機応変に対応する必要があります。

国際分業をする際の注意点

相手国の法律や文化を考慮する必要がある

国際分業において海外進出を考える企業は、委託する国の文化や法律を考慮する必要があります。国境を越えたコミュニケーションをとるには、各拠点に英語、日本語、あるいは現地の言葉が分かる責任者を配置しなければなりません。また、その国での労働や生活における習慣も考慮した生産スケジュールを立て、指導を行う必要があります。例えば国外に生産拠点を設ける際は、その国の法律に従った労働条件や賃金設定が必要です。生産拠点を設けようとしている国の地域性についての下調べを入念に行うこと、責任者の指導と労働者の教育を適正に行うことが重要です。

先進国と発展途上国の格差が拡大しないよう対策する

貿易のグローバル化が進む一方で、先進国と発展途上国には格差が生じています。付加価値の高い工業製品を生産・輸出できる先進国は多額の利益を得られますが、原材料を輸出するだけの発展途上国では、先進国ほどの利益を得られません。さらに技術面においては、教育水準の高さと潤沢な利益により高いスキルを持った労働者を輩出できる先進国と、教育機会に乏しく利益の少ない途上国の間に格差が生じています。先進国が途上国に対して技術発展の支援を行わなければ、格差を縮小していくことは難しいでしょう。

日本の国際分業における課題

日本の強みである電気機器や自動車の輸出が低迷しつつある

日本は、世界第4位の貿易大国です。中でも電気機器や自動車は日本の強みですが、国外への輸出は低迷しています。その背景として、世界の経済成長率鈍化、世界の輸入依存度の低下、日本の輸出シェアの低下が挙げられます。IT革命で急発展した経済も、リーマンショック以降、成長率は低下しています。世界経済の成長が鈍化したことから、投資主体の企業は投資判断に慎重になり、世界的な投資の停滞が輸入依存度を低下させる原因となりました。また、中国の技術力が発展したことで、中国の輸入依存度が顕著に低下しました。中国の輸出競争力が急激に成長したことで、日本のシェアが競り負けてしまっているのが現状です。

国際競争力を持つ新事業を創出する必要がある

日本のシェアを回復していくには、国際競争力を持つ新事業や、製品を作り出すことが必要です。今後、世界の輸入依存度が低いままであれば、輸出は低迷する一方となってしまうでしょう。また、輸出拡大のためには中国を超える必要があり、そのハードルは決して低くありません。人口減少の傾向にある日本では、輸出拡大をすることが経済を回復させるための必須要素となります。中国を競争相手としてとらえ、新たに日本のブランド力を強化・維持し続けられる方法を真剣に考えるべき時が来ているのです。

国際分業における貿易理論

リカード・モデル:生産技術の差が2国間の比較優位を決めるという理論

国際分業における貿易理論をご紹介します。一つはリカード・モデルです。これは、生産技術の差が2国間の比較優位を決めるという理論です。比較優位とは、「自国にとっては一番得意な物」を表し、異なる2つ以上の物の生産において、他国より得意な物の生産を行う方が効率的に生産と貿易ができるという考え方です。これに対し、「生産に必要な労働量が他国に比べて少なくかつ多く生産できる」ことを「絶対優位」と言います。リカード・モデルでは、比較優位を提唱しており、双方の貿易と生産性を高め合う貿易モデルとなっています。

ヘクシャー・オリーン・モデル:生産要素の差が貿易の比較優位を決めるという理論

もう一つ、ヘクシャー・オリーン・モデルをご紹介します。これは、生産要素の差(賦存要素)が貿易の比較優位を決めるという理論です。リカード・モデルでは一つの物の貿易に特化し、生産要素は労働量のみを考えていました。これに対しヘクシャー・オリーン・モデルでは労働量のみではなく、資本や賦存要素(風土・気候・天然資源・技術による生産量の差)を考えた理論となります。貿易する物は1つではなく、2つの物を自国で生産するという不完全特化型の貿易理論です。

グローバル企業の国際分業事例

アップル

有名企業のグローバル化におけるモデルとして、Appleの例をご紹介します。Appleでは、ハードウェアは垂直的国際化を軸に、一部のソフトウェア開発は水平的国際化という形で二つの分業を掛け合わせたビジネスモデルを採用しています。ハードウェアのデザインや機能設計は本社で行い、日本や台湾などで製造した部品を中国で組み立て、世界に販売しています。ソフトウェアに関しては、様々な企業に開発を委託しており、一部水平的分業を行っています。このようなAppleのビジネスモデルに注目が集まり、創設者のスティーブ・ジョブズが世界的に認知度を広めていくにきっかけになったのです。

トヨタ自動車

水平化国際化のモデルとして、トヨタ自動車の例が挙げられます。日本で生産している製品と同じものを海外でも生産するという形の分業を行っています。日本、フランス、中国などで生産した製品は、生産工場のあるヨーロッパやアメリカ大陸、アジア地域で販売する、地産地消のイメージを持っています。日本企業の多くは、主にアメリカとの経済的摩擦を回避しようと国内生産を増やしていましたが、アメリカでも同時に生産を行うことになるので水平的な国際化と言えるでしょう。

まとめ

国際分業を進めて国際競争力を高めましょう

第二次世界大戦以降、世界経済は貿易の自由化により目覚ましい発展を遂げました。国際分業により経済がグローバル化する一方で、日本の国際競争力は他の先進国に追い抜かれつつあります。得意分野である自動車や電機製品ですら、国外輸出量は低迷しています。国際競争力を高める新事業の確立と、新事業成功のために国際分業によって他国と協力し合うことが、日本の経済成長にとって最大の鍵となるでしょう。私たちの生きる現代において、国際分業は世界経済を発展させるために重要な役割を担っているのです。

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