整理解雇とは?【要件や手順についても解説します】

記事更新日:2024年01月31日 初回公開日:2024年01月12日

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少子高齢化や労働人口の減少によって、今いる従業員を大切にしようという企業が増えてきています。しかしコロナウイルス流行や緊急事態宣言による活動自粛などの影響により、飲食業界や旅行業界など経営状況が悪化した企業が増加しました。経営状況の悪化により部署の縮小や人員削減が必要となり、整理解雇を行った企業も少なくありません。厚生労働省の調べによると、コロナウイルスが流行した2020年に雇止めにあった人は5万人とされており、整理解雇も含まれています。今回は整理解雇について解説します。整理解雇を考えている経営者の方は、参考にしてみてください。

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整理解雇とは

人員整理のために行う解雇

整理雇用とは、人員整理のために行う解雇の事です。そもそも解雇は会社側が労働者と締結している契約を、一方的に終了させることを指します。整理解雇は会社の経営上必要とされる人員削減のための解雇を指しており、普通解雇の一つです。会社が経営していく事が難しくなった場合に対策として人件費削減のために行われるものであるため、整理解雇の対象となった人物に非があるわけではありません。コロナウイルス流行により経営状況が悪化し、整理解雇を行った企業も少なくありません。

整理解雇の要件

人員削減の必要性がある

整理解雇の要件は、人員削減の必要性が求められます。整理解雇を行うには、会社側が経営が苦しくこのままでは会社の存続が危ないという事実を誰が見ても明らかな状態にしておかなければなりません。十分に検討した上でどの程度経営が悪化しており、どのくらいの規模で人員削減を行う必要があるのかを従業員に具体的に説明できる必要があるとされています。また会社全体の経営悪化だけでなく、事業の一部が赤字の場合でも整理解雇の必要性が認められれば解雇を行う事が可能です。

解雇される人の選定に合理性がある

整理解雇は、解雇される人の選定に合理性があることが要件になっています。整理解雇の対象者を決定する際には、合理的な判断を元に人選することが大切です。選定者に一任され、主体的な判断を行うのではなく公平性を元に行われなければなりません。一般的な基準として挙げられるのが勤続年数や年齢・扶養家族の有無などです。企業に対して批判的な従業員を選びたくなるかもしれませんが、それだけでは公平性に欠けてしまうため基準としては認められません。

解雇を回避する努力を尽くしている

整理解雇の要件として、解雇を回避する努力を尽くしている必要があります。整理解雇はあくまでも倒産を回避するための最終手段です。経営が悪化したからと言ってすぐ整理解雇を行えるわけではありません。整理解雇を行う前に、企業は役員報酬などの経費削減や新規雇用停止・時間外労働の禁止や一時帰休の募集など様々な対策を行う必要があります。但し企業の経営状況や従業員数などによって判断されることが多いため、必ずしも行わなければいけない物ではありません。

差別的な扱いをしていない

差別的な扱いをしていないことも、整理解雇の要件になります。整理解雇には公平性や客観性が求められます。そのため、整理解雇の判断を行う際に女性従業員だけを対象とする・男性従業員の年齢を女性よりも高く設定するといった差別基準を設けてはいけません。もしこういった基準のもとで整理解雇を行った場合には、無効と判断されます。また男女で差別的な扱いを行う事により、男女雇用機会均等法に違反してしまう可能性もあるため注意が必要です。

整理解雇に関する裁判例

新井鉄工所事件

整理解雇に関する裁判例に、新井鉄工所事件があります。新井鉄工所事件は唯一の事業の廃止に伴う整理解雇が有効とされた事案です。本件はY社に雇用されていたX達が、Y社の主要な事業である油井管製造事業の廃止に伴い解雇されたことが無効であると解雇後の賃金+遅延損害金を求めました。この訴えに対して、東京地裁は解雇回避努力義務をしっかりと行っており、公正な判断の元対象者を選定し労働団体ともしっかりと話し合いを行っていることから解雇妥当と判断されました。

泉州学園事件

泉州学園事件も、整理解雇に関しての裁判例です。この事例は2008年3月末に学校法人泉州学園が経営する飛翔館高校で7名が整理解雇され、その内5名が解雇無効を訴えたものです。第一審では敗訴となっていましたが、控訴を行い大阪呼応際によって原告5名全員の雇用契約上の地位を確認し、バックペイを全額認める逆転勝訴となっています。整理解雇を行ったにも関わらず多くの非常勤講師を雇用した点や、解雇回避努力が妥当とは言えない点によって整理解雇無効と判断されています。

整理解雇の手順

非正規雇用者の削減と希望退職者の募集を行なう

整理解雇の手順は、最初に非正規雇用者の削減と希望退職者の募集を行います。整理解雇は経営を続けるための最終手段です。そのためまずは解雇以外で行える方法を実施します。その中でも従業員の中から希望退職者を募ることは実務上で重要なプロセスです。希望退職者とは、従業員の意思で退職を希望する人を募ります。多くの場合は希望退職者には退職金を上乗せするなど優遇措置を取ることが多くあります。自分の意思で退職してもらう事から、整理解雇よりも穏当な手段です。

社内で整理解雇の方針を決める

募集を行った後に、社内で整理解雇の方針決めを行います。希望退職者の募集や非正規雇用者の削減などを行っても、人員削減をしなければならない状況であればその必要性を裏付けるための資料の準備や方針を決定しなければなりません。整理解雇を行うためには、従業員や組合と度重なる話し合いを実施する必要があります。経営状況を客観的に判断できる資料や、後に整理解雇の有効性を問われた際に整理解雇の必要性を示すために重要な物です。

従業員や組合と協議する

整理解雇を行う際は従業員や組合としっかり協議する必要があります。解雇対象となる人数や範囲・退職金などについて決まった場合には、実行に移す前に従業員と入念に話し合いを実施します。経営状況に関する資料や解雇基準を準備していることで、従業員からの理解を得られやすくなります。整理解雇を行う手順は一つ一つが次の手順を円滑に行うための重要な準備です。整理解雇を円滑に行うためには、どの手順も手抜かりなく行っていく事が大切です。

整理解雇を実行する

整理解雇対象者の選定が完了したら、整理解雇を実行します。様々な対策を取ったとしても、経営状況が改善されず人員削減が必要だと判断した場合には、設定した基準を元に対象者を選定し解雇通告を行います。但し整理解雇であったとしても、即日解雇出来る訳ではなく解雇を告げてから実際の解雇日までに30日以上の期間を開けなければなりません。解雇日を事前に決めている場合は、逆算して30日以上前に対象者に通告する必要があります。30日分以上の解雇予告手当を支払うのであれば、即日解雇も可能です。

解雇後の手続きを行なう

解雇後の手続きを行うのも、整理解雇の重要な手順です。解雇辞令を渡した従業員に対して、退職手続きを行っていきます。退職手続きは、整理解雇だからと言って特別な手続きが必要な訳ではありません。ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届の提出を行い、従業員に離職票を渡します。社会保険事務所に厚生年金、健康保険被保険者資格喪失届を提出した後に、本人に年金手帳を返却して完了です。従来の退職手続きと変わりませんが、従業員に非が無い解雇なのでスムーズに行うようにしましょう。

整理解雇の際に気をつけるべきポイント

退職金

整理解雇の際に気を付けるべきポイントは、退職金です。整理解雇は企業側の都合により従業員の解雇を行うため、退職金を支払う必要があります。希望退職者を募る場合と異なり、この時に退職金に関して優遇する必要はありません。しかし整理解雇に関しては従業員側に非が発生しない物になるため、可能な限り優遇するようにしましょう。一定金額を加算した上で支払いを行う・年齢や勤続年数に応じて加算するなど事前に内容を明確にしておくことで、直前に慌てる必要もありません。

年次有給休暇

整理解雇の際は、年次有給休暇の取り扱いに気を付けましょう。解雇対象になる従業員が保有している有給休暇は、解雇された時点で全て無効となります。有給休暇を取得してもらうためには、解雇通知を30日以上前に実施しましょう。事前に通達しておくことで、従業員も残っている有給休暇を消化することが出来ます。但し、本人が有給休暇の消化を望まない場合は無理に消化してもらう必要はありません。但しその場合は、解雇された後は無効となる旨をしっかりと説明しておきましょう。

パートアルバイトの処遇

整理解雇は、パートアルバイトの処遇も注意が必要です。企業としてまず人件費削減を行う場合は、非正規雇用であるパートやアルバイトを対象にする場合も多いのではないでしょうか。正規雇用と比べると気軽に解雇できると思われがちなアルバイトやパートですが、パートやアルバイトであっても合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない解雇は無効とされています。パートやアルバイトに対しても企業側の都合で解雇する場合には、正社員と同様の手続きが必要なことを覚えておきましょう。

解雇予告手当

解雇予告手当についても、整理解雇の際は気を付けておきましょう。解雇通知を解雇を実施する30日以上前に行わなかった場合は、企業側に解雇予告手当を支払う義務が発生します。予告日数と手当は日割りで支払う事が可能です。そのため、解雇予告を解雇日の15日前に行った場合は、15日分の平均賃金で計算した手当を支払わなければなりません。平均賃金とは、過去3か月の間に支給した総賃金を総日数で割ったものです。総賃金には残業代や交通費などが含まれるので、注意しましょう。

トラブル防止のために書面を残しておく

整理解雇を行った後にトラブルにならないためにも、書面に残しておくことも重要です。解雇通告は口頭で済ませることも出来ます。しかし口頭では水掛け論になってしまい、後々トラブルに発生しないとも言い切れません。トラブルを避けるためにも、解雇予告通知書や解雇理由証明書などの書面を取り交わすようにしておきましょう。口頭だけではしっかりと内容が伝わらないことも考えられるため、書面に残すことで理解を進めることが出来ます。整理解雇に関する就業規則の条項など必要な情報を記載しましょう。

まとめ

整理解雇の要件や注意点をよく確認して人員整理に活用しよう

整理解雇の要件や手順・実際に行う場合に注意するポイントなどについて解説しました。整理解雇は企業が存続するための最終手段です。どういった状況でも行えるという訳ではなく、「解雇が正当と認められるための要件」や「整理解雇が適用となる4要件」をきちんと満たしている必要があります。企業としてやむを得ない状況ですが、整理解雇される従業員は落ち度がないにもかかわらず職を失う事になるため、十分な説明が必要です。整理解雇の要件や注意点をよく確認して、人員整理に活用しましょう。

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