コンティンジェンシー理論とは【企業における活用やメリットについて解説します】

記事更新日:2023年03月17日 初回公開日:2023年03月16日

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目まぐるしく変化する時代において、リーダーの役割は非常に重要なものとなっています。リーダーの選び方については諸説あります。リーダーには生まれもっての資質があるとして名立たるリーダーを研究した人もいましたが、これという共通点は見つけられませんでした。時代は流れ、現代のリーダー像を語る上で「コンティンジェンシー理論」は欠かせないものとなっています。ここでは、変化する企業を救うためのリーダーシップである「コンティンジェンシー理論」について詳しく説明致します。人事担当者の方々も苦慮される、今後のリーダー選びや教育の参考にしていただければ幸いです。

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コンティンジェンシー理論とは

どの状況でも対応できるリーダーは存在しないという理論

コンティンジェンシー理論とは、「どんな状況にも対応できる万能なリーダーは存在しない」という考え方に基づくものです。企業などの組織が良い成績をあげるためには、変化する状況や環境にも柔軟に対応するリーダーシップが必要だとする理論です。コンティンジェンシー理論は1940年代に発表されたもので、一時は既に古いリーダーシップ理論だとされましたが、刻々と変化する世界情勢の中で再注目されています。コンティンジェンシー理論をベースにした、新しいかたちのコンティンジェンシー理論が次々と発表されています。

コンティンジェンシー理論が誕生した背景

リーダーシップ資質論とリーダーシップ行動論

コンティンジェンシー理論が誕生した背景には、リーダーシップ資質論とリーダーシップ行動論という2つの理論が隠れています。リーダーたるものは英知を持つ者に限られ、「リーダーとは作られるものではなく、生まれながら持つ資質である」という考え方がリーダーシップ資質論です。それまで主流であったリーダーシップ資質論にとって変わったのがリーダーシップ行動論で、「リーダーとは行動によって作られるものである」という考え方です。両者はリーダーとは先天的な才能を持つものと後天的に育てるものという大きな違いがあります。

多様化の時代になった

コンティンジェンシー理論が生まれることに大きな影響を与えたのが、多様化していく社会環境です。リーダーシップ資質論やリーダーシップ行動論を裏付けようとしましたが、根拠となるリーダーの共通点は見つからず、対応できない部分が多く見つかります。1960年代に入ると、顧客ニーズの多様化が大きく影響するとともに技術開発の速度も急速に上がることで、更に変化が大きい時代に突入します。そこで、多様化の時代に合わせてリーダーシップの考え方も変化に対応できるものを模索し、遂にコンティンジェンシー理論にたどり着くのです。

コンティンジェンシー理論を理解する上で必要な概念

機械的組織と有機的組織

コンティンジェンシー理論をよく理解するためには、機械的組織と有機的組織という2つの概念を理解しておくことが重要です。双方は相対立する組織構造ですが、どちらか一方が優れているというものではありません。機械的組織はピラミッド型の階層がはっきりと見えるような組織構造で、トップダウン型の命令的なリーダーシップになります。対する有機組織ではヒエラルキーとも呼ばれる階層意識は薄く、権限や情報が組織の中に分散されます。有機的組織は機械的組織とは対極にあるもので、支援的なリーダーシップが重要になります。

条件適合理論

状況によって求められる組織構造も変化し、リーダーとしての在り方も変えるべきだと説いたのが「条件適合理論」になります。外部の環境変化が緩やかで大量生産が求められる企業などでは機械的組織が有効であり、技術開発などのアイデアを求められる職種では有機的組織が有利であると言えます。そこで考えられたのが、リーダーの定義は組織環境によって変わるという考え方です。行動理論に「職場の人間関係」と「業務の難易度」という2つの要素を加えて、状況に応じてリーダーシップを変える必要があると説いたのが条件適合理論です。

コンティンジェンシーモデル

リーダーシップの在り方は組織としての課題や置かれた状況によって変化することから「コンティンジェンシーモデル」という新しいリーダーシップの考え方が発表されました。社会心理学者であったフィドラーは、3つの要素からリーダーシップの有効性を推し量ることを提唱します。「リーダーが組織の他のメンバーに受け入れられる度合い」「仕事・課題の明確さ」「リーダーが部下をコントロールする権限の強さ」の3つです。コンティンジェンシーモデルは、これらの状況変数が高いほどリーダーシップは発揮されやすいという理論であり、条件適合理論の1つとも解釈できます。

コンティンジェンシー理論のメリット

様々な状況で柔軟に対応できる

コンティンジェンシー理論は、様々な状況に柔軟に対応できるという大きなメリットを持ちます。変化に対応できないリーダーが管理する組織では、周囲が状況の変化を敏感に感じとったとしても柔軟に対応することは難しいでしょう。企業は変化し続ける環境の中で生き残っていくためにコンティンジェンシー理論を効果的に活用するべきですが、軽率な判断は大きな損失に繋がります。状況を客観的に見て冷静かつ適切に判断し、素早く行動に移すように後方支援することがリーダーに求められています。

適切に組織を変革できる

コンティンジェンシー理論は内部環境であるコンテクストを重視することから、組織改革を前提にした理論といえます。コンティンジェンシー理論ではリーダーシップの在り方を提唱するとともに、組織がどのようにリーダーを守り立てていくかということまで示唆しています。組織が状況や環境に応じて適切に変革できたとすれば、リーダーだけでなく小さな組織から派生して大きな組織まで活性化したものになるはずです。コンテクストを能動的に捉えることで、新しい時代に合ったコンティンジェンシー理論を展開していきましょう。

フラットな組織を形成できる

コンティンジェンシー理論ではピラミッド型の階層組織ではないため、上下関係などを気にせずに自由に議論を交わせるメリットがあります。このようなフラットな組織を形成することで、他の人が気付かないことを伝え合って相互に補助することが可能になります。上下関係に依存しない組織であってもお互いをリスペクトすることを忘れなければ、コンティジェンシー理論で重要とされる人間関係も良好に保つことができます。リーダーはフラットな組織の中で自由に発せられた意見を上手くまとめていくことが重要です。

変化に対応できるリーダーが育成可能である

コンティンジェンシー理論のメリットの一つが、変化に対応できるリーダーの育成です。変化することを恐れずに常に変化に対応してリーダー自身も変わることも意識していれば、周囲の状況や環境の変化に気付きやすくなります。また、状況が変わったときの対応も既に仮定として考えているため、慌てずに適切な判断をくだせます。周囲もコンティンジェンシー理論を理解していれば、さらにリーダーは動きやすくなり、変化を敏感に感じ取れる有能なリーダーを育成できるでしょう。

コンティンジェンシー理論のデメリット

組織が混乱する恐れがある

コンティンジェンシー理論によってリーダーを選ぶことは、組織が混乱しかねないという危険をはらんでいます。コンティンジェンシー理論の大きな目的は、環境に合わせて柔軟に対応することです。しかし、リーダーシップの在り方は理解できるものの、実現するのが難しいということも多くあります。企業を取り巻く状況がどのように変化していくかは不透明であり、企業側では予測のもとに行動をおこすからです。リーダーは多様な人材を積極的に起用していることを受け止め、組織が混乱しないように十分に注意しなければいけません。

方向性を間違えるリスクがある

コンティンジェンシー理論には、組織が間違った方向に走るリスクがあります。有機的な組織を尊重するコンティンジェンシー理論では、上下関係にあった部署や人員がフラットな関係になるため、コントロールが難しくなってしまうのです。そして間違っていると気付いても、グループダイナミクスのような悪い集団心理が発展すれば、方向性を間違えたまま走り続けてしまう大きなリスクを抱えています。リーダーには変化に素早く対応するとともに、状況を冷静に判断して方向性を間違えないようにする大きな責任があります。

専門性が高めづらい

コンティンジェンシー理論では変化に追随することが重視されるため、ゼネラリストとしての力は付くものの、専門性に欠けるというデメリットがあります。広く浅い能力は備わるものの、専門性の高い仕事には向いていないと言えるでしょう。大量生産などの独自性が少ない商品開発や製造などでは、コンティンジェンシー理論の本領が発揮できないことも多くあります。専門性の高い部署ではピラミッド型組織にすることなども、コンティンジェンシー理論で重要な状況に合わせた変化と言えるでしょう。

コンティンジェンシー理論を活用する方法

多様な人材を採用しておく

コンティンジェンシー理論を上手く活用するには、多様な人材を揃えておくことが有効といえます。同じような意識や感覚を持つ組織では、リーダーがいくら頑張っても方向転換は簡単ではなく、変化に対し柔軟な対応することは困難を極めるでしょう。組織の年齢構成なども偏ったものではなく、平均的にばらけている方が多様な意見と見解を得ることができます。多様な人材を起用するという観点では、日本という国だけに縛られず他国からの人材登用も視野に入れるべきです。グローバルな人材採用も一考してみましょう。

グローバル化に対応していく

日本古来の職種であっても労働人材不足が深刻化する現代において、企業のグローバル化は避けられない課題です。言葉や文化の違いはあるものの、従来の日本の考え方では企業の存続は危ういというのが一般論になっています。文化や言語の違いを克服することで、日本だけを市場にしていた企業は販路を広げるチャンスにもなるでしょう。また、異なる考え方や経験をしてきた人々と交流することで、グローバル化に対応するだけでなく人間関係の本質や多様化も理解できれば、大きな財産になることは間違いありません。

人事制度や評価制度を見直す

コンティンジェンシー理論を実際に行動へと移すためには、人事の制度や評価の仕方を見直す必要があります。年功序列型の雇用制度は衰退の一途をたどり、いまや実力主義の時代となっています。しかし、日本古来の女性軽視や外国人雇用の壁はまだ厚く、人事制度を大きく見直す良い機会だと言えるでしょう。また、コンティンジェンシー理論の基盤ともいえるフラットな組織作りには、まだ抵抗を感じる人も多いようです。人材の採用から人材の適切な配置および人事評価まで、これまでの全てを見直して多様な人材が働ける制度を作りましょう。

まとめ

コンティンジェンシー理論を導入して柔軟な組織を作ろう

コンティンジェンシー理論には多くのメリットがありますが、実現するのは非常に難しく多くの課題も抱えています。これまでの職場環境が求めるものと全く異なるものであったならば、改善にはかなりの時間と労力が必要になるでしょう。組織改革をするには、人事担当部門だけが頑張っても限界があります。他の部門にも積極的に働きかけるなど、企業全体を巻き込んでいくことが重要と言えます。企業が生き残っていくために変革は必須であり、コンティンジェンシー理論を良く理解し導入することが重要です。どんな変化にも対応できる柔軟かつ強固な組織を作るという思いを忘れず、前に進みましょう。

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