記事更新日:2024年10月16日 | 初回公開日:2024年10月16日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報ゆでガエル理論とは、ゆっくりとした変化に対応するのが難しいことを指します。ゆでガエル理論は、変化や困難に対しての人間の適応能力や意思決定に関しての概念です。なぜゆでガエルなのかというと、カエルはいきなり熱湯に入れた場合は驚いて逃げて行きます。しかし常温の水に入れて少しずつ水温をあげていくと逃げるタイミングを失い死んでしまうという作り話が由来とされています。ゆでガエル理論とは、ゆっくり環境が変化しているにも関わらずその事に気づかずに致命的なダメージを受けてしまうことです。
ゆでガエル理論が日本で広まった背景には、組織論で紹介されたことがきっかけです。ゆでガエル理論は、アメリカの文化人類学者・思想家であるグレゴリー・ベイトソン氏によって1960年代に初めて紹介されました。しかし日本で広まったのは最近です。本の組織論研究者・経営学者である桑田耕太郎氏と田尾雅夫氏が発表した組織論の中で、ペイトン氏のゆでガエル理論が紹介されました。このことがきっかけでで大手企業の経営悪化時などにゆでガエルという表現がされるようになりました。
ゆでガエル理論の事例として、エンロン社の倒産があります。1985年に北米のエネルギー産業として設立したエンロン社は、失敗しているプロジェクトにも関わらず外部にはうまく機能しているように見せかけていました。実際には数々の大手海外事業に失敗しており、巨額の負債を抱えていましたがCFO(最高財務責任者)の指示で帳簿を操作し不正な会計処理を行っていました。結果として総額160億ドルを超える負債を抱え倒産してしまいます。リスク管理や問題意識の甘さによって発生した、ゆでガエル理論の典型です。
ポロライド社の経営破綻もゆでガエル理論の例です。写真フィルム業界は、ゆでガエル理論の事例としてよく取り上げられます。その理由は、ポロライド社が2001年に倒産し、2006年にはコニカ社が写真フィルム事業の撤退を行い2012年にはコダック社が倒産しています。デジタル化が進んでいることを察知はしていたものの、過去の成功に囚われ続けてしまったため市場がデジタル化したときには取り返しがつかない状況になっていました。
ゆでガエル状態に陥るのは、変化に弱いためです。日本では、周りの環境や自分の環境が変わっていくことを好まない人が多くいます。先述したように、ゆでガエル理論の元にもなっている通り急速な変化をする場合はその変化に強制的に合わせる以外にないため、変化せざるをえません。しかし変化が緩やかに起こっている場合は人々はそれに適応していくことが難しいと言われています。急激な変化に比べて緩やかな変化は見過ごされるか重要性を過小評価されているため、深刻さに気づかないまま取り返しがつかなくなります。
ゆでガエル状態に陥る原因は、現状維持を求めているからです。ゆでガエル理論で例えられることが多いように、人は快適で安定している環境に慣れてしまうとそのまま変化を起こさずに現状維持をしたいと考えることが殆どです。行動経済学では、現状維持を好む傾向があることを現状維持バイアスと呼んでいます。自分にとって有意義もしくは有益であるとわかっている変化であっても、新しいことを受け入れるという抵抗によって変わることを拒否しがちです。
過去の成功体験から抜け出せないのも、ゆでガエル状態に陥る原因です。先述したように、人間は基本的に安定を求めて変化を嫌う傾向にあります。変化を恐れているため、新しいことにチャレンジして利益を伸ばそうとするよりもリスクを回避し従来までのやり方に固執してしまいがちです。しかし時代が変化していく毎に顧客のニーズや企業に求められるものは変わっていくため、過去の成功体験がそのまま通用するとは限りません。過去の成功体験に固執してしまうと、ゆでガエル状態になります。
やるべきことを後回しにしていることで、ゆでガエル状態に陥ってしまいます。変化を嫌うのと同様に、人は大事なことほど後回しにしてしまう癖を持っています。急激な変化が起きた場合は、行動を起こさざるを得ないため後回しにすることはできません。しかし変化が緩いと対処しなければならない課題を先延ばしにしてしまう傾向にあります。「今すぐに取り掛からなくてもいいだろう」「もう少ししたら取り掛かろう」という心理状態になります。やるべきことが重要であればあるほど、そこから逃げる傾向にあります。
挑戦しづらい文化があることも、ゆでガエル状態に陥る原因の一つです。企業の中で従業員一人などの個人単位で状況を変えるために行動を起こすことは、簡単ではありません。更に日本では出る杭は打たれる・空気を読むなど企業の中で同調圧力が働きやすい環境があります。同調圧力が強い職場では、環境や状況を変えるために行動や変化を取り入れることは難しいと言えます。そのため、多くの人が変化が必要だと思うようになるまで対処できない状況に陥ります。
ゆでガエル状態は、社内でのコミュニケーションが欠如している場合にも、陥りやすくなります。コミュニケーションがしっかりと取れている状態であれば、従業員同士の信頼関係があり自分の意見を言いやすく危険な状況に陥る前に改善できる環境ができています。しかし風通しの悪い職場であれば意思疎通を活発に行うことができず、波風を立てずに仕事をする人が増えていきます。誰も危機に対応できずに問題は大きくなり知らぬ内に破産していたという状況になってしまいます。
ゆでガエルにならないためには、危機意識を持つようにしましょう。企業がゆでガエル状態にならないようにするためには、従業員一人ひとりが自分の業務だけでなくチームとしての成果や会社の将来や業績などに危機意識を持っておくことが大切です。従業員が危機意識を持っていると、変化に鈍感になることはなく企業が経営維持をしていくために変化に合わせようとします。周りから言われて動いてもその後の変革するためのプロセスに歪みが生じてしまう可能性もあります。従業員が危機意識を持てるような意識付けを企業としても行っていきましょう。
ゆでガエルにならないように、変化や挑戦に関するビジョンを立てることが大切です。変化に鈍い・変化に気づいていても発言がし辛いような職場ではゆでガエル状態に陥りかねません。ゆでガエル状態を避けるためにも、もともとの企業体質に変化や挑戦に関してのビジョンを浸透させておくことが大切です。変化や新しいことに挑戦するビジョンがあれば、通用しない古いやり方に固執することなく新しい方法を見つけることが簡単になります。日頃から従業員の新しい提案や考えを受け入れるなど地道な活動が必要になります。
客観的な視点を持つことも、ゆでガエルにならないために必要です。自分の業務や自社の評価に対して客観的な視点を持つことは簡単ではありません。もし危機的な状況を目の前にしたとしても、うちは大丈夫・従来も同じ方法でうまく行ってきたと安易な考えが選考してしまい危機感を持てなくなっているかもしれません。客観的な視点を持つためには、売上目標が達成されているか・達成するためには長時間労働など非効率な状況に陥っていないか確認することが大切です。危機的な状況を判断できる指針を事前に決めておきましょう。
社員の自立をサポートすることで、ゆでガエルになるのを防ぐことができます。ゆるい変化にも対応できるようにするためには、社員が積極的に行動する・自発的にアイデアを出してもらうということが必要不可欠です。社員の自立を阻むのは、組織構造や同調圧力がある職場環境・慣行などです。こういった自立を阻むものを徹底的に除去することができれば、緩い変化が起きている中で自ら行動を起こし危機的状況を回避するために行動できるようになります。ゆでガエルにならないためには、社員が自立できる環境作りが重要です。
ゆでガエル状態を回避できたのは、富士フイルム株式会社です。先述したように、フィルム業界はゆでガエル理論の典型的な例として取り上げられることが多くあります。しかしそんなフィルム業界の中でも、富士フイルム株式会社はゆでガエル状態に陥ることなく危機的状況を打開できています。富士フイルムでは、フィルムで培った技術開発力とノウハウを活かして医療分野や高機能素材・化粧品事業など様々な分野で事業展開を行っています。現在でも業界の中で重要な位置を占めており、ゆでガエル状態を回避した企業の一つです。
ゆでガエル状態を回避した事例として、株式合資会社エルメス・アンテルナショナル社があります。エルメスとして世界的な有名ブランドを制作している株式合資会社エルメス・アンテルナショナルもゆでガエル状態を回避して、長年企業運営を行っています。創業当初は高級馬具メーカーとしてスタートしましたが、自動車が広まっていく中で馬具の需要は減少しました。高品質の革製品や高い技術力を活かしファッション業界に参入したことによって、ゆでガエル状態を回避しています。今では高級ブランドの代表格の一つとして様々な分野に進出しています。
株式会社伊藤園もゆでガエル状態を回避した例の一つです。伊藤園の前身であるフロンティア製茶株式会社で、量り売りが一般的であったお茶をどこでも簡単に購入できるようにパック茶の開発販売をスタートさせました。その後お茶だけでなく様々な飲料の販売種類を増やしていき、持ち運びが出来る缶入りのお茶の開発や海外進出など時代に合わせた事業の展開を行っています。最近では茶産地の育成や飲食店の経営なども行っており、ゆでガエル状態を回避し世界的な規模で多くの人から愛される企業になっています。
ゆでガエル状態に陥る原因や、ゆでガエル状態を防ぐ方法などについて解説しました。ゆでガエル理論は、ぬるま湯に浸かりすぎてしまうと問題の深刻さや重要さに気付かないままになってしまうという概念です。危機意識を持てていない企業では、簡単にゆでガエル状態に陥ってしまう可能性があります。過去への執着や挑戦しづらい職場の雰囲気などすぐに改善できるものではありません。しかしそのままにしてしまうとゆでガエル状態に陥りやすくなるため、ゆでガエル理論をしっかりと理解し危機的状況を回避できるように準備しておきましょう。
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