記事更新日:2024年08月23日 | 初回公開日:2024年08月23日
用語集 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報 外国人採用・雇用ナレッジマネジメントとは、知識管理という意味の言葉であり、組織が培ってきた知見や知識、技術、ノウハウなどのナレッジを組織全体で共有することによって、新しい知識を作り出す経営手法のことです。ナレッジマネジメントの目的は、企業の持つナレッジを新しい従業員に継承したり、それまでのナレッジを進化させたりすることで、企業の成長を果たすことです。ナレッジマネジメントに成功することができれば、業務効率化や組織の生産性向上、新規事業の開発などおに繋げることができます。
ナレッジマネジメントが注目される背景の1つとして、雇用の流動化によって長期的な人材育成や自然な知識・ノウハウの継承が難しくなっている点が挙げられます。かつての日本企業では、新卒で入社し定年まで働くのが一般的でしたが、現在は転職を行うことが一般化されており、従業員が1つの企業で働き続けることが当たり前ではなくなっています。そのため、実務を通じてペテラン社員の知識やノウハウが受け継がれていましたが、困難な状況になりつつあります。こうした状況を受け、企業のもつナレッジの質や量を効率的に高めていく施策として、ナレッジマネジメントが注目されています。
ナレッジマネジメントが注目されているもう1つの背景として、業務の属人化が過大視されている点があります。転職を行うことが珍しくない現在では、その人にしかできない業務が存在すること自体が、企業にとって大きなリスクとなります。業務の属人化を回避する手段としても、ナレッジマネジメントは有効な手段です。ナレッジマネジメントでは専門的な知識を集約し、誰もがその知識を活用して適切に対応できるようにします。ナレッジマネジメントを意識することで、属人的な業務を回避するとともに、業務の最適化を図ることにもつながります。
ナレッジマネジメントのメリットとして、業務の効率化があります。優秀な従業員の知識や業務の進め方をナレッジとして共有すれば、他の社員も真似することができ、業務を効率的に勧められるようになります。例えば、セールストークのポイントを共有することで、営業経験が浅い社員の成約率を高めることや、専門性の高い業務を進める上での注意点を共有することで、属人化の解消につながることなどが期待できます。このように、ナレッジマネジメントには、業務請負の効率化とともに、業務の質を向上させるというメリットもあります。
ナレッジマネジメントは、ナレッジの共有により業務効率化が図られ、コスト削減もにもつながります。社員の知識やノウハウなどが共有されることで、マニュアル化された業務は口頭で説明する必要がなくなります。そのため、人材育成に費やしてきた時間を削減することができます。業務効率化が進むと作業時間が短縮化するため、残業時間の削減にもつながるでしょう。その結果、残業代や夜間の光熱費といったコストの削減が実現できます。
ナレッジマネジメントの取り組みは、人材育成の効率化という面で効果的です。ナレッジマネジメントの仕組みが整うことで、見て技術を盗むことや実務経験の中で感じ取るといった形で習得していたナレッジを可視化されたマニュアルや学習コンテンツで伝達することが可能になります。実践的・専門的な知識やノウハウがより得られやすくなるため、従業員一人一人のスキルアップや知識の底上げにも期待できます。これは、近年注目を集めている人材育成の手法でもあるリスキリングにおいても有効な手段であると言えます。
ナレッジマネジメントの手法の1つ目は経営資本・戦略策定型です。経営資本・戦略策定型は、自社と競合他社の情報や事例を集約・分析し、経営戦略に活かす手法です。個人もしくは組織が持つ知識を分析し、経営戦略に活用する際に、分析結果から戦略的な判断が出来るため、競合他社との差別化を図る際に役立ちます。また、経営資本・戦略策定型は、経営戦略の立案・業務プロセスの見直しに効果的な手法であり、知識の分析により改善点も見つけることができます。
ナレッジマネジメントの2つめの手法は、顧客知識共有型です。顧客知識共有型のナレッジマネジメントは、コールセンターなどのフロントオフィス部門に適しています。顧客知識共有型では、社内のさまざまな部門で顧客データを共有し、一元管理することを目指します。例えば、担当者が不在の場合には問い合わせ履歴を確認して別の社員が対応することや、営業社員がわからない点を開発部門に質問してサポートしてもらうことなど、データの連携により顧客サービスの改善を可能にします。
ナレッジマネジメントの手法の3つ目は、ベストプラクティス共有型です。ベストプラクティス共有型とは、ベストプラクティスと呼ばれる社内の成功事例を共有し、業務改善を目指すナレッジマネジメントのことです。過去の辞令を掘り起こして成功事例を発見し、社内の情報システムに集約して社員が利用できるようにします。例えば、優秀な社員のスキルやノウハウをベストプラクティス化しやすい営業部門の業務改善などに適している手法です。
ナレッジマネジメントの4つ目の手法は、専門知識型です。専門知識型のナレッジマネジメントは、課題解決をスピードアップするための方法です。専門知識をデータベース化したり、高度な技能を持つ社員をネットワークで結んだりすることで、課題解決のヒントをすばやく探し出せるようにします。例えば、FAQ管理システムを導入し、専門知識をFAQの形でデータベース化するといった運用例があります。また、ヘルプデスクや情報システム部門などといった、組織内外からの問い合わせが多い部署では、課題解決のスピードアップや応対品質の向上も期待できます。
ナレッジマネジメントの導入手順として、まず目的を明確にします。なぜナレッジマネジメントを進めるかを明確にします。目的が明確でないと、どんなナレッジを蓄積するかや、社員への理解が得られずナレッジが集まらない、ナレッジを集めたが業務の改善や社員のスキルアップにつながらないなどの問題が発生します。ナレッジマネジメントを進める前に、自社の課題を洗い出し、ナレッジマネジメントでどんな成果を得たいのかを設定しておくことが重要となります。
次に、どのような情報を共有する必要があるか検討し、共有したい情報を選定します。可視化・共有したい情報を策定するにあたり、事前情報として社員が業務を進める上で困っていることを収集します。なるべく具体的にヒアリングすることで、社員が必要としている情報を把握しやすくなります。ナレッジとして共有するべき情報を決定し、社員に伝えることで、社員は自身が持つどの知識やノウハウを共有すれば良いかを理解できるようになります。
実施方法を決める際にExcelを活用することは、とりあえずナレッジマネジメントを始めてみたいという場合に便利です。基本的な操作方法を理解している社員も多くいるため、ナレッジの入力も容易であり、研修等を大々的に開催せずに取り組めるため、比較的多くの企業に導入されています。しかし、登録したナレッジを検索するたびにExcelを開く必要があり、共同編集する際に上書き保存してしまうリスクなどもあります。本格的なナレッジマネジメントを運用するには、ITシステムなどの活用が有効です。
ナレッジマネジメントを本格的に運用することを考えているのであれば、ITシステムを活用することも有効的です。ITシステムの導入は管理が手軽であり、データ分析も行いやすいためです。どのようなITシステムを導入するべきなのかは組織の体制や目的によっても異なります。一例としては、社内SNSやデータベース型ファイルサーバーなどが挙げられます。また、ナレッジマネジメントを行うために便利な複数の機能が搭載されているナレッジマネジメント専用ツールも数多くの事業者から提供されています。
ナレッジマネジメントを導入した後は、定期的に見直しを行う必要があります。ナレッジマネジメントを導入したものの、施策そのものの導入が目的となってしまい、社員の知識や経験が業務効率化にうまく活かされていない場合も珍しくありません。見直しの方法としては、社員へのアンケートを行い浸透度などについて調査しましょう。利用が進まない場合はボトルネックを解消し、ナレッジマネジメントの重要性を再度社員へ説明しましょう。
ナレッジマネジメントの注意点として、システム導入にコストがかかることが挙げられます。ナレッジマネジメントを始めるにあたり、どの情報を共有する必要があるかについて、視察やヒアリングを行う必要があります。加えて、利用するツールの検討や環境整備なども発生するため、システム導入までに時間を要します。また、ほとんどのナレッジマネジメントツールは有料であることが多いため、導入コストやランニングコストを踏まえた費用対効果も考慮して、自社に最適なものを選びましょう。
ナレッジマネジメントの重要性が社員に浸透しないリスクにも注意が必要となります。浸透しない理由として、ナレッジを保有する経験豊富な社員は忙しい場合が多く、ナレッジ共有に時間を割くメリットを感じにくいことが考えられます。中には成果につながる独自のノウハウを他人と共有したくないと考える人もいます。社員の理解を得るためには、ナレッジマネジメントを始める前にその必要性を丁寧に説明することが重要です。その上で、ナレッジの共有が進むようにインセンティブや評価制度への反映を検討するのも良いでしょう。
個人の持つ知識やノウハウを組織全体で共有・活用するナレッジマネジメントを進めることで、業務の効率化や人材育成の効率化などが期待できます。一方で、導入コストがかかることや社員に浸透しにくいなどの注意点もあるため、システムを導入する前に目的や共有すべき情報を整理することも重要です。今回紹介した手法や導入手順を参考にして、自社でどのようにナレッジマネジメントを進めていくか検討してみてはいかがでしょうか。
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