記事更新日:2020年10月13日 | 初回公開日:2020年10月05日
用語集 グローバル用語解説 採用・求人のトレンド 人事・労務お役立ち情報 グローバル経済まず「ピアボーナス」とは、従業員同士で報酬をやり取りする仕組みのこと。会社から支給する給料とは別に、英語で仲間や同僚を意味する「peer」同士がお互いの日常の行動や貢献に対して報酬を与え合う取り組みを言います。「資料作成を手伝ってくれてありがとう」「教えてもらった情報が役に立ちました」など、身近な行動についてポイントや社内通貨などで報酬を与える場合が多いです。従業員一人ひとりが評価者になることができ、業績に直結しない行動も評価することができる点が新しいですよね。
このピアボーナスは英語圏では「peer to peer bonus」とも呼ばれ、Googleが取り入れたことで注目されました。Googleでは1回150ドル、日本円で16,000円程が報酬の単位とされ、直属の上司・部下には送れない、同じ人には6ヶ月間送れない、もらった人に対しては6ヶ月間送れない、など明確なルールのもと運用されています。このようなルールの上で送られ、またある程度まとまった金額の報酬であるからこそ、給与とは別の評価指標として機能しているといえるでしょう。
次に、日本社会でもこのピアボーナスが注目されている背景を見ていきましょう。まずは雇用の多様化が進み、一つの会社で働き続けるような時代が終わりつつある今、人材の流動性が高まっていることです。時短勤務やフレックスタイムといった柔軟な働き方を採用する企業も増加傾向にありますよね。人材の確保・定着を目指し、職場環境の整備や人事評価制度の改善に取り組む企業の中で、社内コミュニケーション施策の一つとしてピアボーナスが注目されているのです。
また、昨今の新型コロナウイルス流行前後におけるテレワークの普及も背景の一つになりうるでしょう。遠隔地でもオフィスにいるように仕事ができるテレワークは、通勤時間の短縮やオフィスの固定費削減といったメリットをもたらす一方で、コミュニケーションが希薄になるデメリットがあります。文字のみでのやり取りで意図と違う感情が伝わってしまうコミュニケーションミスが発生したり、業務以外の雑談が減り、雰囲気がギスギスしてしまったり、など、あなたの周りでも起こっているのではないでしょうか。そのような状況では、積極的に同僚の仕事を評価したり、他愛もない会話で意識的に親密度を高めたりするピアボーナスが効果を発揮します。
さらに深掘りすると、2019年以降、働き方改革関連法の施行により、多くの企業が正規・非正規社員の待遇差を改善するなど従来の就業形態からの改善を迫られています。勤務形態が変わるということは当然人事評価制度も見直しが入り、「ジョブ型雇用」のようにより公平な評価制度が求められるようになりました。従業員のモチベーションを高めるために、上長からの一方的な評価だけでなく、職場全体から認められているという称賛を可視化させようという動きがピアボーナスです。
それでは、ピアボーナス導入のメリットを大きく4点に分けて解説していきます。まず1つ目は社内でのコミュニケーションが促進され、組織が活性化することです。メンバー間で感謝を送りあう仕組みを設定することにより、忙しい業務の中でも他人のポジティブな行動に目を配るようになります。褒め合う文化が発展することで、お互いの信頼関係を強め、仕事でのコミュニケーションも円滑で良好なものになるでしょう。ピアボーナスの導入によって社内にポジティブなコミュニケーションが生まれ、その結果、会社全体の雰囲気がポジティブになります。
2点目は従業員のモチベーションアップになる点です。まず金銭、社内通貨、ポイントなどの報酬を受け取ることそのものがモチベーションの喚起になりますよね。しかしそれだけでなく、承認や感謝が組織内で共有されることで褒める人、褒められる人、その周りの人全てにプラスの感情を与えることができます。自分の行動が他者に認められることで得られる満足感や達成感がさらなるやる気につながり、働くことへの意欲も自然と増加するでしょう。
3点目は、従業員エンゲージメントの醸成、つまり愛社精神や帰属意識を高められるという点です。ピアボーナスの導入により、従業員が所属部署を超えて協力しあったり褒めあったりする行為が増える、ポジティブなコミュニケーションが増えるというのはすでに述べた通りですね。承認欲求が満たされることで企業やメンバーへの愛着が生まれるだけでなく、このような様子を全社員に共有することで、社内全体での一体感や団結力を向上させることができます。一般的にエンゲージメントの高い従業員は優秀な成績を残すという傾向が認められているため、企業としてもエンゲージメントの醸成は非常に重要ですよね。
4つ目は、上記3点のような効果が生まれることで、優秀な人材の流出を防げるという点です。社内のコミュニケーションが活性化し、従業員のモチベーションが上がり、エンゲージメントが高まっている状態であれば、必然的に離職率は低下するでしょう。ピアボーナス導入により、評価の権限の一部を従業員に任せることは、経営層への信頼や仕事に対する意欲向上に繋がります。また、職場の仲間や同僚からの承認は日々のやりとりの小さなことでも「ちゃんと評価されている」と自信につながり、他者に対する興味・関心もわいてきます。一方的な上長からの評価だけでは決して得ることのできない効能です。
では逆に、ピアボーナス導入のデメリットはどんな点にあるのでしょうか。一つ目は、まず大前提として費用がかかる点です。そして先述のようなメリットが効果として現れてくるまでには少し時間がかかるという点です。ピアボーナスのサービス導入にかかるコストに加え、特に直接金銭を報酬としてやり取りさせる場合にはその原資が必要。また、ピアボーナスに限らず新しい制度を導入する際には金銭的コストだけでなく時間的なコストもかかるので、一定の覚悟が必要です。
二点目は、従業員がお互いの評価を送り合うことに夢中になり、本業がおろそかになったり、結果的に組織の弱体化を招いてしまったりという懸念です。ピアボーナスを導入すると、一部の社員はできるだけ多くの利益を得るべく、本来業務を逸脱し評価を得やすい仕事ばかりに熱心になってしまう可能性があるのです。内部のことに気を取られがちになってしまっては本末転倒ですのでしっかりとした運用ルールが必要ですね。
上記のデメリットを受けて、失敗しないために気をつけるべき注意点についても確認します。まずは費用対効果を考えること。報酬の財源を確保し、何を報酬とするか、どのような仕組みで進めるかを判断しなければなりません。導入にあたっては、評価基準を明確に示し、運用開始後も報酬の効果と使われ方のバランスをチェックすることが大切です。長期的に活用される制度となるよう、一度始めたら終わりではなく長期的なメンテナンスも必要でしょう。
要なのは自社の全従業員が利用しやすく、現在の業務にマッチする仕組みを作ることです。公平性という観点から、すべての従業員が利用しやすい仕組みにし、煩雑すぎて使いこなせないツールだったりすると制度が形骸化してしまいます。今の自社にとって必要な機能は何なのか、きちんと機能の種類や用途を見極めたうえで選定することをおすすめします。また、ピアボーナスにはSlackやChatwork等のビジネスチャットとの連携ができるものもあるため、すでに利用しているツールとの連携可否もぜひ確認してみましょう。
実際の導入事例についても確認しておきましょう。日本でのピアボーナス先駆者といえるのがメルカリです。2017年より、後述の「Unipos」というツールを利用し「mertip(メルチップ)」制度を導入しました。毎週月曜に一人あたり400Tipが配布され、受け取ったポイントは、1tip=1円換算で給与とともに支払われる仕組みです。もともと、四半期ごとにThanksカードを贈り、感謝を伝え合うAll for One賞の文化がありましたが、より気軽にかつリアルタイムでの賞賛を伝えるという狙いでの導入です。多いときは1日に1,000件近い投稿が発生しているなど、利用率も高く推移しています。
複数の飲食店を経営する株式会社ヴィクセスでは、社員だけでなくアルバイトスタッフも主役の会社にしようとピアボーナスアプリ「THANKS GIFT」の導入を決めました。定例の全社総会においてもTHANKSGIFTを表彰項目の1つとし、贈呈・獲得したピアボーナスの数を競い合っているようです。アルバイトスタッフの研修参加率の向上や離職率低下、またアルバイトが知人を紹介してくれるリファラル採用の増加など、はっきりとした効果が出ている事例です。
株式会社ユニークワンでは、「HeyTaco!」というツールを活用してピアボーナスを導入しています。従業員一人あたり毎日5個の「タコス」が配布され、同社の5つのバリューに沿った行動に対してメッセージとともにタコスを贈ります。タコス1個30円の換算で、100タコス=3,000円から換金でき、給与に反映される仕組みです。タコスはその日のうちに使い切らないと消滅してしまうルール設定、社内SNSを使うやり取りの手軽さから、社内に感謝の気持ちが飛び交うようになったそうです。
最後にピアボーナスのツールをご紹介しておきましょう。代表的なツールが先述のメルカリでも導入されている「Unipos(ユニポス)」。同僚からの感謝の気持ちと合わせた少額のボーナスを、スマホやチャットなどを通して、気軽に送受信できるシステムです。SlackやChatwork・Workplaceなどのビジネスチャットツールと連携ができ、投稿はタイムラインで共有できるほか、ハッシュタグで行動指針と紐付けることができます。良い投稿には「拍手」で賞賛でき、所属する組織で望まれる行動がより可視化されますね。企業の行動指針や企業文化との紐付けが可能です。
HeyTaco!は、アメリカのスタートアップ企業が提供しているサービスですが、「タコス」を送り合うことで感謝の気持ちを伝えるというもの。Slackを活用し感謝のメッセージを送る際にタコスの絵文字をつけ、そのタコスの数に応じて得点がもらえるというよりカジュアルなスタイルのピアボーナスです。現金として受け取れるのではなく「Reward(ご褒美)」というカタチで受け取れるのがユニークですよね。60日間の無料お試し期間があるので、正式導入前に使ってみたい方におすすめです。
以上、本記事ではピアボーナスという制度について導入時のメリットやデメリット、導入事例など一つ一つを確認してきました。ピアボーナスの導入は一緒に働いている人たちの良いところを積極的に見つけ合える、または発信するきっかけ作りになることは間違いありません。目指すべきは、ピアボーナス制度がなくとも自然にそのような風土ができている組織。より良い組織づくりの手段としてぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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