セルフキャリアドックとは【メリットや実施方法などを紹介します】

記事更新日:2023年07月28日 初回公開日:2023年07月27日

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「セルフキャリアドック」という言葉をご存知でしょうか。ドックとは船の建造や修理を行う場所であり、人間ドックなどと同じ意味合いです。つまり、個人のキャリア形成の修繕とまでは言わずとも、一度立ち止まって自分のキャリア形成について考えてみる場所になります。そしてセルフキャリアドックでは、キャリアコンサルタントとがいて、キャリアについて適切なアドバイスをしたり問題などに耳を傾けたりして個々の抱える重荷を軽くしてくれます。ここでは、セルフキャリアドックの意味から実施するためのポイントなどまで詳しく解説致します。

セルフキャリアドックとは

従業員のキャリア支援を目的とした取り組み

セルフキャリアドックとは、2015年に政府が「日本再興戦略改訂」に提示したものの1つであり、従業員のキャリア支援を目的とした取り組みです。多様化が進み変化する時代に合わせて、従業員のキャリア形成が重視されるようになりました。名前にあるよう「キャリアドッグ」とは人間ドックと同じで、個人のキャリア形成が健全であるかを定期的に見直すことによりキャリア形成を支援するものです。当初は用意された助成金は無くなりましたが、セルフキャリアドックへの取り組みは現在も強く求められています。

セルフキャリアドックの定義

厚生労働省では、「セルフ・キャリアドック、導入の方針と展開」の中で、セルフキャリアドックを以下のように定義付けしています。『セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティン グ面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のこと』です。

セルフキャリアドックが注目されている背景

労働力人口の減少

セルフキャリアドックが注目されるようになった大きな要因の一つが「労働力人口の減少」です。少子高齢化に歯止めがかからない現代では、労働力を持つ人口が目に見えるように減っており、企業の労働力不足は深刻な問題となっています。そのため各企業では質の高いキャリアを持つ人材育成と、有能な人材を手放さない施策としてキャリアドックを導入するようになりました。従業員が自らキャリアアップを目指し、目指すキャリアを形成することで企業も能力を維持することができるのです。

激しい変化が続く社会の影響

現代のように変化が激しく国を超えた競争も激化する中で、新たな商品開発やビジネスモデルを構築するためにも、キャリアドックに注目が集まっています。急速なIT技術の進歩は、いままでのビジネスモデルを全く変えるものでもあり、企業はそれに対応していかなければいけません。そのためにも、個々のキャリア形成も新しいものに変化する必要があり、その方向性を示したり有効なアドバイスをしたりするのがキャリアドックの大きな役目です。

改正職業能力開発促進法を実現させるため

キャリアセルフドックは2016年の改正により国が後押しすることを明言した職業能力開発促進法を実現する取り組みです。この時キャリアコンサルタントが国家資格に認定されました。職業能力開発促進法は「従業員のキャリアの自律」と「自ら行うキャリア形成」であり、さらに2022年の改正では「キャリアコンサルティングの機会の確保」も明示されています。企業では職業能力開発促進法の実現のために努力しなければいけない重要な取り組みです。

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セルフキャリアドックのメリット

従業員側のメリット

自分自身のキャリアの明確化

セルフキャリアドックを行う従業員側の大きなメリットは、自分自身のキャリアを明確化できることです。一度立ち止まって自分のキャリア形成を考えることで、本当に身につけたいキャリアや、将来どんな立場でキャリアを活かしていきたいのかをイメージしてキャリアプランを作ることができます。キャリアの目標が明確になることで、自ら考えて学ぼうとするキャリアの自律に繋がるのは大きなメリットです。また、それを手助けしてくれるキャリアコンサルタントの存在も忘れてはいけません。

仕事に対する目的意識の向上

仕事に連携する多くの事象についても目的意識が高く持てることは、セルフキャリアドックを行うことで得られる従業員のメリットです。目標が明らかになることで、自ずと行動する意欲が向上するうえに、イエスかノーの答えを判断しやすくなります。仕事に役立つと考えればイエスであり、マイナスになると考えれば拒み、目的に向かって邁進することができるのは大きなメリットと言えるでしょう。目的意識を向上することは目標達成の近道です。

モチベーションの向上

従業員がモチベーションを向上できることは、従業員自身のメリットですが企業にとっても大きなメリットと言えます。単調な業務であってもスキルアップへのステップと考えることで、高いモチベーションを維持することができるでしょう。モチベーションが下がることは生産性が下がる要因となり、離職へ繋がることさえあります。モチベーションを維持向上できることは難しいことですが、個人と企業にとって非常に有益なことです。キャリアコンサルタントとも相談しながら、前向きに日々の業務に取り組みましょう。

企業側のメリット

生産性向上

セルフキャリアドックを導入する企業側の大きなメリットに「生産性の向上」があります。前述のように、個々のモチベーションが上がってくれれば生産性は自然に向上へと向かうでしょう。また、新しいアイデアも浮かぶなど、作業の効率にも良い効果が期待できます。自ら提案したものが生産性の向上に寄与したと認められたならば、さらにモチベーションは上がり、企業としては期待した以上の効果が現れることもあるので、個々の努力は十分に認めるように努めましょう。

新卒社員の定着

セルフキャリアドックの導入によって期待できる効果に、新卒社員の定着率アップがあります。セルフキャリアドックによって、自分のキャリアアップが明確化すれば、右も左も分からなかった仕事への取り組む姿勢が変わるでしょう。次にステップアップすることも考えると、他の従業員の仕事を見る目も違ってきます。全ては自分の明るい将来のためと思い、率先して人から聞く事にもなるため、コミュニケーションの確立にも好循環です。これらは全て新卒社員の定着に繋がります。

シニア社員の活性化

作業においてベテランといえるシニア社員の活性化もセルフキャリアドックの導入による企業側の大きなメリットです。シニア社員は毎日が同じことの繰り返しと感じる人も多く、仕事にやりがいを感じる瞬間は非常に少ないと言って良いでしょう。セルフキャリアドックによって自分のキャリアをもう一度見直すことで、新しい目標が生まれます。もう一度チャレンジする気持ちがシニア社員にも芽生えて活性化したならば、若手への刺激にもなり企業に大きなメリットをもたらします。

セルフキャリアドックの実施方法

人材育成ビジョンの明確化

セルフキャリアドックを行う第一歩が、人材育成ビジョンの明確化です。人材育成のビジョンや方針の策定などを行うことが主になりますが、それを経営者と共有して後押ししてもらうとともに、社内に通達して周知してもらうまでを行います。自分だけが人材育成ビジョンを把握していたとしても先に進むことは叶いません。絶対的な権力を持つ経営者と、実際にセルフキャリアドックを行う社員に人材育成の目的や目指すビジョンを良く理解してもらうことが重要です。まずは、「人材育成ビジョン・方針の策定」し、「経営者のコミットメント」「社内への周知」を行いましょう。

実施計画の策定

次に行うのはインフラ整備です。計画書ができたら、主たる事業所管轄の労働基準局に提出し認可されるのを待ちます。認可されたら、労働協約および就業規則に定めてください。また、責任者の決定も重要事項です。統括責任者と同時に各実務担当者なども決めておきましょう。そして最も重要と言えるのがキャリアコンサルタントの確保です。時間があれば自社で育成することも可能ですが、前述のように国家資格が必要なため時間と労力を要します。社内に有資格者がいなければ、積極的に社外へ依頼しましょう。キャリアコンサルタントはセルフキャリアドックには絶対に欠かせないインフラです。

インフラ整備

セルフキャリアドックを行うための整備が整ったら、いよいよセルフキャリアドックを実施します。できれば実施の前に、対象者となる従業員に対して行うキャリア研修をおすすめします。自分で今までのキャリアを整理する良い機会です。キャリア研修を個々に行うのは物理的に難しいため、集合研修のような形式で行うと良いでしょう。そして、キャリアをきちんと整理したうえで、プロのキャリアコンサルタントと面談を実施します。面談ではキャリアに関するビジョンなども重要ですが、日頃から不満に思うことなどもコンサルタントに話し、その後のキャリア育成に活かす息抜きの時間とも捉えてください。

セルフキャリアドックを実施する

セルフキャリアドックでは、キャリアコンサルタントとの面談が大きく注目されがちですが、準備と最後に行われるフォローアップが非常に重要です。セルフキャリアドックの成否を握ると言っても過言ではないでしょう。人事の方々はキャリアコンサルタントから結果をとりまとめて個別のファイル(報告書)を作成し、コンサルタントおよび人事課で共有します。次は人事部より経営者に、従業員の傾向や主な課題や解決策などを報告し、最後に従業員へのフォローアップを行います。とくに初めてセルフキャリアドックを経験した社員には、感想なども聞いてその後の取り組みに活かすのも良い方法です。

フォローアップを行う

都心部にある情報サービス業である「株式会社インテージ」では、希望者15人にキャリアコンサルティング面談を実施し、全員から満足度100%の評価を得ています。キャリアコンサルティングでは、いつもは言えない相談などもあり、見えない課題が分かり現場や組織の改善に役立っているそうです。普段から感じている疑問や不満などもキャリアコンサルタントに相談する事で、企業の抱える問題点の解決に繋がり社員の満足度もアップする効果的なセルフキャリアドックの一例です。

セルフキャリアドックを実際に実施している企業

株式会社インテージ

セルフキャリアドックは国も支援するキャリアアップ制度であり、キャリアコンサルタントの存在が重要になります。国家資格を得たコンサルタントは多様な人に多様な適切なアドバイスをしてくれる貴重な存在です。将来的には自社でキャリアコンサルタントを育成することを考えても良いといえるほど、今後もセルフキャリアドックは日本の企業に定着していくのは間違いないでしょう。ぜひ、積極的にセルフキャリアドックを導入し、企業の生産性向上と社員の不安と不満の解消に繋げましょう。

まとめ

セルフキャリアドックを実施して生産性向上に繋げよう

セルフキャリアドックは国も支援するキャリアアップ制度であり、キャリアコンサルタントの存在が重要になります。国家資格を得たコンサルタントは多様な人に多様な適切なアドバイスをしてくれる貴重な存在です。将来的には自社でキャリアコンサルタントを育成することを考えても良いといえるほど、今後もセルフキャリアドックは日本の企業に定着していくのは間違いないでしょう。ぜひ、積極的にセルフキャリアドックを導入し、企業の生産性向上と社員の不安と不満の解消に繋げましょう。

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