時短ハラスメントとは【事例と合わせて対策する方法についても詳しく解説します】

記事更新日:2022年01月28日 初回公開日:2021年09月09日

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かつては長時間労働の強制から過労や自殺が問題でしたが、働き方改革により、残業を減らすために組織的な改革を進めている企業も増加しました。しかし業務改善を行わずに時短だけを推し進めたことにより、業務が残っているにも関わらず残業だけを禁止する企業が取り上げられています。その結果、持ち帰って仕事をする必要からサービス残業をせざるを得ません。このようなハラスメントを「時短ハラスメント」と呼ぶようになりました。この記事では、時短ハラスメントが起きる原因や、起こさないための対策について解説します。コミュニケーションの必要性を重要視する中間管理職の方にご覧いただきたい内容です。

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時短ハラスメントとは

労働時間の短縮を求めるハラスメント

時短ハラスメントとは、業務の改善や見直しを行わずに、部下に対して残業を禁止することを言います。かつては長時間勤務の強制や過労によるうつ、自殺などが問題になっていた時代もありました。そのため、企業における時短の推進は、労働者にとって歓迎すべきものに捉える人もいます。しかし、抱えている業務量が勤務時間内に終えられないにも関わらず、定時での退勤を強制されては、結果的に自宅で仕事をしなければなりません。その場合は、時短ハラスメントに該当することがあります。時短そのものに問題があるわけではなく、時短の環境が整っていないことが原因です。

時短ハラスメントの法的リスク

時短ハラスメントを取り締まる法律はない

時短ハラスメントそのものを取り締まるための法律はありません。しかし、2019年から施工されている「改正労働施策総合推進法」には抵触する可能性があります。いわゆる「パワハラ防止法」であり、上司部下の業務上必要な範囲を超えた言動で身体もしくは精神に苦痛を与えた場合に成立するものです。対策を打ち出さず、これまでの業務量と同様のままで時短を命令すると、部下は持ち帰って仕事をせざるを得ません。上司の目の届かないところで、しかも無給での長時間労働が続けば、メンタルヘルスへの影響が深刻化し、パワハラ認定を受けて訴訟へとつながることも考えられます。

時短ハラスメントが発生する原因

業務量は減らずに労働時間だけ減るため

上司が部下に対して時短だけを命令し、業務の優先順位や重要度を明確に示さないと、削られた業務時間の中で何から順に取り組めばよいのかの判断ができません。仕事の量はそのままに、単純に労働時間だけを短くするよう指示するのでは、会社にいる間に仕事を終わらせることができなくなります。これまでは残業時間で消化していた業務も、残業が禁止となると社内で行うことができなくなるでしょう。この結果に対して上司が部下を責めれば、それは時短ハラスメントに該当します。

上司が部下に仕事を丸投げするため

職場で残業を禁止されていることを理由に、上司が時間内に終わらなかった仕事を部下に丸投げすることも考えられます。部下は自分の仕事に加え、上司が投げた分まで仕事をしなくてはならなくなりません。上司は本来、業務量の調整や仕事の効率化について調整すべき立場にあります。しかし部下が行う業務の認識が不足していると、知らないうちに無理な業務量を強要することになるでしょう。場合によっては仕事を持ち帰らざるを得ず、これも時短ハラスメントとなります。

ノルマや期日が適正ではないため

期日・ノルマとも、適正な設定を行わないと、時短ハラスメントのきっかけとなってしまいますので注意しましょう。残業が禁止になったにも関わらず、発注から納品までの日数にも変化がないとすれば、これまでと同じように間に合わせることは難しくなるでしょう。以前は「この仕事は金曜の夕方に発注を受け、月曜の朝には納品する」というスパンで行っていた仕事があったとします。当時は残業も許されていたため、月曜に間に合うように金曜の夜に時間をかけて作業を行う仕組みになっていました。しかし、それでも上司の考えが、「ペースは変えない」という場合は、退社してから仕事を行うことを強要されているのと同意義です。

時短ハラスメントの事例

期限やノルマを守れなかったことを厳しく叱責する

職場での残業が一切許されないにもかかわらず、無理なノルマや期日の設定のために、納品日が守れないケースがあります。意に沿わない結果を、上司が部下に感情的に激しく叱責するケースは、時短ハラスメントに該当すると言えるでしょう。上司は部下の勤務時間を見積もり、適切なノルマと期日を設定する必要があります。そもそも強い叱責は、部下に強い精神的ストレスを与える行為です。パワーハラスメントにもなる可能性がありますので、対応には注意しましょう。

持ち帰り労働の増加

時短を勧める企業は、個人の負担が過剰に重くなる、偏るなどを防ぐため、メンバーや上司で分担するなどの対策を取らなければなりません。しかしそうした対策を何もせず、残業だけを禁止とするケースは、時短ハラスメントに該当すると言えるでしょう。就業時間内で処理可能な仕事以上に抱えている業務が多いと、持ち帰って仕事せざるを得ません。自宅で行った業務に対しては残業代が支払われないため、労働基準法上での問題も発生します。

時短ハラスメントのデメリット

仕事のクオリティ低下

残業の禁止による業務時間の短縮が必ずしも生産性を向上させるとは言えません。残業が可能だった頃には余裕をもって当たっていた業務も、就業時間内に必ず終わらせなければならないと言われれば、無用な焦りが発生します。特に、郵便・運送業ではこの問題は顕著となっています。通信販売の増加に伴い増加した流通量とドライバーの不足に頭を抱えている運送業界では、安易な時短では追いつきません。過去には郵便局の配達員が、配達を放棄して懲戒解雇となった例もあります。問題解決に向けて取り組みはされていますが、現状では十分とは言えません。

生産性やモチベーションの低下

無用な残業を行うのは良いことではありませんが、残業代が支給されなくなることは、従業員のモチベーションを大きく下げます。これまでに多くの仕事に関わり、遅い時間まで尽力してきた社員にとっては、一方的に残業禁止を宣告されたことでやる気を失ってしまうかもしれません。また、残業代が従業員の生計を強く支えている場合もあります。必要な収入を得られなければ、離職を検討する従業員も現れる可能性も考えなければなりません。

中間管理職の負担増加

調整を伴わない強引な時短計画では、中間管理職が受け持つ仕事の負担の増加が懸念されます。企業の方針で一切の残業を禁止とした場合、中間管理職は部下の仕事が終わっていなくても、決まり通りに帰宅させなければなりません。その場合、部下が時間内に終えられなかった仕事を中間管理職が引き受け、処理しきれなければ持ち帰って業務にあたる必要も出てきます。結果として、中間管理職の心身に不調をきたしてしまう場合もあるでしょう。

休職や離職率増加

従業員は、働いた分だけ給料を得なければなりませんが、叶わないのであれば、業務量が適切な職場で働きたいと考えるようになるでしょう。そのために、従業員の離職率は増加し、企業に定着しなくなります。企業で残業が禁止されている場合でも、至急の案件として手元に残っている業務は、家に持ち帰って行わなければなりません。しかし社外での作業分は、どんなに尽力したところで単なるサービス残業です。管理者の見えないところで無理を続けて体調やメンタルに不調をきたすと、改善まで休職が必要となる場合があります。回復が見込めなければ、そのまま離職することにもなりかねません。

時短ハラスメントの対策

業務量を適正化する

企業が労働時間の短縮を検討する場合、業務量がそのままで時短だけを推し進めても、結果的には労働力が不足して業務が遂行できなくなる可能性があります。労働力不足を起こさないためにも、必要な労働力を補充することは、時短ハラスメント防止のために必要な対策の一つと言えるでしょう。労働力の補充が出来たら、全体の業務量に沿って適切に振り分けます。しかし、どのくらいの仕事ができるかは個人によって異なるため、上司は普段から個人の能力を見極めておくことも大切です。

ITツールを導入し機械化する

仕事の中でも、ルーチンワークや単純作業を減らすことで、適切に時短を進められることがあります。近年では「RPA(Robotics Process Automation)」を導入する企業が増えました。RPAとは、これまでは人間が行っていた仕事を自動化し、効率的に作業を進めるシステムです。2019年から施工された働き方改革以降注目を集めており、単純作業をRPAに任せれば従業員の業務量を減らすことができるため、積極的な導入が始まりました。生産性の向上や人為的ミスの削減など、様々なメリットを持っています。

残業代の是正や残業理由の洗い出しを行う

なぜ業務過多が起こっているのかを洗い出す必要があります。退勤後は社内に従業員が残っていないために、パソコンなどで勤怠時間を確認するのは難しいですが、従業員が相談しやすい体制を整えましょう。業務量はそれなりにあったはずなのに従業員から残業代の請求がないから、勤務時間中に仕事が終わったのだろう。そう考えるのは間違いです。残業禁止のために、帰宅後に仕事をしているかも知れません。また、残業の必要性や必要な支援について、従業員と話し合う時間を作ることが大切です。繁忙期など、業務上の波はやむを得ませんが、残業の慢性化につながらないよう留意しましょう。

企業内でのコミュニケーションを充実させる

時短ハラスメントは、普段からコミュニケーションを十分に取っておくことで防ぐことができます。上司が部下の仕事や仕事量を深く知らないと、どうして部下が時間内に仕事を終えられないのかを察することができないため、無意識にハラスメントを起こしがちです。特に、上司が業務の現状について把握しているかどうかがカギとなります。部下の抱える仕事量を上司が把握できていれば、複数人で業務を振り分けるなどの対策で時短ハラスメントを防ぐことができるでしょう。普段からテーマを決めてチーム内での話し合いを行い、上司と部下の間でも1on1での対話を行うなど、歩み寄った継続的なコミュニケーションが大切です。

相談窓口を設ける

大きな企業では、企業内で発生するハラスメントについての相談窓口を設けていることが少なくありません。時短ハラスメント以外にもパワハラやセクハラ、メンタルヘルスケアなど社員が様々な悩みを相談できる窓口です。中小企業においても、企業のリスク回避のために、これらの相談窓口を設置しておくとトラブル防止に役立ちます。相談窓口では相談者の匿名性が確保できる環境を確保しましょう。なお、相談を受けた後は、事実を調査、確認をするチームとの連携が必要となります。

定期的な実態調査を行う

定期的に、社内で時短ハラスメントが起きていないかの実態調査を行い、防止策を講ずることも対策として有効です。匿名でのアンケートを実施する、啓発のポスターを掲示するなども良いでしょう。また、従業員に対して時短ハラスメントやパワハラ、セクハラなどについての講習を行うことが効果的です。しかし講習の結果、従業員同士のコミュニケーションが消極的にならないようにしなければなりません。知識を身に付けつつ、コミュニケーションによる成果を上げる体制づくりを推進していきましょう。

まとめ

時短ハラスメントを防止して働きやすい環境を作ろう

時短ハラスメントは、多くの職場で無意識のうちに起きているハラスメントです。その大きな理由はコミュニケーション不足にあると考えられます。上司が業務を行う現場や業務量について十分に理解していれば、時短ハラスメントが起きる可能性は低くなります。また、双方向のコミュニケーションが行われ、上司と部下の対話が保たれていることで、時短ハラスメントの回避率は高まるのです。従業員がどうして仕事を終えられず帰れないのかを考えることから始め、現状の把握に努めましょう。

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