記事更新日:2024年06月19日 | 初回公開日:2024年06月19日
用語集 人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド職務給制度とは、業務内容に合わせて給与を決める制度のことです。年齢や役職・在籍年数などに影響されることがないため、成果主義に近い考え方です。職務内容や評価に合わせて給与の支払額が設定されているため、若手でも在籍歴の長いベテラン層の従業員と同じ給料を貰うことが出来ます。欧米諸国などでは一般的な考え方ですが、日本では年功序列制を取っていたためあまり導入されていませんでした。グローバル化が進んでいる現在において、導入する企業が増えています。
職務給と比較されることが多いのが職能給です。職能給は、従業員の能力に応じて給与を決める制度であり年功序列制と同意義で使われています。職務給制度では、業務の難易度や専門性を重視して評価を行うのに対し、職能給は経歴やスキルを重視しています。職能給は、新卒一括採用や終身雇用制など従来の日本の雇用形態と相性が良かったことから長年日本企業で採用されていました。しかし終身雇用制が崩壊し成果主義を導入している企業が増え、職務給制度に変える企業が増えています。
基本給は「仕事給」「属人給」「総合決定給」という3つの賃金制度で構成されています。職務給は仕事給に含まれます。職務給は労働時間等は関係なく成果を元にして給与が支払われるのに対して、基本給は規定の労働時間を満たしていれば必ず支給される給与です。基本給は在籍年数を重ねるごとに上昇していくため、職能給と相性の良い給与内訳です。一方で職務給は労働時間に関わらず成果次第で減給や増額になるという点が異なります。
職務給制度のメリットは、公平な評価ができる点です。職務給は従業員の成果や、業務内容で給与が決まるため評価に公平性を保ちやすくなります。職務評価を行うことで支給内容が明確化されることから、給料泥棒という概念もなくなります。業務内容で給与が定められるため、従業員が不満を抱くことも少なくなる筈です。職能給では、同じ業務を行っていたとしても在籍年数等によって給与が変わってくるため、不公平差に対して不満が出てくる可能性があります。
職務給制度は優秀な若手を評価できるメリットがあります。職能給は成果に応じた給与の支払いが行われるため、給与を上げるためにはスキルアップが必要です。従業員は給与を上げるために、自発的にスキルを磨く様になり優秀な人材に成長しやすくなります。年功序列制ではないため、在籍年数が浅い優秀な人材も評価がしやすくなり年齢に関係なく評価することが可能です。在籍年数が浅くても評価してもらえることで、若手従業員のモチベーションアップにも繋がります。
職務給制度は求職者へアピール出来るのもメリットの一つです。職能給は業務内容に合わせて給与を支払う制度であるため、給与を上げるためにはスキルを身に着けてもらう必要があります。分野に特化したスペシャリストを育成することで、従業員のやりがいやモチベーションアップに繋がります。年功序列制が未だ多い日本企業において、自分の成果が給与に直結することは求職者へのアピールポイントとなり、優秀な人材からの応募も見込めます。
定着率の向上につながるのも、職務給制度のメリットです。職能給制度であれば、例え在籍年数の長い人と同じ業務をやっていたとしても同じ給与を貰うことは出来ません。また同じ時期に入った同僚より難しい業務などを行っていても、あまり給与に差をつけることは出来ないため徐々に不満が溜まってしまいます。職務給であれば、業務内容や成果に沿った評価を受けることが出来るため在籍年数に関係なく高い給与をもらえます。それがやる気に繋がり、定着率アップにもなります。
職務給制度のデメリットは、評価制度に不満が生じてしまう所です。成果をあげられる人にとっては、どんどん給与を上げることの出来る制度ですが中々成果をあげられない人にとっては給与も上がらないため不満が溜まりやすくなります。こういった状況が長引いてしまうと、仕事へのモチベーションや企業に対しての帰属意識が低下していきます。給与が中々上がらないと評価基準に不満を感じる従業員が増え、転職を視野に入れ始める可能性もあります。
職務給制度は、評価に手間が生じるデメリットがあります。評価制度の取りまとめは基本的に人事担当者が行っている企業が殆どです。職能給で在籍年数によって給与が決まっている場合は処理が簡単ですが、職務給は評価に時間がかかります。評価結果をまとめるだけでなく、評価基準も能力や成果によって異なるため手間と時間が必要です。業務内容や成果を精査するのに時間を要するだけでなく、評価に合わせた人材配置も必要になるため職務給などより手間がかかるデメリットがあります。
賃金が上がりにくい部署が出来る恐れがあるのも、職務給制度のデメリットです。営業などの部署であれば成約件数など成果を可視化しやすいため、評価を行うことは簡単です。しかしバックオフィスのような成果を数値化や可視化出来ない部署では、職務給を適用することは簡単ではありません。職務給を導入したとしても、成果が見えにくいため賃金が上がらない人が増えてしまう可能性もあります。職務給に向いていない部署では、別の評価方法を考えることも大切です。
職務給制度を導入するには、賃金水準の調査を行いましょう。賃金制度の見直しを行う際には、同業種や一般的な賃金水準がどうなっているのかを調べましょう。一般的な賃金の相場などは、厚生労働省や調査機関の資料を確認することで調べることが可能です。民間の調査会社の場合は企業規模別に給与水準などをまとめているものもあるため、自社に近しい企業規模の給与水準がどうなっているのかを知ることが出来ます。同業他社などと比べて、賃金水準が低くならないように注意しましょう。
職務給制度の導入には、シミュレーションや見直しが必要です。賃金水準の調査後、自社内で水準を決めたあとは既存の従業員に新制度を当てはめて入念なシミュレーションを行いましょう。現行の給与と移行後の給与の比較を行い、賃金の総額などが意図している結果になっているかどうかを確認することが重要です。シミュレーションを行っていく中で問題が見つかった際は、その都度仮設定と比較を行いながら検討していきます。効率的な運用を行えるという結果になるまでは、繰り返しシミュレーションを行うことが大切です。
職務給制度は、従業員に説明した上で運用することが大切です。シミュレーションを行い、賃金制度を変更しても問題がないことが確認できたら実際に運用するフェーズに移行していきます。運用する際には必ず事前に従業員に説明するようにしましょう。説明する際には、賃金制度を変更する目的や変更点などを分かりやすく伝えることが重要です。給与制度は従業員の生活やモチベーション維持に関わってくる重要な仕組みです。説明不足のまま運用してしまうと、従業員の不満がたまり失敗しやすくなってしまいます。
賃金規定を改定することも、職務給制度の導入の際に必要です。従業員にしっかりとした説明を行い、納得してもらったら運用するとともに賃金規定の改定を行う必要があります。賃金規定を変更する場合は、就業規則変更届を作成し経営陣に承認してもらわなければなりません。経営陣に承認をもらった後は、労働組合にも確認し意見の有無に関わらず意見書を貰うようにしましょう。変更の合意を得られた後は、「賃金規程変更届」と「就業規則変更届」を作成して労働基準監督署に提出を行います。
職務給制度では、新入社員の評価を低くする必要はありません。社会人経験のない新入社員の給与は一般的には低く見積もられがちです。しかし職務給を導入するのであれば、新入社員の給与を低く設定する必要はありません。職務給制度は入ったばかりの新入社員であっても、成果を上げればそれに見合った給与を支払うことが出来ます。しかし新人研修など難易度が高くない業務をこなす期間職務給制度では給与が低くなってしまう場合には、研修期間中のみ職能給制度を導入するというのも一つの方法です。
職務給制度は、業務内容が変われば給与が下がる可能性がある点が注意点です。職能給では、評価の基準を職務遂行能力としているため業務が変わったからといって給与が下がることはありません。しかし職務給制度は業務の内容を元に評価を行っているため、業務が変われば給与が変動することがあります。会社都合で人事異動があった際に、業務内容が変わるからと言及された場合は従業員の不満に繋がりかねません。減給の旨を就業規則に記載した上で、従業員へしっかりと周知しておくことが大切です。
基本給に含めて考えるのも、職務給制度の注意点です。職務給や職能給は賞与や残業代最低賃金や欠勤控除などの算出基準となる基本給に含まれています。企業によっては職務給と職能給を基本給に含めていないところもありますが、残業代として計算式に含めなければならず注意が必要です。他にも基本給は勤続年数を元にして計算を行い、職能給を手当として支給している企業もあります。どういった方法で支給を考えているのかによって、計算方式などが異なってくるため自社での支給方法などをしっかり把握しておきましょう。
職務給制度のメリットやデメリット、注意点などについて解説しました。職務給は従業員の勤続年数に関係なく成果や実力など、職務評価を元に給与額を決める制度です。成果に見合った給与を支給することで、従業員のモチベーションアップや成長意欲を高める効果を期待できます。一方で、職務給制度が合わない部署や業務内容変更による給与減額などエンゲージメントが下がってしまう可能性もあります。職能給と職務給はそれぞれにメリット・デメリットのある制度であるため、内容をしっかりと理解した上で自社にあう方を導入しましょう。
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