オープン・イノベーションとは【事例やメリットを紹介】

記事更新日:2020年08月04日 初回公開日:2020年07月29日

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「オープン・イノベーション」について、その言葉だけは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では、日本においてはまだ馴染みの薄いこの手法について、意味やメリット・デメリット、活用事例などを解説します。企業が新たなアイデア・プロダクト開発を行う上で大変重要な考え方になりますし、海外ではこの概念によりすでに多くの成功事例が出ています。まずはこの概念を正確に理解するところから始めましょう。

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オープン・イノベーションとは

組織の枠組みを越え技術の結集を図ること

まずオープン・イノベーションの定義に関して、これは「組織(企業)の枠組みを超え、技術の結集を図ること」。そして、より新しい価値を創造していくことを言います。この概念は2003年に米・UCバークレー校のH・チェスブロー教授が提唱した考え方で、技術やアイデアを企業の垣根を越え自由に流出入をさせ、イノベーションの創出、市場拡大へ繋げるものです。知識や情報を車内にとどめる「クローズドカンパニー」の対極にある考え方といえますね。

大企業とベンチャー企業の共同研究が進んでいる

実際に、この概念に基づき、大企業とベンチャー企業の共同研究が進んでいます。自前主義が根強い日本でも、大企業がスタートアップ企業を支援する、という形でこの「オープン・イノベーション」に取り組む事例が増えているのです。新しい技術、企画の推進スピードを求める大企業と、支援・資本力を求めるベンチャー企業は互いのメリットを掛け合わせwin-winな関係を築きやすいのかもしれません。具体的な事例も後述しますので参考にしてください。

オープン・イノベーションの目的

組織内部のイノベーション促進

企業がオープン・イノベーションに取り組む目的の一つは、組織内部のイノベーションを促進させるためです。どの企業にも新規事業開発部隊はありますが、自社内ではどうしても発想は凝り固まってしまうもの。オープン・イノベーションを行うことで、外部より新しいアイデアや実現方法そのものを得られる可能性が高いです。異分野、医業種の見地の意見や技術を積極的に取り入れ掛け合わせることで、一企業の枠を超えた革新的な製品やサービスの創造につながると考えられています。

自社にはない意見を取り入れ新技術革新を起こす

また、新しい技術革新を起こすために、自社にない意見を得ることもオープン・イノベーションに取り組む目的の一つです。事業立ち上げにあたり自社内で不足している意見や技術が明らかな場合は、それを持つ他企業をパートナーとして迎え入れることで解決ができますよね。この場合は技術革新のために自社に足りないパーツを具体化し、その条件を持つパートナーをいかに探すかがオープン・イノベーションの要となります。

オープン・イノベーションが注目される背景

VUCA時代の到来

Volatillty(変動性)

オープン・イノベーションが注目される背景として、現代のビジネス環境が「VUCA時代」という言葉で表されるように、より複雑で予測困難な状況であることを知っておきましょう。VUCA(ブーカ)のVはVolatilityの頭文字で、変動要素が大きいことを意味しています。IT技術が進歩する中で、顧客ニーズや社会の仕組みが猛烈なスピードで変化している現代。新しいビジネスモデルを作り出しても、環境の変動により短期間で衰退してしまうことも少なくありません。

Uncertainty(不確実性)

VUCAのUはUncertaintyの頭文字で、不確実な時代ということを表しています。新型コロナウイルスのような予測不可能な疫病の流行、地震・台風などの災害に始まり、ビジネス環境には予測しえない要因が多く存在します。その結果、年功序列・終身雇用といった確実な日本型雇用モデルは崩壊しつつあります。成果主義は不確実性の裏返しでもあり、良くも悪くも今、この状況で成果を上げ続けることが求められる時代といえるでしょう。

Complexity(複雑性)

VUCAのCはComplexity、ビジネスの複雑性を意味します。経済全体のグローバル化により、一つの企業、一つの国で何かの問題を解決できることは少なく、成功への困難性はより高まっています。例えば、全世界的に受け入れられているキャッシュレス化を日本に導入しようとしても、独自の現金信仰文化や店舗側のコスト負担など、思うように浸透が進まない、という事例。これは個別の要因が作用しするため、一つの成功事例を単純に横展開できないといえます。

Ambiguity(曖昧性)

VUCAのAはAmbiguityの頭文字で、ビジネスの曖昧性を示しています。曖昧というのは、現代は、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化しすぎるあまり、問題に対する絶対的な解決策が見つからない、ということ。「答えを見つけた瞬間に答えでなくなる」といった曖昧性は現代社会ならではです。このような不安定な要素が蔓延するVUCAの時代だからこそ、価値そのものを新たに創造するオープン・イノベーションの取り組みが急速に広まっています。

オープン・イノベーションのメリット

事業推進のスピードが上がる

では、実際にオープン・イノベーションを行うメリットを考えてみましょう。一つには、事業推進のスピードを大幅に向上できること。自社内の経営資源で事業開発を行う場合、調査・研究・企画・そのあとのマーケティングや営業など、かなりの時間がかかりますが、外部資源を活用することで、ここにかかる時間を大幅に短縮できる可能性があります。また、一般に大企業はこのような業務のスピードが遅い傾向にあるため、より機動力の高い小規模スタートアップと組むだけでもスピードという価値を手に入れられるのです。

競合他社に対して優位性を持てる

加えて、革新的なアイデアをリリースすることで、競合他社に優位性を持てるという点も大きなメリットです。自社、自業界にない革新的な技術・アイデアは大きな武器になりますよね。今までにない意見交換や共同での研究開発により生み出される相乗効果も大きく期待されており、これにより社会や顧客のニーズに対してより広く対応できるようになるのです。自社だけで研究開発するよりも、短期間、かつ少ないコスト負担で深く広い研究開発ができるようになるため、競合他社との差別化に繋がるでしょう。

オープン・イノベーションのデメリット

技術の情報漏洩のリスクがある

逆にオープン・イノベーションのデメリットについても知っておきましょう。第一に、自社のアイデアや技術情報などの流出・模倣・盗用のリスクがあるという点。外部企業と連携する以上、自社の経営資源を公開する必要がありますが、これにより機密性の高い内容が外部に流出されてしまう点は否定できません。どこまでオープンにするかを事前に確定しておく、また機密保持契約でのリスクヘッジをする、などが必要となります。

利益率が低下する

次に、オープン・イノベーションでは複数の組織が協力する分、得られる収益も分配する必要があるという点です。費用や収益は関係者間で分配する必要がありますが、考案したアイデアや開発した技術に関して、どの組織がどの程度貢献しているかは判別しにくいことも多いですよね。特に金銭面に関しては後にトラブルになりやすいため、事前に納得のいく分配割合を定めておく必要があります。このように、オープン・イノベーションは自社における利益率という点では低下します。

オープン・イノベーションの現状

イノベーションに対応できていないという自覚がある

では、日本におけるオープン・イノベーションの現状はどうなのでしょうか。企経済産業省が2019年4月に発表した「企業におけるオープン・イノベーションの現状と課題、方策について」によると、2018年時点で、3年前と比べた外部連携数が「10%以上増加」と回答した企業はわずか20.9%でした。多くの企業は自社がイノベーションに対応できていないと自覚はしているものの、オープン・イノベーションに本格的に取り組もうとする企業は多くはありません。

大学の機能やリソースを十分に活用できていない

また、オープン・イノベーションというと企業どうしだけでなく、産学連携という観点も含まれますが、企業側が大学の機能・リソースを十分に活用できていないということも事実です。大学側にも研究者の高齢化、財政の不安定化など問題があり、理系人材などニーズの高い分野の専門人材、女性研究者の人材提供が十分に行われておりません。企業側、大学側ともに意識改革が進んでおらず、実施体制にはまだまだ改善の余地があります。

オープン・イノベーション促進税制の開始

このような状況の中、2020年、政府は「オープン・イノベーション促進税制」を施行しました。これは大企業等がベンチャー企業の株式を取得し、事業年度末まで保有した場合、その株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理した場合に損金算入できるというものです。これは、合計 463兆円を超えると推定されている企業の内部留保を活用し、企業成長に結びつけることを狙いとしたもので、社会全体にオープン・イノベーションへの追い風が吹いている状況です。

オープン・イノベーションの事例

トヨタ×カブク

具体的にオープン・イノベーションを実施した事例についても確認してみましょう。日本を代表する自動車メーカーのトヨタは、オープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」を開始。プロジェクトの一つとして、株式会社カブクと連携し、カブクが持つ3Dプリンター技術を活用し、3輪超小型電気自動車「TOYOTA i-ROAD」にカスタマイズパーツの導入を行いました。利用者はボディパーツやインテリアの一部を自由に交換でき、これによりトヨタは、3Dプリンタデータを活用した車作りのノウハウや経験を取得できました。

KDDI×シードベンチャー

通信会社大手のKDDIは日本国内のオープン・イノベーションの最古参といえます。2011年よりシードベンチャー企業を対象としたオープン・イノベーション・プログラム“KDDI∞Labo”とそのベンチャー企業への出資プログラム“KDDI Open Innovation Fund”をスタートさせました。登録したベンチャー企業による新しいビジネスの創出を支援するだけでなく、複数企業と「パートナー連合」を結びより広い事業提携や、業務資本提携ができる環境を整えています。

オープン・イノベーションを学べる本

オープン・イノベーションの教科書

さらにオープン・イノベーションを学びたい方は、星野達也著「オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ」を読むことをお勧めします。著者はマッキンゼーを経てオープン・イノベーションの技術仲介、活用サポートを手がけるナインシグマ・ジャパンの取締役を務める星野氏。海外事例だけでなく、東レ、デンソー、帝人、味の素、大阪ガスという国内の4社の事例も紹介しており、より実践的な内容です。

オープン・イノベーションで開発を効率的に

以上、オープン・イノベーションのメリットやデメリット、事例について紹介してきました。オープン・イノベーションへの注目が高まりつつある今、これをただのブームとして捉えるのは勿体ないことです。大切なのは、組織に新たな知識をもたらす手法として、正しく理解し、実施し、成果を出すこと。今後、日本国内でもオープン・イノベーションが活発化し、優れたプロダクトが多く生み出されていくことに期待したいですね。

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