入国管理法とは?【企業が知っておくべきことをわかりやすく紹介】

記事更新日:2020年09月24日 初回公開日:2020年09月07日

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最近よく耳にする「入国管理法」。2019年に入国管理法が改正されたことで、これから、在留外国人は益々増加していくと予想されます。この記事では入国管理法とはそもそも何か、入国管理法の内容をゼロから解説します。入国管理法の改正によって、日本の社会に突き付けられている課題とはなんでしょうか。

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入国管理法とは

正式名称は「出入国管理及び難民認定法」

入国管理法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」です。英語でImmigration Control and Refugee Recognition Actといいます。入国管理法は通称で、ほかにも出入国管理法、入管法などと呼ばれることもあります。日本の出入国に関係するすべての人が対象で、外国人も日本人も関係しているのが特徴です。外国人が国内へ入国したいと思う場合、この入国管理法に基づく許可がなければ、いかなる理由であれ滞在することができません。そして、入国管理法にかかわる業務を担ってきたのが、「入国管理局」でした。2019年からは格上げされ「出入国在留管理庁」と名前を変えて、新たなスタートをきりました。

制定された背景

1951年、ポツダム宣言に伴って交付された「出入国管理令」という法律が、現在の入国管理法の始まりです。その後も、時代の流れに合わせて、入国管理法は改正を繰り返してきました。特に、1980年代に入ると、不法入国者や不法就労者の存在が問題となり、それ以降は在留資格の明確化など、入国者に対する取り締まりが強化されています。2000年代に入ると、外国人の受け入れを進める動きが加速してきました。後述しますが、2019年には新たな在留資格が制定されるなど、入国管理法も変わってきています。

入国管理法の内容は大きく分けて2つ

出入国の管理について

まず一つ目は、出入国時の管理規制です。日本人の場合、有効な旅券を所持しているか確認し、入国審査官がパスポートにハンコを押すことで、出国を管理します。外国人の場合、入国時に有効なビザやパスポートを持っているか、滞在予定期間はどのくらいかなどを確認し、問題がないかどうかチェックします。これにより、不法入国や不法滞在を取り締まることが可能になります。また、日本に住む外国人の在留資格を取り決めているのも、この入国管理法です。つまり、出入国管理にかかわる手続きや、制度、資格を定めるのが、入国管理法だといえるでしょう。

難民について

そして、もう一つが難民に関する手続きです。難民条約の適用を受ける難民、または難民だと主張する外国人が、日本で難民認定を受けられるかどうかを決めるのも、入国管理法です。難民認定を受けると、永住許可要件の一部緩和や国民年金などの受給資格が得られ、日本国民と同じ待遇を受けることができます。難民認定を申請する外国人は、毎年10000人ほどいますが、実際に認定される人は100人にもなりません。難民の受け入れに消極的な姿勢が、国際社会から批判を浴びることもあります。これから、国際的な課題ともいえる難民の受け入れを担っているのが、入国管理法です。

入国管理法に違反したらどうなる?

退去強制制度

「退去強制(たいきょきょうせい)」とは、入国管理法に違反した在留外国人の一つ目の罰則です。よく「強制送還」や「国外退去処分」と呼ばれ、何度も不法滞在を繰り返していたり、反社会性が強く、早期に出国が必要だと認められると、強制的に退去させる効力を持っています。自費で出国、運送業者が負担し送還する、そして国費で送還するという3つの方法で退去強制が行われます。退去強制の場合、収容施設において身柄が拘束されるため、入国管理法違反が特に悪質なケースにおいて、効力を発揮することが多いです。

出国命令制度

不法就労や不法滞在者が、自主的に出頭してきた場合、簡単な手続きを済ませて出国させる制度もあります。それが、「出国命令」です。出国命令では、収容施設で拘束されない代わりに、手続きを済ませて速やかに出国することが求められます。退去強制よりも、かかる時間も費用も圧倒的に少ないのが特徴です。この制度によって、不法滞在者の自主的な出頭を促し、入国管理法に違反している人を削減できると期待されています。

再入国はいつできる?

一度、入国管理法に違反した在留外国人は、いつ再入国できるのでしょうか。入管法の規定では、「上陸拒否期間」と呼ばれる、日本に上陸できない期間が決まっています。退去強制の場合は帰国から5年、出国命令の場合は1年が「上陸拒否期間」に当たります。そして、2度目以降の不法滞在、帰国の場合は10年をすぎないと、再入国することができません。何らかの犯罪にかかわってしまった場合、再入国は不可能だと考えた方がよいでしょう。

雇用主にも罰則がある

実は、入国管理法に違反していると知りながら、在留外国人を働かせた雇用主にも罰則があります。それが「不法就労助長罪」です。不法就労助長罪にとわれると、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処すると定められています。在留外国人を雇用する場合、本当に働ける資格を持っているかどうか、労働時間の制限の有無などをチェックしておくことが大切です。ビザの在留資格をよく確認せずに雇ってしまうと、不法就労助長罪に問われるかもしれません。

入国管理法が改正!どう変わった?

改正された背景

2019年、入国管理法が大きく改正されました。背景にあるのが深刻な労働力不足です。都市部への一極集中や、少子高齢化による働き手の慢性的な不足は、人手不足による倒産、経済成長の阻害などの悪影響を及ぼしています。そこで、日本の労働力の代わりとなる、外国人労働者の必要性が叫ばれるようになりました。今回の入国管理法の改正では、特に人手不足が深刻な業種で、在留外国人が長く働くことができます。今後、日本の人手不足を支える制度となることでしょう。

在留資格が拡大した

今回の改正では、「特定技能」という新たな在留資格が創設されたことがポイントです。在留資格とは、外国人が日本で働くのに必要な資格のことです。「技能実習制度」をお聞きになったことがあるでしょうか。技能実習生の在留資格は、日本の技術を母国へ持ち帰り国の発展に貢献するため、限られた業種で、働けるのは3年間だけでした。今回、「特定技能」の創設により、外国人労働者は最長5年、業種によっては期間制限なくずっと、日本で働くことができます。さらに、条件を満たせば母国から家族を呼び寄せることも可能です。日本で身に着けた外国人の技能を、母国だけではなく日本でも活かし、外国人が働く環境の整備を進めているといえます。

外国人の単純労働が可能に

今までは、技術を国へ持ちかえって活かしてもらうという目的だったので、単純労働には制限がありました。しかし、特定技能の創設により、農業、漁業、宿泊業、造船業、外食産業などの14業種で、在留資格が与えられて外国人労働者が働けるようになりました。さらに、日本語の条件なども緩和されたため、以前よりも入国しやすくなっています。日本の労働力不足を背景に、より外国人労働者を受け入れる取り組みが始まっているのです。

入国管理法の改正による日本の展望

在留外国人が増加する

まずは、在留外国人の増加です。特定技能による受け入れは法改正された2019年から5年間で最大345,150人を見込んでいました。ただ、初年度は4000人ほどにとどまっており、そこにコロナウイルスの入国制限があったため、思うように受け入れ人数が増えなかったのが現状です。しかし、このまま少子高齢化が進めば、労働力は減る一方です。そのため、受け入れ態勢が整うまでに時間はかかるかもしれませんが、今後は日本人の若者に代わって、外国人労働者が増えることが予想されます。

外国人を雇用しやすくなる

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特定技能が創設されたことで、外国人が働ける業種が増えました。さらに今後、コンビニエンスストアやトラック運送などの業種も、特定技能に加えるか検討が進んでいるようです。外国人も仕事の選択肢が増えますし、雇用する側も5年かそれ以上の期間、日本に残って働いてくれる外国人労働者は貴重ではないでしょうか。より多くの業種で、より長く外国人を雇用できるというメリットがあります。

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人手不足の解消による経済発展

日本で、人手不足を理由に倒産する企業は年々増加しています。特にその影響は、地方において深刻です。人手不足に陥ると、一人当たりの仕事量が増え、従業員の負担が大きくなります。企業の倒産による損失は、日本の経済にとっても打撃になっているでしょう。国外からの労働力は、国内の人口減少のあおりを受けないので、外国人を雇用することは、人手不足解消の第1歩です。外国人労働者は、ひいては日本全体の経済発展へとつながっていくのです。

入国管理法の改正による日本の課題

実態の把握がなされていない

特定技能に先駆けて、外国人労働者を受け入れてきた「技能実習制度」。しかし、近年、その失踪者数は増加の一途をたどっています。2015年から2019年までの4年間で、2万7000人もの技能実習生が失踪するという異常事態です。その理由の多くは、賃金未払いや不適切な長時間労働など、会社側の問題が挙げられています。しかし、その実態の全容は調査、把握されていません。特定技能で外国人労働者を受け入れる前に、今現在、外国人労働者が働いている企業の問題点をあぶりだし、同じことを繰り返さないようにするべきではないでしょうか。

受け入れ態勢の遅れが懸念

特定技能の制定により、日常会話レベルでしか日本語を話せない外国人も増えてきます。その前に、外国人と共生する社会を作らなければなりません。しかし、現時点では、日本人と在留外国人の間には、圧倒的な情報格差が生じています。例えば、災害が起こった時や生活に必要な情報を、どのように母語で伝えるかは、考えるべき喫緊の課題です。困ったときの相談窓口の設置や、多言語での情報発信の整備には、まだ多くの時間を要することでしょう。「見切り発車」とならないように、受け入れ態勢を整えていくことが求められています。

ダイバーシティの実現が求められる

ダイバーシティとは、多様性のことです。これから、日本に滞在する外国人労働者およびその家族は増えるでしょう。しかし、日本には、外国人への差別やいじめ、パワハラがないとは言えません。そこで課題となるのが、会社や地域社会というミクロレベルでのダイバーシティの実現です。今、多様性を受け入れ、人材を活用し、変化に柔軟に対応していくことが求められています。入国管理法によって、日本の社会の在り方が問われているといっても過言ではありません。誰もが住みやすい社会を作るため、各々何ができるか、今考える必要があります。

入国管理法はこれからの日本を変える制度

まとめてみると、入国管理法とは、出入国管理にかかわる手続きや資格を定めた法律で、2019年の改正を経てさらに外国人労働者が増える見込みだということがわかりました。ここまで考えてきたように、入国管理法はこれからの日本を変えていく制度です。受け入れ態勢を整え、外国人と共生する仕組みを作り、国籍に関係なく一丸となって日本を発展させる社会の構築を目指していきましょう。

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