記事更新日:2021年02月05日 | 初回公開日:2021年01月15日
用語集 グローバル用語解説 外国人採用・雇用 人事・労務お役立ち情報エンプロイアビリティ(Employability)は、経済用語の1つで従業員として雇用され得る能力のことを指します。雇用されるに値する能力とは、簡単に言うと「継続して雇用されるための能力」です。しかし、近年エンプロイアビリティは従業員だけではなく、雇用主である企業側にとっても重要なキーワードになってきました。 それは、雇用され続ける従業員というのは、企業にとっても必要な能力を持った従業員であり、能力の高い従業員とも言えるからです。エンプロイアビリティは、労働市場においての「個の価値」でもあり、企業にとっても逃したくない能力といえるでしょう。
エンプロイアビリティは、組織(企業)との関係からみて2つの種類に分けて考えます。1つ目の内的エンプロイアビリティは、現在所属している企業内で評価を獲得できており「雇用され続ける能力」のことを言います。新型コロナウイルスを代表するように予期せぬ事態に伴い、企業の業績が悪化し、従業員をリストラせざるを得なくなることもあるでしょう。そのような場合でも、最後まで辞めさせられないような能力をもち、市場ニーズや時代の変化に左右されず必要とされることです。日本経済団体連合会は、これを日本型エンプロイアビリティとも提唱しています。
2つ目の外的エンプロイアビリティは、「異動や転職を可能にする能力」を言います。ただし、単に転職できるというだけでなく、現在と同等以上の処遇や条件で転職できる能力でなければなりません。時代や環境の変化に合わせて、常に好条件の下で異動や転職をできる能力であり、ひとつの企業でしか通用しない能力でなく、他の企業でも使える能力を有する必要があります。歴史的には、外的エンプロイアビリティが先に注目されましたが、現在では内的エンプロイアビリティと外的エンプロイアビリティのバランスを重要視する考えが一般的です。
仕事に必要な知・技能とは、まず労働市場においての知識や仕事についての情報を与えてくれる人脈など、ネットワークに関する分野になります。また、能力的側面においては、仕事や職種への適性、新しい技能を学習する能力など、新しく出てきた困難な環境にも適応していく能力などが挙げられるでしょう。エンプロイアビリティには、誰が見ても「客観的にわかる能力」と「資格や指標ではわからない能力」に分かれます。ここであげる能力は前者であり「医者」や「弁護士」などの国家資格を有する士業が該当します。
仕事に対する協調性・積極性とは、意欲や行動的側面など、仕事に対するモチベーションを指します。また、内面にある「新しい仕事にチャレンジしたい」という意欲や「自分のキャリア形成をどのように築いていくか」など、キャリアの人生設計なども挙げられるでしょう。ビジネスシーンで使われる「協調性」は、他人と協力して業務を行う能力に該当し、会社内での人間関係や商談での決定力の向上にも繋がります。人間関係をストレスなく構築して維持できる能力は、社会人としての基本スキルの一つとも言えるでしょう。
人柄や価値観とは、エンプロイアビリティのなかでも「資格」や「数値」などとは違い、目に見えて計れないものに該当します。とくに精神面や仕事に対する姿勢に関するものであり、評価しにくい能力と言えるでしょう。しかし、このエンプロイアビリティが希薄な人材は、一緒に仕事をする同僚たちのモチベーションにも大なり小なりの影響を与えてしまいます。人柄や価値観は絶対的なものではありませんが、組織のなかでは軽視できません。新卒採用や若手教育などで重宝される能力でもあり、任された業務をしっかりやり切る自信や人間性などにも繋がります。
従業員のエンプロイアビリティを高める取り組みの一つとして、多くの企業が「ジョブグレード制度(職務等級制度)」を導入しています。これまで日本では、一人の従業員が様々な仕事を経験することで能力を培い育成する職能資格制度の考え方が一般的でした。一方のジョブグレード制度では、スペシャリストの育成を前提するなど、従業員の個性や能力に対して教育を変えます。このように転職をしなくても、自身に合ったキャリア形成を育てられる環境を整えることで従業員の満足度も高まり、能力も伸びます。
従業員のエンプロイアビリティを高めようと思った際に企業が真っ先に考えなければならないのは、従業員にスキルや能力向上の必要性に関する「気づき」を与えることです。その上で、リーダーの経験を積ませるなど、実際に従業員自身が能力開発をできる機会を与えることが大切です。そのためには、従来のオーソドックスな研修に留まらず、時代に合わせた制度や評価の最適化を図り、常に組織をアップデートしていかなければなりません。従業員個々のエンプロイアビリティを高めることは、その一助となるでしょう。
近年エンプロイアビリティが注目を集めている背景には、日本においても労働環境が大きく変化してきたことが挙げられます。高度成長期以降の日本を支えてきた終身雇用制度は崩壊し、「1つの企業で勤めあげること=美徳」という概念もなくなりつつあります。長期雇用制度の維持が困難となった今、ビジネスマンは他社でも通用するスキルを持ち合わせていなければなりません。企業側としても、半永久的な雇用ができない代わりに従業員対して、他社でも適用できるスキルや知識を習得できる機会を与えようと考えるようになりました。
新型コロナウイルス感染症における社会変化にみられるように、過去幾度となく雇用に対する不安が日本、そして世界中の人々を襲いました。また、昨今は業務のIOT化や副業可能な企業が増えるなど、働き方や業務の進め方が変わってきました。このような時代において、エンプロイアビリティが高い人ほど、リストラなどで辞めさせられることも少なく、仮にリストラにあったとしてもすぐに転職が決まると考えられます。エンプロイアビリティが高い人は、終身雇用の崩壊や雇用の不安にさらされることが少なく、自分らしく働ける環境を手に入れる割合が高まるでしょう。
昨今、エンプロイアビリティを人事評価にとりいれようとする企業も増えてきました。ただし、エンプロイアビリティは職務や業務内容ごとに重要視する項目は異なっており、人事評価の全てとするのは難しいと言えるでしょう。とくにエンプロイアビリティの能力要素としてあげられる「協調性」「積極性」などの職務遂行では、明確な基準はありません。まずは、既存のMBOや360度評価システムをベースに不足している部分を補うような仕組みからはじめてみると良いでしょう。このエンプロイアビリティを採用することは、挫折しても立ち上がるスキルである「レジリエンス」を高めることにも繋がると言われています。
エンプロイアビリティを人事評価にいれる上で重要なポイントがあります。それは、各業種や職種の内容ごとに評価軸を曖昧にしないことです。一般的な企業の場合は、一般社員・中間管理職・経営幹部(役員など)の3つのグループに分類でき、それぞれのグループに属する人材に求められる能力は異なります。グループごとに明確な人事評価を設定して、しっかりと評価ポイントを明記することで評価に曖昧性がなくなり納得感のあるものになるでしょう。従業員のエンプロイアビリティの向上を支援する企業であることを打ち出すことは、魅力ある企業という印象が高まり、優秀な人材が集まることにも繋がります。
エンプロイアビリティが高い社員は、総じて労働意欲が高い傾向にあります。優秀な人材は、場合によってはヘッドハンティングや転職といった機会に晒されるかもしれません。しかし、エンプロイアビリティが高い社員がいることは、個人の能力に留まらず、他の社員の業務パフォーマンスを向上させることがわかってきました。このように企業が従業員のエンプロイアビリティを高めることは、ひいては企業の業績アップにつながります。そのためにも企業は、従業員に対して積極的に学習の機会を提供するなど、個々の自主的な取り組みを支援する姿勢を持つことが重要です。
従業員一人ひとりが目標を持って日々の業務の中でエンプロイアビリティの向上を目指すことができれば、組織全体としてのパフォーマンス向上が期待できます。スポーツでも言われることですが、どんなに有能な監督がいて頭脳的な作戦で戦ったとしても、個の力がなくしては勝つことはできません。企業においても雇用される能力であるエンプロイアビリティを評価して、従業員の能力を高めることが大切です。そのためのエンプロイアビリティを伸ばす能力開発や学習への投資を怠ってはいけません。このような取り組みを続けることで、最終的に雇用する側である企業にとってプラスの効果が生まれるのです。
外的エンプロイアビリティが向上してしまうと、企業にいる優秀な人材が流出する懸念も出てきます。しかし、流出を心配して人材育成を怠るのは本末転倒であり、企業としての本質を見失いかねません。優秀な人材が留まりたくなるような、魅力的な企業であることが企業には求められるでしょう。「ここではやりたいことができない」という従業員には新規事業の機会を与える、「残業や休暇が取りづらい」という声には就業規則の見直しを図るなど打つ手はあります。ただし、どんなに優れた制度を導入して改革を行ったとしても、能力のある優秀な人材が流出するリスクは残念ながらゼロにはなりません。
人材の流動化が加速化する現代では、ビジネスパーソンにとってエンプロイアビリティは重要な能力になり、企業にとっての成長戦略にも欠かせない鍵となるでしょう。企業としても能力の高い人材をヘッドハンティングするだけでなく、エンプロイアビリティの向上を支援して優秀な人材を育てることが望まれます。エンプロイアビリティは、捉えどころのないものと思われがちですが、人材の流出防止や新しい人材の獲得に繋がり、企業全体としてのパフォーマンス向上が期待できます。これからますます注目されるエンプロイアビリティを取り入れ、それぞれの立場でしっかりと施策や向上を進めていきましょう。
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