育児・介護休業法の改正内容とは?【改正された内容や会社が取るべき対応などについて解説します】

記事更新日:2023年04月07日 初回公開日:2023年04月06日

グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報
時代の流れと共に、共働き世帯が増えてきています。働き方改革やワークライフバランスを重視する人も増えた為、仕事とプライベートを両立したいと考えている人も少なくありません。従来では、子育てや家族の介護が必要になった際には両立が簡単ではない為、離職してしまう人が少なくありませんでした。しかし日本は少子高齢化により、労働人口が年々減少しています。離職をせずに、子育てや介護を両立させるため、1991年に育児休業法が制定されました。育児休業法は社会情勢の変化と共に、時代に合わせた改定が行われています。今回は育児・介護休業法について解説します。

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育児・介護休業法とは

仕事と家庭を両立できるようサポートするためにできた制度

育児・介護休業法とは、仕事と家庭を両立できるようサポートするために施行されました。育児・介護休業法が制定される以前は、育児か介護が必要になった時に仕事と両立が難しかった為、どちらかを選ばなければなりませんでした。しかし、ワークライフバランスが重視され、プライベートも大切にする人が増えてきていることから、企業でもサポート体制が構築されています。育児・介護休業法は、正社員に限らずパートやアルバイト・派遣社員でも取得をすることが可能です。企業で制度が整っていなくても、法律に基づいて取得することが出来ます。

育児休業制度とは

1歳未満の子供を持つ従業員の養育を目的とした休業制度

育児休業制度とは、1歳未満の子供を持つ従業員の養育を目的とした休業制度です。子育て中の従業員が対象となり、要件を満たしていれば雇用形態に関係なく取得することが出来ます。育児休業制度は、1歳未満の子ども1人に付き原則として1回の取得が認められていますが、保育園入園が難しい場合などは最長2年まで延長することも可能です。但し、入社から1年経っていない従業員や雇用終了が1年以内に決まっている従業員などは育児休業制度の対象外となることもある為、注意が必要です。

介護休業制度とは

要介護状態になった家族を介護する目的の休業制度

介護休業制度は、要介護状態になった家族を介護する目的の休業制度です。介護休業制度は、社会との繋がりや介護を行う従業員の収入を確保することを目的としています。期間は、対象となる家族1人に付き3回まで取得することが可能で、年間93日を介護休業として休むことが出来ます。要介護状態の家族が居る従業員が対象となり、育児休業制度と同様に雇用形態に縛りなどはありません。対象の家族は配偶や両親だけでなく、祖父母などの2親等までです。

2022年4月から2023年4月にかけて大幅に改正された

育児・介護休業法は、2022年4月から2023年4月にかけて大幅に改正されました。育児・介護休業法は、社会情勢や労働者の変化に合わせて状況に応じて内容が変更されています。2022年4月からは、男性に積極的に育児に参加してもらえる環境を作れるよう男性を対象とした育児休業制度の制定や、働き方改革の実現の為の改定が行われています。また、母親だけに負担が行き過ぎないよう、育児休業を分割して取ることが出来るようになるなど様々な工夫がされています。

育児・介護休業制度が改正された背景

男性従業員の育児休業取得率が伸び悩んでいるため

育児・介護休業制度が改正された背景には、男性従業員の育児休業取得率が伸び悩んでいる事が挙げられます。政府は、育児休業制度を男女問わず取得しやすい環境づくりを目指しています。しかし日本の男性従業員の取得率は極めて低く、2020年の育児休業取得率は12.65%で、厚生労働省の調べによると家事育児参加時間は1.23時間と低水準です。こういった事態は女性の職場復帰やキャリア形成などを阻む大きな原因になりかねません。

出産育児を機に離職する従業員が一定数いるため

育児・介護休業制度の改正は、出産や育児を機に離職する従業員が一定数いる為に行われました。待機児童問題が取りざたされているように、保育園に子どもを入園させ職場復帰したいと考えていても、入れる保育園が無ければ復職することは出来ません。出産や育児のタイミングで従業員が辞めてしまうことは、企業にとってもデメリットと言えます。育児休業制度を元に職場復帰しやすい環境を作ることによって、従業員の離職を防ぐことが出来ます。

少子化対策に歯止めをかけるため

少子化対策に歯止めをかける為に、育児・介護休業制度は改正されました。制度改正前は今よりももっと復職を行う環境の整備が出来ておらず、子どもを産むとキャリアが続いて行かない状態になっていました。専業主婦ではなく共働きが多い昨今では、キャリアを大切にしたいと考えている女性は、子どもを産まない選択肢を取らざるを得ない場合も少なくありません。二者択一の選択肢を選ばざるを得ない環境を改善する為に、社会情勢に合わせて育児休業制度を活用できる様改正が行われています。

2022年4月から実施されている内容

個人の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置の義務化

2022年4月から、個人の制度周知や休業取得意向確認・雇用環境整備措置の義務化が実施されています。企業でいくら育児・介護休業の制度構築を行っていても、該当する従業員が活用出来ていなければ意味がありません。しっかりと活用してもらう為に、2022年4月より妊娠や出産を連絡してきた従業員に対して個別周知と休業取得の意向確認が義務付けられました。従業員が育児休業を取得しやすいような、職場環境を整備することも大切です。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和も、2022年4月から実施されている内容です。改定が行われる前は、有期雇用者が取得するには継続期間が1年以上あり、子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約終了が決まっていない場合に対象とされていました。改正が行われた後は、継続雇用1年以上の要件は無くなり子どもが1歳6ヶ月になるまで契約満了になる事が無い場合、休業制度の対象に変更されました。しかし改正後も入社後1年に達していない場合や、所定労働が1週間に2日以下の場合は対象から外れています。

2022年10月から実施されている内容

出生時育児休業の創設

2022年10月からは、出生時育児休業の創設が実施されています。出生時育児休業とは産後パパ育休とも呼ばれており、従来の育児休業とは別に子どもの出生後に取得できる柔軟性を持った休業制度です。子どもが生まれてから8週間以内であれば、4週間(28日)まで利用する事が出来、申請時に申し出ておけば2回に分けて取得することも出来ます。産後パパ育休(出生時育児休業)も育児休業中と同様に、休業開始時賃金日額の67%を出生時育児休業給付金として給付されます。

育児休業の分割取得

育児休業の分割取得も、2022年10月から実施されています。改正前は、特別な事情がない限り育児休業を分割して取得することは出来ませんでした。しかし22年10月の改正によって、特別な事情がない場合でも育児休業を分割して取得することが可能になりました。育児休業の分割取得は、出生時育児休業とは異なり取得時に2回に分けて取得することを申告する必要はありません。改正前も要件が揃っていれば分割で取得することは出来ましたが、時期関係なく分割して取得出来ることで従業員が柔軟に選択することが出来るようになりました。

2023年4月から実施されている内容

育児休業取得状況の公表の義務化

2023年4月からは、育児休業取得状況の公表が義務化されます。この改正は、従業員数が1000人を超える企業が対象となります。該当の企業は、直前の事業年度の「男性の育児休業等の取得率」「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を誰でも閲覧出来る様、ホームページなどに公表しなければなりません。4月の改定では従業員数が1000人を超える企業のみですが、今後従業員数が500人超・100人超と対象が広がる予定の為、他人事と思わずしっかりと把握しておく必要があります。

育児・介護休業法の改正で会社が取るべき対応

就業規則や労使協定を見直す

育児・介護休業法の改正により、企業が取るべき対応は、就業規則や労使協定の見直しです。改正により、有期雇用者の育児・介護休業取得の条件緩和や男性版育休の新設、育児休業の分割所得を記載する必要があります。また就業規則や労使協定を新たに見直し、変更した際には必ず従業員に周知するようにしましょう。労働基準監督署へ届け出が必要な場合もある為、注意が必要です。就業規則の見直しは抜け漏れがあると指導や勧告の対象となってしまう為、早いうちから準備を行っておきましょう。

会社役員や人事部、従業員との認識を合わせる

育児・介護休業法の改正に伴い、会社役員や人事部・従業員との認識を合わせておきましょう。従業員が気負うことなく育児・介護休業制度を活用するためには、周りの人の協力が欠かせません。制度として整備されてはいても、周りの理解がないと復職した際に働き辛いと感じてしまい離職に繋がってしまうことも考えられます。きちんと制度として育児・介護休業法を導入しているのであれば、経営陣や取得予定の従業員と同じ部署にいるメンバーなどの理解が必要です。企業として認識を合わせておくことで、従業員が働きやすい環境づくりに繋がります。

正確な就業管理や育児休暇取得日数を把握する

正確な就業管理や育児休暇取得日数の把握も、育児・介護休業法の改正に伴い企業が取るべき対応です。育児・介護休業は雇用形態に関わらず、所定労働時間を元に日単位や時間単位で取得することが出来ます。所定労働時間が8時間の場合は問題ありませんが、7.5時間など端数がある場合には1時間単位で繰り上げて計算します。日数単位で取得する場合は、管理が問題なく行えますが時間単位で取得する場合などはしっかりと残数を把握することが重要です。事前に従業員に時間単位で取得する場合などを説明しておき、スムーズに運用しましょう。

育児・介護休業法を違反した場合の会社への処分

違反企業の社名公表

育児・介護休業法に違反した際、企業への処分として違反企業の社名を公表されます。育児休業制度は、従業員から取得したいと申し入れがあった場合、企業側は必ず取得させなければなりません。法律で決まっていることなので、従業員の申し入れを却下した際には法律違反となり、厚生労働大臣から是正勧告が入ります。その是正勧告に従えば問題ありませんが、是正勧告にも背いた場合には厚生労働大臣が企業名を公表できる権限を持っています。育児休業法に違反し、企業名が公表されてしまうと社会的信頼が失墜してしまう恐れもある為、十分注意しましょう。

過料の発生

育児・介護休業法に違反した場合には、企業へ過料が発生することがあります。育児・介護休業法は、厚生労働大臣や厚生労働大臣の委任を受けている都道府県労働局長が施行内容に対し必要があると認めた場合、事業主に報告を求めることが出来ます。求められた報告に対して、事業主が報告を行わなかったり、嘘の報告を行ったりした場合には過料が求められることもあります。過料は20万以下の為軽く考えている企業もあるかもしれません。しかし社名公表と同様に、育児・介護休業法での過料は企業イメージに大きく影響します。

まとめ

育児・介護休業法の改正内容を理解し適切な対応を取ろう

育児・介護休業法の改正内容などについて解説しました。育児・介護休業法は雇用形態に関係なく、取得することが出来ます。育休や介護休暇は従業員に取得出来る権利がある為、制度利用により不当な扱い(減給や解雇など)をすることは出来ません。そのような対応を取った場合、企業名公表や過料が科せられ企業としてのイメージダウンにも繋がります。改正内容を就業規則に反映することは大変ですが、制度を手厚くすることによって企業のイメージ向上や従業員の意欲向上にも繋がる為、企業としてのメリットも多くあります。育児・介護休業法の改正内容を理解し適切な対応を行っておきましょう。

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