裁量労働制とは【メリット・デメリットを交えてお伝えします】

記事更新日:2022年11月10日 初回公開日:2022年11月10日

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働き方改革の推進や少子高齢化に伴う労働力不足から業務効率化が求められている今、裁量労働制が注目されています。裁量労働制は勤務時間や業務の時間配分を個人の裁量に任せる働き方です。裁量労働制には魅力的な面がある反面、デメリットもあります。また導入には複雑なルールがあり注意が必要です。ここではメリット、デメリットや他の制度との違いを具体的にお話します。そして裁量労働制を導入する際に準備が必要な事柄や注意すべき点を確認します。裁量労働制を社内で上手に活用することで、業務効率化の推進や有利な採用活動につなげていきましょう。

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裁量労働制とは

労働者の裁量によって労働時間が決められる制度

裁量労働制とは、労働者の裁量によって労働時間が決められる労働制度です。労使協定により、あらかじめ一定の時間勤務したものとみなして賃金が支払われます。労働時間と成果や業績が必ずしも連動しない職種において適用されます。日本では裁量労働制を実施する場合には、労使協定を締結する必要があります。また労働時間規制の適用も排除されません。裁量労働制は業務の性質上、それを進める方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある場合に導入することができます。

みなし労働時間を基準とする

裁量労働制は、みなし労働時間を基準とする制度です。「1日8時間」などと労働時間が厳格に決められているのではなく、実際に働いた時間の長さとは関係無く契約した労働時間の分は働いたとみなされるため、労働時間が従業員に委ねられることになります。実際の労働時間と契約上のみなし労働時間に差があると、健全な企業活動を阻害する原因になります。また不当な長時間労働を生む原因にもなります。そのため、みなし労働時間は労使で話し合って決めなければなりません。

対象となる職種が定められている

裁量労働制は対象となる職種が定められています。裁量労働制の導入が可能な職種は、事業所や業務内容で細かく条件が定められていますので注意しましょう。導入可能な職種には2種類あり、1つは技術者や設計者、デザイン考案業務などの専門性が高い業務に導入できる専門業務型裁量労働制です。もう1つは企画や立案、調査や分析などを行う企画業務に限られる企画業務型裁量労働制です。業務時間や業務を行う方法、時間配分が大幅に個人の裁量に委ねる必要がある業務にのみ適用されているのです。

裁量労働制の対象となる職種

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、厚生労働省により適用可能な業務が定められており、19業務あります。新商品や新技術の研究開発、人文科学や自然科学の研究、情報処理システムの分析や設計、新聞や出版、放送などにおける記事の取材、編集業務などです。雇用者は事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することが可能です。対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合に、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度となっています。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は事業運営上の重要な決定が行なわれる事業場において、企画や立案、調査や分析を行なう職種に適用されます。具体的には経営企画や営業企画、人事労務担当などの主に本社や管理部門での業務です。仕事の成果はレポートや計画書の作成などが多く、時間単位での成果が見えにくいため、裁量労働の対象となっています。専門業務型のように対象業務が限定されてはいませんが、どの事業場でも導入できるわけではありません。企画、立案、調査、分析の業務であることに加え、業務の遂行方法や時期について大きな裁量が労働者に委ねることが求められます。

裁量労働制とフレックス制の違い

フレックス制ではみなし労働時間の設定がない

裁量労働制とフレックス制の違いは、裁量労働制はみなし時間労働制ですが、フレックスタイム制は変形労働時間制という点です。フレックスタイム制では月単位で総労働時間を定めて、その総労働時間内で働く時間を労働者が自由に決めて働くことができます。一方裁量労働制は、労使協定で定めた時間分は労働したものとみなすのです。1日8時間労働とみなすと決めたら、実際の労働時間がそれよりも多くても少なくても8時間働いたことになるのです。フレックス制ではみなし労働時間の設定はありません。

裁量労働制とみなし労働時間制の違い

みなし労働時間制は業務の専門性を問わない

裁量労働制は専門的な業務にのみ適用されますが、みなし労働時間制は業務の専門性を問わないという点が異なります。労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められており、これを超える時間を労働させる場合、時間外労働となるのが原則です。しかし月の前半と後半や季節など、時期によって差が大きいという職種があります。また、24時間をカバーする交替制勤務で、1日の勤務時間が8時間を超えることが必要不可欠な職種もあります。このような場合にみなし労働時間制を利用することで、当番制で1日14時間働き、翌日は休日にする、などの働き方が可能になります。

裁量労働制のメリット

人件費を予測しやすい

裁量労働制は、実際の労働時間に関わらず契約で定めた時間は労働したものとして給与を計算するため、人件費を予測しやすいというメリットがあります。給与計算の業務やコスト管理が容易になると、人事の業務が削減でき、業務効率の向上が期待できます。しかし裁量労働制を導入したからといって、残業代が全く発生しないわけではありません。労使で取り決めをした「みなし労働時間」が法定労働時間である8時間を超える場合には、その超えた時間については時間外割増賃金が発生します。また休日に関する規定や深夜業に関する規定は適用されますので注意が必要です。

生産性の向上が期待できる

裁量労働制は生産性の向上が期待できます。実労働時間に応じて給与を支払う場合には、働く時間が長ければ長いほど多くの給料をもらえますが、裁量労働制は労働時間にかかわらず支払われる給与は一定です。そのため、なるべく短時間で多くの業務をこなす方が時間に対する給与が高くなります。また時間に縛られない自由度の高い働き方なので、自分の生活スタイルに合わせて効率よく仕事ができるという魅力があります。従業員のモチベーションアップにつながり、企業側にとっても生産性の向上が期待できるというメリットがあります。

優秀な人材の獲得につながる

裁量労働制の導入は、優秀な人材の獲得につながります。裁量労働制では、従業員は会社が求める成果を挙げることが重要視されます。出退勤の時間の自由度が高く、従業員の能力と業務量によっては仕事を早く終わらせることも可能です。自分に合ったライフスタイルを構築しやすく、仕事とプライベートの両立をしやすいという魅力があります。また成果を挙げることや自分のスキルを上げることが求められるため、成長できる環境ともいえるでしょう。このような魅力的な働き方や環境を打ち出すことで、企業にとっては優秀な人材の獲得につながります。

裁量労働制のデメリット

導入にかかる負担が大きい

裁量労働制のデメリットとして、導入にかかる負担が大きいということが挙げられます。導入する際にまず、制度の対象とする業務の選定や業務遂行の手段や方法を明確に決める必要があります。そして労働時間としてみなす時間や対象となる従業員の健康を確保するための措置内容、さらに対象となる従業員の苦情を処理のために実施する措置内容なども定めなければなりません。これらを労使協定で決め、指定のフォーマットで所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要となるのです。

労働時間の管理が必要となる

裁量労働制では、一般とは異なる特別な労働時間の管理が必要となります。裁量労働制を導入すると従業員が自分の好きな方法で自由な時間働くことになるため、時間のみで管理することはできません。業務の難易度や作業量を適正に判断することが必要ですが、これが非常に難しいのです。みなし労働時間内に完了できないような仕事を任せることになり、意図せず長時間労働を押しつけてしまう可能性もあります。一方業務の成果が出ていないときは本当に業務を遂行しているのか疑わざるを得ないこともあります。

適切な評価をするのが難しい

裁量労働制は、適切な評価をするのが難しいというデメリットもあります。裁量労働制では労働時間ではなくその成果が求められます。しかし企業の評価システムが裁量労働制に対応できずに、正しい評価がされないということも少なくありません。裁量労働制を導入するにあたり、何を業務の成果とするのかを明確にする必要があります。また個々の業務における成果の報告の仕方や評価方法を、雇用者と従業員が契約時に確認することが重要となります。そして従業員にも評価の仕方が異なることを周知しましょう。

裁量労働制における注意点

36協定を締結しなければならない場合もある

裁量労働制においても、36協定を締結しなければならない場合があります。裁量労働制では、実際の労働時間とは関係なく一定の時間を働いたものとみなされますが、時間外労働や割増賃金が発生する場合があります。みなし労働時間が1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える場合や深夜労働を行った場合、休日労働を行った場合には、会社は36協定を締結する必要があります。そして割増賃金を支払わなければなりません。36協定の締結・届出をせずに労働者に時間外労働や休日労働をさせた場合、使用者には罰則が科される可能性があります。

残業時間は月間45時間が上限である

裁量労働制における残業時間は、月間45時間が上限です。36協定を結んでも残業時間が月間45時間、年間360時間を超える労働は違法となります。例えば1ヶ月の平均出勤日数が20日でみなし労働時間を10時間にした場合には、月の残業時間は40時間となり、36協定の月の残業上限時間はクリアします。しかし、年間の残業時間は480時間となるので、36協定の残業上限時間を超えてしまいます。みなし労働時間は一時的ではなく恒常的な勤務時間を決めるものなので、この場合は10時間のみなし労働時間は適正ではなくなるのです。

残業代が発生しないということではない

裁量労働制を導入すると、原則として残業の概念がなくなります。しかし残業代が発生しないということではありません。契約時のみなし労働時間が法定労働時間の8時間を超える契約では、超過した時間に対しての割増賃金の支払いが必要です。割増賃金の金額は、「1時間あたりの賃金×対象の労働時間数×割増率」という計算式によって算出されます。割増率は36協定において労使で合意したものが適用されますが、労働基準法が規定する基準をクリアするように気を付けましょう。

まとめ

裁量労働制においても労働基準法を遵守しましょう

裁量労働制においても労働基準法を遵守しましょう。裁量労働制を導入し労働時間を労働者の裁量に任せても、使用者は時間管理をしなくてはいけません。成果を求めすぎると長時間労働になる恐れがあるため、労働基準監督署への届け出や報告が義務付けられています。従業員が長時間労働にならないよう注意しながら、うまく活用することが大切です。働き方改革などで生産性向上への意識が高まっている今、裁量労働制にはいろいろなメリットがあります。個々の業務内容をしっかり理解した上で裁量労働制を導入し、生産性の高い組織をつくっていくのが良いのではないでしょうか。

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