保育士不足の解決策とは?園が取り組むべき採用・定着対策と国の支援制度を解説

記事更新日:2026年08月31日 初回公開日:2026年08月27日

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保育士の採用に苦労している、せっかく入職してもすぐに辞めてしまう、そんな悩みを抱えている方は少なくないでしょう。こども家庭庁の統計によると、2025年1月時点の有効求人倍率は全国平均3.78倍に達しており、全職種平均の約3倍という深刻な人手不足が続いています。本記事では保育士不足の背景と原因を整理したうえで、給与改善やICT導入、人材育成など今日から実践できる解決策をわかりやすく解説します。採用課題を感じている保育業界の方、園の運営に携わる方にとって、すぐに活用できる情報をまとめました。

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保育士不足の現状

有効求人倍率は3倍以上

保育士の有効求人倍率は3倍を超える高水準が全国平均で続いており、人手不足の深刻さを示す指標となっています。こども家庭庁の職業安定業務統計によれば、2025年1月時点の全国平均は3.78倍で、全職種平均の約1.2倍を大きく上回る数値でした。求職者1人に対しておよそ3件以上の求人がある計算となり、各園は人材の確保に苦労しています。少子化でも保育ニーズは高止まりしており、有効求人倍率の高さは保育業界の重要課題といえるでしょう。

待機児童問題が深刻な問題となる

保育士不足が社会にもたらす影響の中で、深刻な問題となっているのが待機児童問題です。待機児童とは、保育園への入所を希望しながら受け入れ枠の関係で入れず、待機している子どものこと。こども家庭庁のまとめでは、2025年4月1日時点の全国の待機児童数は2254人で、8年連続で減少しています。2017年のピーク時から約9割減った一方、都市部への偏在は続いており、保育士不足の解消なしに待機児童問題の根本的な改善はありません。

保育士が不足している背景

少子高齢化に伴う人材不足

保育士が不足している背景の一つに、少子高齢化に伴う人材不足があります。1995年以降、日本で働ける年齢の人口は減り続けており、保育業界に限らずどの産業でも人の確保が難しくなってきました。保育士を養成してきた短期大学が学生募集を停止するケースも増え、保育業界全体で戦力となる人材の確保がより難しくなっています。共働き家庭が増えたことで保育へのニーズは高いままである以上、限られた人材をどう保育の世界に引き込むか、採用戦略の見直しが急務です。

労働条件・環境悪化による離職者の増加

労働条件や環境の悪化が原因で離職する保育士が増えており、人手不足をさらに深刻にする一因となっています。仕事量の多さや給与への不満、職場での人間関係など、さまざまな悩みが積み重なって現場を離れる流れが起きています。厚生労働省の調査によると、保育士全体の離職率は約9.3%で、私立保育園では10.7%と高く、毎年およそ6万人が保育の現場を去っている計算です。働く環境を良くすることが、保育士不足を解消する土台といえるでしょう。

採用難易度が高い

保育士は、資格を取るまでのハードルが高く、他の職種と比べて採用が難しい仕事の一つです。試験は年に2回行われていますが、9科目すべてで6割以上の得点が必要なため、令和6年度の合格率は26.3%にとどまる水準でした。こども家庭庁の資料によると、資格保有者のうち実際に保育の現場で働く人は約4割にとどまり、残る約6割は別の仕事に就いている潜在保育士として存在しています。この層にどうアプローチするかが、採用難を打開するうえでの現実的な出発点になります。

保育士が不足する原因

給与・待遇への不満

給与・待遇への不満は、保育士が職場を離れる大きな理由の一つとして長く指摘されてきました。子どもの命を預かる大変な仕事にもかかわらず、賃金が責任や仕事量に見合わないと感じている人は少なくありません。厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査では、保育士の平均月給は26.6万円で、こども家庭庁が示す全産業平均の35.5万円と比べると約9万円低い水準です。2013年以降は処遇改善等加算制度で改善が進んでいるものの、賃金と仕事量のバランスに課題があるとの声もあります。

在業時間が長いことに対する不満の増加

保育士の残業が長くなりやすい背景には、保育以外にこなすべき業務が多いことがあります。行事の準備や連絡帳の記入、製作物の作成など、子どもと過ごす時間以外にもさまざまな業務が日々積み重なってきました。こうした業務の多くはサービス残業として処理されるケースも多く、厚生労働省の統計が示す月平均残業時間の約4時間が実態を反映していない可能性も指摘されています。まず自園の実態を正確に把握することが、残業削減に向けた最初の一歩になるでしょう。

希望休が難しく休めない

希望通りに休みが取りにくい勤務体制は、保育士が定着しにくい原因の一つです。保育園では土曜日も子どもを預かるところが多く、週休2日制でも土日を続けて休みにするのが難しい場合があります。人の手が足りない園では、急な休みが出ると他の保育士に負担がかかるため、体調が悪くても出勤せざるを得ない状況に陥ることがあります。休みを柔軟に取れる環境を整えることは、保育士の体調管理だけでなく、長く働き続けるための基盤となるでしょう。 

人間関係の問題

職場の人間関係は、保育士が退職を考えるきっかけになりやすい大きな問題として知られています。東京都福祉保健局の保育士実態調査では、退職した理由の第一位に職場の人間関係があげられていました。保育の現場では複数の担任が連携して保育を進めるため、保育に対する考え方や進め方の違いがすれ違いにつながることもあります。話し合いやすい雰囲気をつくる仕組みを整えることが、保育士の定着と人手不足の改善につながるでしょう。

保護者対応などの心身の健康への負担

保護者対応などによる心身への負担も、保育士が仕事を続けにくくなる原因としてあげられます。子どもの命を預かる以上、何か事故が起きないように常に気を配り続けなければならない、緊張感のある仕事です。厚生労働省の調査では、保育の仕事に就くのをためらう理由の第一位に、責任の重さや事故への不安があげられていました。保護者からのクレームや無理な要望への対応が加わると、保育士の心身への負荷はさらに大きくなります。

保育士不足に対する解決策

給与や福利厚生を充実させる

給与や福利厚生を充実させることで、保育士が安心して長く働き続けられる職場に近づきます。国の処遇改善等加算制度を活用すると、勤続年数や役職に応じた加算を給与に直接反映させることができます。制度には複数の種類があり、経験年数に応じた基礎的な加算から、副主任や専門リーダーを対象とした上乗せ加算まで段階的に設計されています。2024年度の補正予算では保育士の人件費を10.7%引き上げる処遇改善も決定しており、まずは自園でどの制度が活用できるかを確認するところから始めましょう。

残業時間の長さを緩和する

残業時間の長さを緩和するには、まず日々の業務のどこに時間がかかっているかを把握しましょう。行事の規模を小さくしたり、連絡帳や日誌などの書類をテンプレート化したりするだけで、保育士一人ひとりにかかる仕事の量は減ります。チームで業務を分け合う体制を整えると、特定の人だけに負担が偏りにくくなり、残業が起きにくい環境に変わっていくでしょう。残業が減ると保育士に心身の余裕が生まれ、仕事への意欲が保ちやすくなるとともに、定着率の改善にもつながります。

風通しの良い職場環境作り

風通しの良い職場環境をつくることが、保育士の定着と離職防止につながります。定期的な面談や相談窓口を設けることで、若い保育士が悩みを一人で抱え込まずに話せる場が生まれるでしょう。こうした取り組みは、問題が深刻になる前に早期に把握できるという点でも、園全体のリスク管理として機能します。厚生労働省が行う保育士支援アドバイザーの巡回事業を利用すると、外部の専門家に園を訪問してもらい、現場が抱える課題を職員と一緒に考えることができます。内側だけで抱え込まず、外部の力を借りることも積極的に検討してみてください。

ICT導入による業務の自動化・効率化

ICT導入で業務を自動化・効率化することで、保育士がこれまで手作業に追われていた時間を大幅に減らせます。登降園の管理や延長保育料の計算、連絡帳や日誌のデジタル化など、日々の事務仕事の多くをシステムに任せることが可能になります。保護者との連絡もメールやアプリを使えばスムーズになり、急な体調不良のときも素早く対応できる体制が整います。書類仕事の時間が減れば保育士に余裕が生まれ、子どもに向き合う本来の保育により集中できる環境に近づくでしょう。

保育士人材を育成する際のポイント

人材育成を通じて働きやすい環境を作る

人材育成を地道に積み重ねることが、保育士に長く働いてもらえる職場をつくる基本になります。新人が現場に慣れるための研修や、中堅やベテランが保育の質を高める学びの場を設けることで、保育士一人ひとりが長く働き続ける理由を見つけやすくなります。特に入職後3年以内の離職率が高い保育業界では、新人へのフォロー体制の充実が定着率に直結します。キャリアパスを明確にすると先の見通しが立ちやすくなり、今の職場で頑張ろうという意欲にもつながるでしょう。採用と定着の両方に効く取り組みとして、人材育成への投資は後回しにしないことが重要です。

園内でのOJTを活用した育成を行う

園内でOJTを活用するのも、人材を育成する際のポイントです。先輩保育士とペアで動く体制を整えると、日々の保育の中で技術や考え方が伝わり、新人が一人で不安を抱え込まずに仕事を続けやすくなります。口頭だけで伝える属人的な指導では知識が引き継がれにくいため、やり方を記録として残す仕組みをあわせて整えることが大切です。経験を積んだ保育士のノウハウが園全体に広がることで、保育士のスキルが底上げされていくでしょう。こうした積み重ねが、研修費用をかけずに職場の底力を高める現実的な方法です。

ワークライフバランスを両立させる

ワークライフバランスを両立させることで、保育士が家庭の事情に関わらず長く働き続けられる職場をつくれます。短時間勤務制度を設けたり、育休から戻りやすい体制を整えたりするだけで、出産や育児を経ても仕事を無理なく続けやすくなります。シフトを工夫して柔軟に組めるようにすることで、それぞれの保育士が生活に合わせた働き方を選びやすくなるでしょう。ライフステージが変わっても働き続けられる環境をつくることが、保育士の定着と人手不足の解消につながります。

まとめ

保育士への待遇を良好にして保育士不足を防ごう

保育士に長く働き続けてもらうために、今の職場で何ができるでしょうか。給与を上げるだけでなく、残業、人間関係、育てる仕組みといった複数の面を整えていくことが、保育士が定着する職場をつくる道筋となります。本記事で紹介した取り組みの多くは、保育士が安心して働ける環境をつくるためのものであり、特別な予算や制度がなくても今日から始められます。まずは一つ、自分の園に合ったものを選んで動き出すことが、保育士不足の改善につながっていくことになる可能性があるかもしれません。

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