給与体系とは?3つの種類や見直しの手順等労働5原則まで徹底解説

記事更新日:2026年07月03日 初回公開日:2026年07月01日

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社員から給与への不満が出ているなら、給与体系を見直すサインです。基本給や手当の決め方が見えないと、社員は評価とのつながりを感じにくくなり、不公平感が広がります。また、法改正や組織変更に合わない制度を使い続けると、最低賃金割れや残業代の未払いを招くおそれもあります。また、説明不足のまま給与が下がる制度変更を進めると、社員の反発や労務トラブルにつながるでしょう。本記事では給与の決まり方を整理し、自社に合う制度へ見直す手順を解説します。本記事を参考に、経営陣や従業員から納得を得られる給与体系を構築しましょう。

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給与体系とは

基本給や各種手当や支給基準をまとめたもの

給与体系とは、従業員に支払う給与の中身と、金額を決める基準をまとめたものです。貴社では、給与の決まり方を社員に説明できるでしょうか。給与は、毎月決まって支払われる基本給に加えて、役職手当や通勤手当、家族手当など各種手当が含まれます。給与体系では、基本給をどのように決めるのか、手当をどの条件で支給するのかを整理します。基準があいまいなままだと、従業員が不公平感や不信感を抱くでしょう。そのため、給与の考え方を明文化し、誰が見ても分かりやすい形に整えることが大切です。

給与体系の種類

基準内賃金

仕事給型

基準内賃金は残業代などの割増賃金を計算するときの基礎にもなるため、どのような基準で賃金を決めるのかが重要です。その賃金の決め方のひとつに、仕事給型があります。仕事給型とは、担当する仕事の内容や求められる能力に合わせて給与を決める考え方といえるでしょう。仕事の難しさ、責任の重さ、スキルや知識などを給与に反映しやすい特徴があります。そのため、公平性や納得感を高めやすく、専門性が高い職種や成果を数字で確認しやすい企業に向いています。一方で、仕事内容がはっきり決まっていないと評価が難しく、配置転換がしにくい点には注意が必要です。

属人給型

属人給型とは年齢や勤続年数、学歴など、従業員本人に関する要素をもとに給与を決める考え方です。日本企業でかつて広く採用されてきた給与体系で、勤続年数に応じて給与が上がりやすいのが特徴です。従業員にとっては、安定的に昇給が期待でき、将来の収入を見通しやすい点がメリットといえるでしょう。一方で、実際の仕事内容や成果にかかわらず給与が上がる場合があり、従業員間で不公平感が生じることがあります。また、勤続年数の長い従業員が増えるほど、人件費も上がりやすくなります。そのため、近年では仕事給と組み合わせたり、職能給や役割給を手厚くしたりして、バランスを取る企業も増えています。

総合給型

総合給型とは、仕事給と属人給を組み合わせて給与を決める考え方です。担当する業務の内容だけでなく、年齢や勤続年数、経験、能力なども考慮します。仕事への評価と、従業員の安定した生活への配慮を両立しやすい点がメリットといえるでしょう。職務内容を細かく分けにくい中小企業でも採用しやすい方法です。一方で、複数の基準を使うため、制度が複雑になりやすい点には注意が必要です。基準が多すぎると従業員に説明しにくくなるため、評価項目や給与の決定方法を分かりやすく設計することが大切です。

基準外賃金

基準外賃金とは、所定労働時間の対価とは別に、勤務実態や個人の事情に応じて支払われる賃金です。家族手当や通勤手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金などが代表例です。これらは、残業代などの割増賃金を計算するとき、基礎となる賃金から除外できる場合があります。ただし、手当の名称だけで判断できるわけではありません。たとえば、住宅手当を全員に一律で支給する場合は計算に含め、家賃などの住宅費に応じて支給する場合は除外できます。また、最低賃金を確認するときは通勤手当や家族手当、時間外割増賃金など、対象から除外される賃金を含めずに計算します。

給与体系を見直すべきタイミング

法改正時

法改正は、給与体系を見直すタイミングのひとつです。労働基準法や労働契約法など、賃金や労働条件に関わる法律が変わった場合は、自社の給与体系が新しいルールに合っているか確認しましょう。法律に合わない給与体系のまま運用すると、コンプライアンス上の問題につながるおそれがあります。合わせて、毎年10月ごろに改定される最低賃金や、高年齢雇用継続給付の変更など、給与設計に影響する制度変更も確認が必要です。法改正への対応は見直しの理由が明確なため、従業員にも変更の必要性を伝えやすくなります。これを機に、基本給や手当の支給基準に不備がないかも見直しましょう。

組織の変更時

給与体系を見直すべきタイミングとして、組織再編などの変更があったときがあげられます。貴社の給与体系は、現在の役割や仕事内容に合っているでしょうか。組織再編や経営陣の交代、新事業の立ち上げによって、社員に求める役割や仕事内容が変わることがあります。等級制度や評価制度の刷新と合わせて見直すと、役割や成果を給与に反映しやすくなるでしょう。また、採用競争が激しかったり離職率が高かったりする場合、給与や報酬の見直しが有効な対策となることがあります。変更する際は、従業員が不安を感じないよう、再編の数か月前から説明の場を設けましょう。

創業周年の節目

創業50年や100年、従業員数が50人に達したときなど、会社の節目も給与体系を見直すタイミングです。貴社の給与体系は、会社の成長に合わせて更新されているでしょうか。節目に合わせた見直しは、制度変更の理由を従業員に説明しやすく、納得感を得やすい点が特徴です。会社の規模が大きくなると、創業当初に作った給与体系では、現在の組織に合わなくなることがあります。たとえば、役職や職種が増えると、基本給や手当の基準をより明確にする必要があるでしょう。節目を機に給与体系を見直せば、会社の成長に合わせた制度へ移行しやすくなります。

給与体系を見直す手順

現状と問題点を把握する

給与体系を見直すときは、まず現状と問題点を把握します。年齢別、役職別、職種別の賃金データや人件費の推移を見て、給与の支払いに偏りがないかを確認します。次に、離職率や採用状況を分析し、給与水準が人材の定着や採用にどの程度影響しているかを把握しましょう。また、社員や経営層への聞き取りを通じて、評価基準に対する不満や、今後育成したい人材像を明確にして、経営方針や人材戦略に合った給与体系を設定します。社員の不満と経営側の要望を分けて整理すると、見直しの方向性を決めやすくなります。賃金構造基本統計調査や民間調査と照らし合わせて、賃金水準が他社とくらべて適切かどうかを調べましょう。

給与体系を設定する

現状と問題点を把握したら、新しい給与体系を設定します。まずは、基本給をどのような考え方で決めるかを検討しましょう。自社の方針や評価したい人材像に合わせて、仕事給型、属人給型、総合給型などから選びます。そのうえで、賞与や手当、業務量、評価基準などの詳細を設計します。合わせて、総額人件費を増やすのか、今の人件費の範囲で配分を変えるのかも決めましょう。制度案を作成したら、モデル賃金表を作り、従業員ごとの給与変化や人件費をシミュレーションします。給与が下がる従業員がいる場合は、不利益変更にあたる可能性があるため、調整給や段階的な移行措置も検討しましょう。

社内に周知する

給与体系を変更する際は、数か月前から社内への周知を始めましょう。従業員が変更内容を理解し、準備する期間を設けるためです。説明会や資料、個別面談を通じて、見直しの目的や変更点、今後の流れを伝えます。給与が下がる従業員には、調整給などの経過措置も検討しましょう。改定内容は就業規則や給与規程に反映し、従業員が確認できる状態にします。就業規則や給与規程を変更するときは、労働組合または労働者の過半数代表者から意見を聴き、意見書を添えて労働基準監督署へ届け出ます。運用後も従業員の反応を確認し、状況に合わせて追加の説明や調整を行いましょう。

給与を計算する際の原則

通貨払いの原則

給与は、原則として通貨(日本円)で支払います。労働基準法では賃金の通貨払いが定められており、現物や商品券、外国通貨での支払いは、原則として認められていません。通貨払いは現金手渡しだけを指すものではありません。労働者本人の同意を得れば、銀行口座への振り込みもできます。2023年4月からは、労使協定を結び、本人の同意を得たうえで、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座へ支払うデジタル払いも選べるようになりました。また、労働協約などに定めがあれば、通勤手当を定期券で支給することがあります。退職手当は、本人の同意を得て、金融機関の小切手などで支払うことも認められています。

直接払いの原則

直接払いの原則により、会社は給与を労働者本人に直接支払います。銀行振込を使うときも、本人名義の口座へ振り込みます。配偶者や親など、本人以外の口座へ振り込むことは認められていません。たとえ本人の委任があっても、代理人や親権者、後見人に支払うことはできず、未成年者の給与も本人に支払います。一方で、本人へ届けるためだけに預かる使者への支払いは認められます。賃金債権が差し押さえられたときは、直接払いの例外として、差押命令で認められた金額を債権者に支払います。ただし、給与の全額を債権者へ渡すわけではありません。労働者の生活を守るため、差し押さえられる金額は原則として賃金の4分の1までです。

全額払いの原則

全額払いの原則により、会社は給与の一部を勝手に差し引かず、全額を支払います。そのため、会社の判断で給与の一部を支払わなかったり、備品代や損害金を天引きしたりすることは認められていません。一方で、所得税や社会保険料など、法令に基づく控除は給与から差し引けます。社宅の利用料や食事代、親睦会の会費、会社からの貸付金の返済分なども、労使協定があれば控除できます。また、欠勤した日や遅刻、早退した時間について、その分の賃金を支払わないことは、全額払いの原則に違反しません。

毎月一回以上払いの原則

給与は、少なくとも毎月1回は支払います。労働基準法では、賃金を毎月1回以上、決まった日に支払うことが定められています。そのため、月に一度支払う形だけでなく、月に複数回支払う形や、週ごと、日ごとに支払う形も認められます。一方で、2か月分をまとめて支払ったり、資金繰りを理由に支払日を遅らせたりすることはできません。支払日は「毎月25日」など、具体的に決めておきます。賞与など、毎月の給与とは性質が異なる賃金は、別の時期に支給できます。給与体系を作る際は、支払日と支払回数を明確にしておきましょう。

一定期日払いの原則

給与は、一定期日払いの原則にもとづき、あらかじめ決めた日に支払います。労働基準法では、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことが求められています。支払日は、毎月25日や月末など、日付を特定できる形にします。毎月第4金曜日のように月ごとに日付が変わる定め方は認められません。支払日が休日に重なるときは、前営業日に払うか翌営業日に払うかを、就業規則や給与規程で定めましょう。賞与や退職金など、毎月の給与とは性質が異なる賃金は、別の時期に支給できます。

給与体系の企業事例

ソニー株式会社

給与体系の企業事例として、ソニーグループのジョブグレード制度があげられます。ソニーでは、2015年度から年齢や勤続年数ではなく、社員が今担当している役割をもとに等級を決める制度を導入しました。役割に応じて等級や報酬を決めるため、若手でも大きな役割を担えば、それに見合う処遇を受けやすくなります。また、年功に縛られず、専門性の高い人材を評価しやすくなる点も特徴です。ただし、どの役割をどの等級に置くのか、昇格には何が求められるのかがあいまいだと、社員は処遇の差に納得しにくくなります。導入時は、役割ごとの基準を分かりやすく示すことが重要です。

まとめ

会社に合った給与体系を策定しよう

会社に合った給与体系を策定しましょう。給与体系は、基本給や手当の決め方を示すものです。会社がどの仕事を評価し、社員にどのように働いてほしいのかを伝える役割もあります。基準があいまいだと、社員は給与の決まり方に納得しにくく、不満を持ちやすくなります。法改正や組織再編、社員数の増加などをきっかけに、今の制度が会社の実情に合っているかを見直しましょう。給与が下がる社員がいるときは、理由を丁寧に説明し、調整給などの経過措置も検討します。就業規則や給与規程の変更手続きも進め、運用後は社員の反応を見ながら改善を続けましょう。

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