記事更新日:2019年05月15日 | 初回公開日:2017年09月27日
外国人採用・雇用私は東京に本部を置く広告代理店の地方支社に勤めている伊藤彩乃です。働き始めて5年目になります。本社とは違い地方では多くの部門の業務を1つの支社で執り行います。今年から新しく、かねてから希望していた国際業務部門のメンバーにも選ばれました。
今回、あるお客様からイベント運営の為の多言語化(翻訳)の仕事を受注しました。受注時の段階で既に納期までの日程がわずか10日間とかなりタイトであった為、多言語化する言語も5つに絞り、元の日本語内容も簡単な文章にして、翻訳者も社内で厳選しました。その後上位の対象者の方から翻訳内容と納期を開示し確認した上で業務ができるか否かの連絡を頂く手筈を整えました。
スケジュールと翻訳内容を考慮して、当社の納期締切日は予備日も含めてお客様へ納品する日の3日前とギリギリのスケジュールで組みました。その結果、各言語の担当者の方が作業に当てられる日数は締切日まで7日間ありました。実は私も1つの言語を担当しておりましたので、その作業日数は充分だったと思います。実際、私は他の業務もこなしながら翻訳を完成させるまでに1.5日しかかかりませんでしたし、他の言語を依頼していたネイティブ外国人数名も1日で納品してくれました。
そして順調に進んでいると思っていたその時に問題が起きたのです。2つの言語を併せて依頼していた1名の外国人のAさんから、当社の締切3時間前になって突然「他の仕事が忙しくてここまでしかできませんでした」と1つの言語だけ、それも中途半端に翻訳されたものだけが納品されたのです。しかも、私は翻訳者を考慮し過ぎて締切日時を夜の12時に設定していました。
実はAさんへ依頼を初めてした時から、私には少し違和感と不安感があったのです。最初の依頼時も依頼後早い段階で「○○を□□に変更できますか?」「追加で○○も対応できますか?」と連絡した時も、返事はいつも同じ「OK!」と笑顔の顔文字だけだったのです。 その他の連絡は一切なく“業務の内容を確認している感”や“業務をしている現在進行中感”を私自身は感じることができなかった為、違和感と不安感があったのです。
そして、その予感は的中してしまいました。
そんな不安感を感じていたのにも関わらず、私は「OK!」という言葉を信じて、締切日にAさんから連絡が来るまで自分から連絡をしませんでした。その理由としては、「OK!」と言った人に対して“本当にできるかどうか?”“進捗はどうなっているのか?”などを聞くことは“しつこい”ように感じましたし、何よりも日本のビジネスシーンにおいてこの状況下でそこまで聞くことは“失礼にあたる”と思い込んでいたのです。
その後の経過をご紹介しますと…
私は初めにお礼と労いの言葉と共に、もう1日締切日を延長したらできるかどうかの打診をしました。しかし、Aさんからは“もっと早くに原稿を送って貰えていたらできたかもしれないけれど、他の仕事が忙しくてできない”という返事だけでした。
ここで2つ明らかにしておきたい事があります。まず1つ目は、業務依頼承諾時に原稿と納期を確認してもらっていること。2つ目はここまでの間、Aさんは一切の謝罪の言葉を述べていないことです。
それはさておき、私はAさんへこれ以上の依頼はもはや不可能と諦め、早急にプランBを計画&実行しなければならないと思い上司へ連絡を入れました。と同時にAさんへ、そんな忙しい中対応してもらったお礼と併せて、締切日までの期間その業務ができるか否かは本人にしか分からないことなので、なるべく早くできないと分かった時点で一報欲しかった旨と、結局こんなギリギリの連絡で非常に困っていることを伝えました。この私の変な使命感と無駄なプライドで送った連絡をきっかけにAさんは憤慨しました。
その後Aさんがどう怒っていたかは一先ず置いておきます。怒りの感情というのはどこまでも果てしないということだけお伝えしておきましょう。 整理しておくべき事はたったの2つだけです。まず1つ目は、時系列にどれだけ説明しようが道理が通じないこと。そして2つ目は、Aさんにとっては謝罪するべきことは何も無いと思っていること。
どうしてか分かりますか?
きっと今この文章を読んでいる多くの日本人の方の頭の中は“????????”でしょうね。
その答えは、“依頼された時はできると思った”からなのです。そして、期日までにできなかったらどうなるか?を予め説明していなかった為に“今更困るなど言われてもこちらのほうが困るよ(または怒りの感情)”という気持ちになるので悪かったという気持ちが無いのです。
日本人の感覚からすると驚きの内容になりますが、こういう感覚の方もいるということを念頭に置いておきましょう。一概には言えませんが、南に行けば行くほど時間のルーズ感覚や約束を守ることの重要度が低くなるようです。そしてこのケーススタディの舞台は日本のビジネスシーンですので、結果的にはどちら側にも非は有り50:50です。グローバル人材というのはその土地土地の文化に適応した能力が求められるのですから、いつまでも自国の文化や感覚を押し通す人はグローバル人材にはなれません。
そして外国人労働者の方へ仕事の依頼する時には、この3つの点に注意しましょう。
いかがでしたか?もしかしたら外国人労働者だけに限られた話でもないですよね。
新人教育にも併せて、事前にどんな点に注意して何を説明したら良いのか?少しでも役に立てたらと思います。
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この記事を書いた人
佐多 由梨(さた ゆり)
1981年生まれ。神奈川県出身。日本企業にて総務・人事部門で10年ほど勤務後、現在のグローバル企業の同部門マネージャーとして働いている。人事・教育担当としての経験と学生時代から活動していた国際交流や言語学習で培った経験を活かして、これからのグローバル社会において企業側が心得ておくことや、どのように人材開発したら良いかのポイントを発信している。
HP:Spectrum
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