記事更新日:2026年06月01日 | 初回公開日:2026年05月27日
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労働三法とは、労働者を守るために制定された法律のことです。「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」のことで、労働者が企業側と対等な立場で渡り合えるよう保護する法律です。スポーツに例えるならば、公正な試合を行うためのルールブックのような存在といえるでしょう。3つの法律がきちんと機能することで、過酷な労働や不当な扱いが防がれます。労働者の権利を守ることはもちろん、企業が社会で信頼されて活動を続けるためにも、3つのルールの徹底は欠かせません。
労働三法のうち労働基準法は、最低の労働条件を定めた法律です。賃金、労働時間、休憩、休日、有給休暇など、働くうえで最低限守らなければならない基準があり、これを下回る条件は認められません。たとえば、法定労働時間は「1日8時間・週40時間」と定められており、これを超える場合は36協定の締結と割増賃金の支払いが必要です。基準を下回る労働条件は、たとえ従業員の合意があっても法律上無効となるため、企業は最新のルールを把握しておく必要があります。
労働組合法は、労働組合による話し合いを保障する法律です。一人では立場の弱い労働者が、組合を結成して会社と対等に渡り合えるようバックアップしてくれる法律です。会社側が正当な理由なく団体交渉を拒否したり、組合員であることを理由に解雇などの嫌がらせをすることは、法律で禁じられており許されません。組合と会社の間で合意した労働協約は、会社のルールブックである就業規則よりも強い効力を持つ点も重要なポイントといえるでしょう。社内組合だけでなく、社外の合同労組(ユニオン)も法律の対象となるため、企業側も慎重な対応が求められます。
労働関係調整法は、労働争議を未然に防ぐとともに解決を目指すことを規定した法律です。話し合いが決裂してストライキなどに至る際、公平な第三者のレフェリーのような役割が必要です。具体的には、話し合いをとりもつ「あっせん」、解決案を提示する「調停」、より強い拘束力を持つ「仲裁」という3つの調整方法が用意されています。ここで理解しておきたいのは、この法律の目的は決して争議を禁止することではありません。あくまで予防と早期解決によって、経済や社会の混乱を防ぐことが目的です。トラブルの際に、どのような手順で解決が図られるかを知っておくことは、人事担当者にとってのリスクヘッジとなります。
労働三法と労働三権との違いは、労働三権とは労働者が集団となることで交渉できることを保証する権利のことです。日本国憲法第28条で保障された基本的人権であり、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つを指します。労働者が、会社と戦うために与えられた権利そのものといえるでしょう。対して労働三法は、その権利を具体的に実現・運用するためのルールに当たります。「権利」という理念があり、それを守るための手段として「法律」が存在するという主従関係にあります。
労働三権の一つに団結権がありますが、これは労働組合を結成する権利です。労働者が一人で会社と交渉するのは困難ですが、集団になれば対等な力関係を築くことができます。そのために労働組合を作ったり、加入する自由を保障するのが団結権です。会社側は従業員が組合を作ろうとしたり加入したりすることを、一切妨害してはなりません。労働者が労働条件を維持・改善するための最初のステップであり、最も基本的権利といえるでしょう。
労働三権の種類の一つに、団体交渉権があります。結成された労働組合が賃上げや労働時間の短縮などを求めて、会社側と話し合う権利です。会社側には「誠実交渉義務」があり、正当な理由なく交渉を拒否することはできません。単に話を聞くだけでなく誠意を持って対応し、合意を目指す姿勢が求められます。団体交渉権により、労働者は使用者に対して一方的に条件を押し付けられることなく、話し合いのテーブルに着くことができます。
労働三権の種類の一つに、団体行動権がありますが、これは要求実現のために団体で行動する権利といえるでしょう。労働者は話し合いで解決しない場合、ストライキやビラ配りといった実力行使によって、会社に自分たちの要求を認めさせようとする権利があります。正当な争議行為であれば、刑事罰や損害賠償責任を問われない免責効果があります。労働者にとっての最後の切り札であり、交渉力を担保するための強力な手段として認められています。
労働基準法で知っておくべき主なものとして、労働条件の明示に関するルールがあります。会社が従業員を雇い入れる際には、賃金、労働時間、就業場所、業務内容などの主要な条件を労働条件通知書などで明示しなければなりません。特に2024年の改正以降、将来的な配置転換の可能性や業務変更の範囲についても明示が求められるようになりました。口約束での契約は「言った言わない」の水掛け論になりやすく、労使トラブルの最大の原因となります。契約期間や更新の有無、退職に関する事項も含め書面化して、トラブルを未然に防ぎましょう。
労働条件の明示に関するルールとして、賃金支払いの5原則があります。労働基準法第24条では、賃金は「通貨で」「直接本人に」「全額を」「毎月1回以上」「一定の期日を定めて」支払わなければならない、と定めています。たとえば、現物支給や本人以外の口座への振込み(本人の同意がある場合を除く)、勝手な天引きなどは原則として認められません。また、「毎月25日払い」のように日付を特定する必要があり、「第4金曜日」のように月によって変わる設定も認められません。これらは労働者が生活設計を立て、安定した生活を送るために不可欠なルールであり、厳格な運用が求められます。
労働組合法で知っておくべき主なものとして、不当労働行為に関するルールがあげられるでしょう。会社側が組合の力を弱めようとして行う妨害行為は、法律で固く禁じられています。組合員への解雇などの「不利益取扱い」や、正当な理由のない「団体交渉拒否」があげられます。また、組合運営に口出しする「支配介入」や、運営費を渡す「経費援助」などもこれに当たります。たとえば、上司が「組合に入ると出世に響くぞ」とほのめかすだけでも、支配介入とみなされる可能性があるでしょう。認定されると、原職復帰や謝罪などの命令が出され、企業イメージのダウンや慰謝料請求の可能性があります。
労働組合法で知っておくべき主なものとして、労働協約に関するルールがあげられます。労働組合と会社の間で合意した労働条件などを書面に記し、双方が署名・捺印したものを「労働協約」と呼びます。労働協約に定めた基準は、就業規則や個別の労働契約よりも優先されます。もし就業規則で「ボーナスなし」となっていても、協約で「支給する」と決まれば、会社は組合員に支払わなければなりません。人事担当者は就業規則だけでなく協約の中身も常に把握し、矛盾が生じないよう管理する必要があります。
労働関係調整法で知っておくべき主なルールとして、労働争議の解決手続を見ていきましょう。労使間の交渉で解決できない争いが発生した場合、労働委員会が調整を行うことになります。まず「あっせん」は、第三者が間に入って話し合いを促す手法で、解決案を受け入れるかどうかは任意です。次に「調停」は、公労使の三者による委員会が調停案を作成し、その受諾を勧告します。最も強力な「仲裁」は、提示された裁定に法的拘束力があり、当事者は拒否できません。トラブルが泥沼化する前に、どの手続きを利用すべきかを知っておくことが早期解決の鍵となります。
労働関係調整法で知っておくべき主なルールとして、争議行為の制限と予告義務があります。労働者にはストライキ権がありますが、無制限に認められるわけではありません。特に電気、ガス、水道、医療、運輸などの「公益事業」においては、ストライキ等を行う10日前までに、労働委員会などに予告する義務があります。これは、インフラ停止などによる国民生活への影響を防ぐためのルールです。予告を怠った場合の争議行為は違法となり、損害賠償や処罰の対象となる可能性があります。人事は自社が公益事業に該当するかを確認し、万が一の事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定しておきましょう。
労働三法に関して人事が意識しておくことに、法律に関する最低限の知識は持っておくことがあります。労働三法や関連法規は頻繁に改正されるため、常に最新情報をキャッチアップしましょう。たとえば、2026年の通常国会への提出が見送られた労働基準法改正案のように、法案の行方一つで現場の運用が大きく変わる可能性があります。知らないまま運用を続けると、意図せず法律違反を犯してしまうリスクがあります。条文を一言一句覚える必要はありませんが、何か起きた際にすぐ正しい情報にたどり着けるよう、法律の全体像だけは頭に入れておきましょう。
労働三法に関して人事が意識しておくこととして、違反した場合の罰則について理解することがあげられるでしょう。労働基準法違反には、懲役刑や罰金刑といった刑事罰が設けられています。たとえば、違法な長時間労働や賃金不払いには「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」などが科される可能性があります。さらに、労働基準監督署からの是正勧告を受けたり、悪質な場合は企業名が公表されます。単なる金銭的な損失にとどまらず、社会的信用の失墜、採用難、従業員の離職など、経営全体に深刻なダメージを与えることを認識しましょう。
労働三法に関して人事が意識しておくこととして、困った時の相談先を用意することがあげられます。労務トラブルは初期対応を誤ると泥沼化しやすく、解決までに多大な時間とコストを要します。社内の知識だけで判断せず、社会保険労務士や弁護士、労働基準監督署などの専門機関に相談できる体制を整えておきましょう。特に、労働組合からの団体交渉申し入れやメンタルヘルス不調者の対応、解雇などのデリケートな事案については専門家のアドバイスが不可欠です。日頃から信頼できる専門家とのネットワークが、いざという時の安心材料となります。
労働三法を適切に理解しましょう。労働基準法は「最低限のルール」、労働組合法は「交渉のルール」、労働関係調整法は「解決のルール」と整理できます。これらは労働者を守るためだけでなく、企業が法的リスクを回避し、従業員と信頼関係を築くための指針といえるでしょう。法改正や社会情勢の変化に柔軟に対応して労務管理を徹底することは、ブラック企業の評価を防ぎ、企業のブランド価値を高めることにも直結します。優秀な人材に選ばれる組織へと進化するために、これらの知識は欠かせない武器になります。
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