記事更新日:2022年05月24日 | 初回公開日:2022年05月23日
用語集 外国人採用・雇用 グローバル用語解説 人事・労務お役立ち情報JLPTとは外国人の日本語レベルを測るための検定試験であり、「日本語能力試験」とも呼ばれています。N1レベルからN5レベルまでの5段階が設定されており、N1は最も難易度が高く平均合格率は30%程度となっています。1年間に2回実施されているJLPTは海外でも受験することが可能であり、2019年の受験者は100万人以上にものぼりました。世界中で受験されている試験であるからこそ、その結果は日本語能力を証明するうえで大きな説得力を持つでしょう。
JLPTの取得結果を、求人への応募条件のひとつとしている企業もあります。特にN1レベルなどを有する外国人材は、日本語について非常に理解度が高いといえるでしょう。業務を行う際にも、高い日本語レベルを持っていることによって比較的スムーズなやり取りが可能となります。しかしJLPTはあくまで日本語能力を測るひとつの指標であり、N1レベルを取得していなくても問題なくコミュニケーションが取れる外国人材もいます。選考において日本語能力をある程度確認しておきたいのであれば、応募条件としてみるのもひとつの方法でしょう。
JLPTは、日本語の日常会話や読み書きのレベルを測定することができます。日本語の文字、語彙や文法から意味を読解し課題解決できることや、その知識を活かしてコミュニケーションをはかれるかを測定します。聴解・読解・言語知識の3つの要素から構成され、試験はマークシート形式で行われます。長文の文章作成や、実際の会話試験が行われるわけではないため、あくまで最低限の理解がある程度にとらえておきましょう。N1の所持者でも日本人と遜色ないレベルでコミュニケーションが取れるかは、人それぞれです。
JLPTはN1~N5の5つのレベルで正確な採点が行われています。N5~3は,基本的な日本語がある程度理解できるレベルです。N2以上で、日常で使われる日本語の理解度がより幅広く求められるレベルとなります。外国人社員を採用する際、日本語でのコミュニケーション力をはかる場合は、N2以上を目安として考えましょう。しかし、すべてのレベルで試験はマークシート方式であり、スピーキングテストは行われないため、日本語が流暢に喋れるとは限らないので注意が必要です。
N1の難易度は、JLPTの中では最も難易度が高いです。読解では、複雑な文章や抽象的な表現を理解できるかを確認します。聴解では、日常会話程度のスピードで、登場人物の関係や、詳細な内容を理解できるかを確認します。複雑な内容の評論や政治・経済記事などから長文で出題されるため、単純な日常会話レベル以上に、日本語の理解度が問われる内容です。日本人であっても油断して読み飛ばしているとうっかりミスしてしまうような内容ですので、N1を所持している外国人の日本語理解力はそれなりに高いといってよいでしょう。
日本語では、平仮名、カタカナ、漢字など多様な文字を使用します。その中でも、文章読解においては漢字を読む力が非常に重要です。実際の試験問題では、単純な読み方の問題などもありますが、正しい文章になるように近い意味の熟語4つの中から選択するといった問題があります。また、長文読解では、漢字にふりがなもふっていないため、漢字が読めないと非常に苦戦するでしょう。N1の所持者は、漢字もある程度読め、日常での文章の理解等は問題ないレベルと思ってよいでしょう。
N1認定の目安、および到達目標としては、幅広い場面で使用される日本語が理解できることです。政治・経済・法律・国際問題など抽象度が高く複雑な文章が理解でき、話の流れや詳細な表現意図を理解することができることが求められます。専門用語を用いた発表や討論などもできるレベルに達しているでしょう。N1レベルの学習時間は、およそ900~1200時間と言われています。独学での学習は人によっては非常に困難であるため、日本語学校に通って学習する外国人もいます。日本人の多い環境にいるかどうかで、習熟にかかる時間にかなり差が生まれやすいと言えるでしょう。
JLPT取得に必要な漢字は、N2で小学校6年間で習う漢字1000文字、N1では、中学3年間で習う漢字も含めおよそ2000字を知っている必要があります。語彙数に至っては、約10000語も必要です。普段から日本人と会話したり、文章を交わす機会のある外国人であれば習得は早いかもしれませんが、そうでない場合、語彙や漢字を覚えるのは非常に難航するでしょう。このように、試験合格には覚える量が非常に多いため、学習時間が非常に長くなるのも納得ですね。
JLPTN1レベルの合格率は全世界でおよそ30%です。日本人が受験しても、満点は取りづらいと言われています。日本語は、さまざまな文法や表現などがあり、非常に複雑な言語です。日本語としては正しくないが意味が通じるということや、二つの意味にとらえられる文章など、さまざまなケースがあります。N1レベルでは、ビジネスや口語表現などが入り混じったり、抽象度の高い評論文などを読解する問題が出題されます。正しく理解するには、日本語の知識だけでなくかなりの集中力が必要であるため、油断していると日本人でも間違えてしまうこともあるでしょう。
JLPTのN1レベルを所持している人材を採用する場合、日本語でのコミュニケーションがある程度スムーズにできるということは大きなメリットです。日常での日本語の読み書きや会話について理解度が高い人材であるため、全くコミュニケーションがままならないというケースはかなり軽減されるでしょう。合格率30%程度の資格に合格する人材であるため、学習力やポテンシャルは非常に優秀です。日本人と遜色ないレベルで完璧にコミュニケーションを取れるかは個人差がありますが、周囲がフォローすることで、日本語力も向上していくでしょう。
JLPTのN1を取得することで、医師や看護師などの国家資格を受験できるようになります。母国で医師の資格を所持していたり、実務経験があっても、日本で医師として働くには国家資格の受験が必要です。N2以上でなければ、国家試験を受験することもできません。そのため、国家資格の必要な職種で外国人採用をする場合には、N2以上の所有かつ日本での国家資格に合格していることを確認しましょう。また、国家資格では、的確に日本語を理解したり伝達する力も必要ですので、読み書きや会話に問題がないことも確認しておきましょう。
JLPTを採用に活かす場合、すべての職種でN1レベルが必要なわけではありません。日本で働く分にはN2レベルが目安となっています。クライアントとの調整や交渉といったやりとりがない業務であれば、N2レベルでも十分にこなせます。また、マニュアルのある業務や工場ラインなどの単純作業では、複雑なコミュニケーションを取る機会が少ないので、N3レベルでも問題ありません。すべての業種においてN1が絶対必要なわけではないため、選考基準に加えるかは企業判断になりますが、業種によっては外国人採用のハードルを下げることも検討可能です。
N1の所持者であっても、流暢に日本語を話せたり、文章を書けるとは限りません。採用時には書類だけで判断せず、面接でしっかりと会話をして判断しましょう。先述の通り、JLPTはマークシート形式で行われ、スピーキングや筆記試験はありません。実際に会話をしてみるカタコトであったり、少し違和感の感じる文章であるということがあります。N1の所持者だからといって、読み書きや会話に日本人と遜色ないレベルを求めてしまうとギャップが生じやすくなります。コミュニケーションの部分については、流暢ではないという前提で、寛大な心で迎えるようにしましょう。
ビジネスシーンにおいては、日本語は丁寧語や謙譲語といった形で変化します。N1の試験は、あくまで日常会話の理解度をはかるためのものであるため、ビジネスシーンにおけるマナーや日本語の変化などの知識があるとは限りません。上司やお客様に対して失礼な言葉遣いをしてしまうといったことも考えられるため、この点においても、ある程度周囲の理解を得たり、寛大に受け入れる必要があると言えます。そして、間違った言葉遣いは気づいたらその都度注意してあげるようにしましょう。
JLPTは、日本語の日常会話の理解度をはかるものであるため、業務の処理能力を表す資格ではありません。安易な判断で、外国人従業員が働きづらい環境を作ってしまうこともありますので、N1を持っているからといって仕事ができると安易に判断しないようにしましょう。業務の処理能力に関しては、日本人の社員と同じように、採用の場においては経歴からヒアリングをして判断しましょう。入社後にもしっかりと教育をしていくことでその人の能力を引き出せるようにしましょう。
N1は、多くの語彙・漢字の知識や、正しく読み書きできる力が必要です。多くの学習時間を費やしても、外国人にとって、N1に合格することは容易とは言えません。しかし、その難関を乗り越えた外国人は、非常に優秀な能力を持っていると言えるため、活躍できる人材となる可能性は十分に秘めています。日本語で円滑にコミュニケーションが取れることは非常に重要な判断材料ですが、指標のみにこだわった採用では、採用数に伸び悩んだり、入社後にギャップが出てしまうこともあります。慎重になりがちな観点ですが、N1という指標のみではなく、その人の全体的な能力を見極めて採用をしましょう。
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