派遣均等均衡方式とは【労使協定方式との違いやメリット・デメリットについて解説します】

記事更新日:2025年06月17日

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派遣社員を受け入れる際には、派遣先企業は雇用契約や契約期間のほかに待遇についても配慮を行う必要があります。待遇は、自社の正社員と同じ業務であれば同じ給与になるようにするひつようがあります。そこで使用されている方法が派遣先均等均衡方式です。本記事では、派遣先均等均衡方式について解説するだけではなく、同じように使用されている労使協定方式との違いや、派遣元企業と派遣先企業、派遣社員のそれぞれのメリット・デメリットなどについても解説しています。派遣社員を受け入れる際に活用してみてください。

派遣先均等均衡方式とは

派遣社員の処遇を決定するための方法の1つ

派遣先均等均衡方式は、派遣社員の給与や福利厚生を決定する際に用いられる方法の一つです。この方式では、派遣社員が派遣先企業の正社員と比較して、公正な待遇を受けられるように調整されます。具体的には、基本給や賞与だけでなく、教育訓練や福利厚生などの面でも、正社員との均衡を考慮することが求められます。派遣社員が安心して働ける環境を整えるため、派遣先企業は自社の正社員の労働条件を明確にし、派遣元企業と連携して適切な待遇を設定することが重要となります。

改正労働者派遣法の「同一労働同一賃金」を実現するために定められた

派遣先均等均衡方式は、2020年の改正労働者派遣法における「同一労働同一賃金」の原則を実現するために導入されました。その中で、派遣先均等均衡方式は、派遣社員が派遣先の正社員と同等の待遇を受けられるようにするために設けられた方法です。これにより、派遣社員の給与や福利厚生が、派遣先企業の基準に基づいて決定されるようになりました。この方式の導入には、派遣先企業が正社員の待遇に関する詳細な情報を派遣元企業と共有する必要があり、透明性のある運用が求められます。

派遣先均等均衡方式と労使協定方式の違い

労使協定方式とは

派遣社員の待遇を規定する仕組みのこと

労使協定方式とは、派遣元企業が労働者代表または労働組合と協定を結び、派遣社員の賃金や待遇を独自に決定する方法です。協定には、厚生労働省が定める「一般賃金水準」以上の給与水準を設定することが求められます。これにより、派遣社員が業界や地域の平均的な水準で公正な賃金を得られるように調整されます。労使協定方式の利点は、派遣元企業が主体的に待遇を決定でき、複数の派遣先で統一的な賃金体系を維持しやすい点にあります。

比較対象の賃金が異なる

派遣先均等均衡方式と労使協定方式の違いとして、比較対象となる賃金が異なることが挙げられます。派遣先均等均衡方式では、終業式で同じ業務を行う正社員の賃金が比較対象となるため、比較対象の社員の情報を基に派遣社員の基本給や手当を個別に検討します。一方で、労使協定方式では同じ業務に従事している一般的な労働者の賃金が比較対象となります。同じ職務内容の一般的な労働者の賃金水準は賃金構造基本統計調査や職業安定業務統計を参考にし、地域等を考慮した上で平均的な賃金以上となるように算出し適用されます。

就業先企業が派遣会社へ提供する情報量が異なる

派遣先均等均衡方式では、派遣元企業が派遣社員の待遇を決定するために、派遣先企業から詳細な情報を提供してもらう必要があります。具体的には、派遣先の正社員の給与や賞与、福利厚生、教育制度などのデータを開示してもらい、それに基づいて派遣社員の待遇を決める仕組みです。一方、労使協定方式では、派遣先企業からの情報提供は必要なく、派遣元企業が業界水準をもとに待遇を設定できます。そのため、労使協定方式のほうが派遣元企業にとっては運用しやすい側面がありますが、適切な労使協定を締結する責任も求められます。

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派遣先均等均衡方式のメリット

派遣元企業のメリット

人材が集まり派遣がしやすくなる

派遣先均等均衡方式を採用することで、派遣社員は派遣先の正社員と均衡の取れた待遇を受けられるため、魅力的な労働環境が提供できます。その結果、派遣元企業にとっては優秀な人材が集まりやすくなり、採用のしやすさが向上します。また、派遣社員の待遇が安定することで、求人応募の増加や登録者の確保につながります。さらに、労働条件が明確になることで、派遣先との契約交渉がスムーズになり、ミスマッチのリスクを減らせる点も大きなメリットです。

派遣社員の定着率が高まる

派遣先均等均衡方式では、派遣社員が安定した給与や福利厚生を受けられるため、職場への満足度が向上します。その結果、派遣社員がより長く働く傾向が強まり、定着率が向上します。派遣元企業にとっては、頻繁な人材入れ替えが減ることで、採用や研修にかかるコストを削減できるという大きなメリットがあります。また、派遣社員の定着率が高まることで、派遣先企業からの信頼も得やすくなり、長期的な取引につながる可能性が高まります。安定した人材供給を実現することで、派遣元企業の事業基盤の強化にも貢献するでしょう。

派遣先企業のメリット

優秀な人材が集まりやすい

派遣先均等均衡方式を採用すると、派遣社員が派遣先の正社員と同等の待遇を受けられるため、求職者にとって魅力的な就業先となります。その結果、派遣元企業に登録する優秀な人材が増え、派遣先企業はより高いスキルや経験を持つ派遣社員を受け入れやすくなります。さらに、派遣社員の待遇が向上することで、モチベーションや職務意識が高まり、業務への積極的な取り組みが期待できます。また、派遣社員と正社員の待遇差が少なくなることで、職場の一体感が生まれ、コミュニケーションが円滑になるという効果もあります。長期的には、職場環境の改善や生産性向上にも寄与するでしょう。

派遣社員のメリット

待遇のいい企業で仕事ができること

派遣先均等均衡方式では、派遣社員が正社員と同様の待遇を受けられるため、より良い労働環境で働ける可能性が高まります。例えば、給与水準が派遣先の正社員と同等であれば、生活の安定にもつながり、将来のキャリアプランを立てやすくなります。また、賞与や昇給、福利厚生などの面でも正社員と同じ待遇が受けられる場合があり、長期的に働くことへの安心感が増します。加えて、教育研修の機会が充実している企業で働ける可能性も高まり、スキルアップのチャンスが広がるのも大きなメリットです。

不合理な待遇さが生まれないこと

従来の派遣労働では、正社員と同じ業務をしていても給与や福利厚生に大きな差があることが問題視されていました。しかし、派遣先均等均衡方式を採用することで、こうした不合理な待遇差が解消されます。派遣社員も正社員と同等の評価を受け、公平な賃金や福利厚生が提供されることで、働きがいのある環境が実現されます。また、職場内での心理的な負担が軽減され、より積極的に業務へ取り組む意欲が高まります。この方式が広がることで、派遣社員が社会的に正当な評価を受け、安心して働ける環境が整っていくことが期待されます。

派遣先均等均衡方式のデメリット

派遣元企業のデメリット

派遣社員に納得してもらえるような説明が難しい

派遣先均等均衡方式では、派遣社員の待遇が派遣先企業の正社員と均衡するように決定されますが、その詳細な算出方法や基準を派遣社員に納得してもらうことが難しい場合があります。特に、派遣先企業ごとに待遇が異なるため、「なぜ同じ業務なのに別の派遣先では給与が違うのか」といった疑問を持たれることもあります。さらに、正社員の給与体系が複雑な場合、派遣社員の待遇計算も難しくなり、説明が一層困難になります。こうした状況が発生すると、派遣元企業は派遣社員からの信頼を得るために、丁寧な説明や情報開示を行う必要があり、負担が増すことがデメリットとなります。

派遣先企業のデメリット

担当者の負担が大きくなる

派遣先均等均衡方式を導入するには、派遣社員の待遇を自社の正社員と比較し、適切な水準を決定する必要があります。そのため、派遣先企業の人事や労務担当者は、正社員の給与体系や福利厚生、昇給制度などの詳細な情報を派遣元企業に提供しなければなりません。また、派遣元企業と待遇の調整を行いながら、契約内容を適正に管理する必要もあります。こうした業務の増加により、担当者の負担が大きくなり、特に派遣社員の受け入れが多い企業では、運用コストの増大や業務の煩雑化が懸念されます。結果として、派遣の受け入れ自体を抑制する企業が出る可能性もあり、柔軟な人材活用の妨げとなるリスクがあります。

派遣社員のデメリット

想像していた働き方でないと早期退職の可能性がある

派遣先均等均衡方式では、派遣社員が正社員と均衡した待遇を受けることになりますが、その待遇が自身の希望に合わない場合不満を抱く可能性があります。例えば、給与水準は高くても福利厚生が自分の期待と異なっていること、昇給制度がないこと、業務内容が想像していたものと違うなどの理由で、早期退職を考えるケースもあります。また、派遣先ごとに待遇が異なるため、前の職場と比較してしまい転職を繰り返すリスクも高まります。これにより、安定したキャリアを築きにくくなる可能性があり、派遣社員にとっては慎重に就業先を選ぶ必要がある点がデメリットとなります。

派遣先均等均衡方式のポイント

比較対象労働者の選定を行う

派遣先均等均衡方式で派遣先企業が対応することとして、比較対象となる労働者を選出する必要があります。派遣社員を受け入れる際に行ってもらう業務と同種の業務を行っている自社の社員を選出し待遇情報をまとめましょう。比較対象となる労働者の選定には、職務内容や職務内容に基づく配置の変更範囲が同じとなる社員、業務内容や責任の程度が同等となる社員などが挙げられます。また、先述した内容に相当する均衡待遇が確保された有期雇用社員などの選定の対象となります。

待遇等に関する情報を提供する

比較対象となる労働者を選定した後は、派遣先に必要な待遇情報を提供することも派遣先均等均衡方式を行う上で必要となります。提供する情報は、職務内容の範囲や雇用形態、比較対象となる労働者の選定理由、待遇の内容や目的、待遇を決定するにあたっての考慮事項などです。派遣先企業が派遣元企業へ情報提供を行う際には、電子メールやファクシミリなどの書面を交付する必要があります。また、書面の移しを派遣終了日から3年間保存しなくてはならないため、注意しましょう。

教育訓練を実施する

派遣先均等均衡方式を実施する際には、教育訓練を実施する義務があります。派遣先の企業は自社の正社員と同じように派遣社員にも業務に必要な能力を身につけるための教育訓練を実施する義務を負っています。これは、労働者派遣法で定められています。派遣先企業は、派遣社員に対して業務に必要な能力を身につけてもらう場合、人材派遣会社から要請があった際には、派遣社員に教育訓練を実施するなどの必要な措置を講じなければなりません。例外として、人材派遣会社が実施可能な範囲での教育訓練の実施は除外されます。

福利厚生施設の利用機会の付与を行う

派遣先均等均衡方式を導入する際のポイントとして、福利厚生施設の利用機会を付与することも重要です。派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で不合理な待遇差を設けることが禁じられています。そのため、福利厚生施設の利用機会についても公平性が求められます。社員食堂、休憩室、更衣室、シャトルバスなど、通常の労働者が利用できる施設については、派遣労働者にも同様に利用機会を与える必要があります。ただし、派遣労働者の業務内容や勤務形態によって合理的な理由がある場合は、その限りではありません。

まとめ

派遣先均等均衡方式の特徴を理解し自社にあった選択をしよう

派遣先均等均衡方式は、派遣労働者に対して派遣先の通常の労働者との不合理な待遇差をなくすことを目的とした制度です。職務内容や責任の程度、成果に応じた待遇の均等が求められ、特に賃金や福利厚生の取扱いに注意が必要です。自社においてこの方式を選択する際は、制度の趣旨や必要な対応事項を正しく理解し、実務的な整備や社内体制の確認を行うことが重要です。派遣先均等均衡方式の特徴や注意点を理解し、自社にとって適切な派遣労働者を雇用する方法を選択しましょう。

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