記事更新日:2024年09月03日 | 初回公開日:2024年09月03日
従業員代表とは、事業所などにおける労働者の過半数を代表するものです。一般的には労働組合がこの役割を果たしますが、従業員の過半数を組織する労働組合がない事業所は、従業員代表を選出することが労働基準法によって定められています。なお、制度のあり方やその権限等については、労働組合は労働組合法によって明確に規定されています。しかし、従業員代表制は法制化されていないのが現状です。
従業員代表に似た意味を持つ言葉として、労働組合が挙げられます。労働組合は従業員代表と同様に、会社と対峙して交渉などを行う主体です。ただし、従業員代表と労働組合は主に以下の各点において異なります。従業員代表は個人であるのに対して、労働組合は組合員によって構成される団体です。また、団体交渉などの団体行動権は、労働組合のみに認められています。さらに、従業員代表は常に、事業場等の労働者の過半数を代表する者です。これに対して労働組合は、必ずしも事業場の労働者の過半数が所属しているとは限りません。
従業員代表の役割として、労働者の意見をまとめ会社との間で折衷する役割が挙げられます。従業員代表は、会社との間で労使協定を締結し、または会社が就業規則や寄宿舎規則を作成・変更等をする場合に選出されます。労使協定・就業規則・寄宿舎規則は、いずれも事業場等における労働条件を定めるものです。従業員代表には会社の主張に対して労働者側の要求を提示し、労働条件の合理化を目指して交渉することが要求されます。
従業員代表の役割として、36協定を締結することが挙げられます。36協定とは、労働者に法定時間を超えて働いてもらう場合や休日出勤をお願いする場合に必要な協定のことを意味します。従業員代表には、36協定に記載された内容について会社と協議し、必要があれば内容の変更を求め最終的に署名や押印するか否かを決定する権限があります。36協定の内容を変更する際も、従業員代表は同様の役割を担います。
従業員代表を選出するタイミングとして、労使協定締結時があります。事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、従業員代表が労使協定の締結当事者となります。労使協定を締結すべき場合の例はいくつかあります。例えば、事業場外みなし労働時間制について、所定労働時間以外のみなし労働時間を定める場合があ挙げられます。労働者に時間外労働または休日労働をさせる場合も同様です。また、フレックスタイム制を導入する場合も当てはまります。
従業員代表を選出するタイミングとして、就業規則を作成・変更する場合が挙げられます。常時10人以上の労働者を使用する事業場において、就業規則を作成または変更する際には、労働者側の意見を聴く必要があります。労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には従業員代表の意見を聴く必要があります。なお、就業規則の作成・変更を労働基準監督署へ届け出る際には、従業員代表(または労働者の過半数で組織する労働組合)の意見書の添付が必要です。
従業員代表を選出するタイミングとして、寄宿舎規則を作成・変更する場合が挙げられます。事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させている場合において、会社が寄宿舎規則のうち以下の事項を新たに定め、または変更する際には、従業員代表の同意を得なければなりません。その事項は以下の通りです。起床、就寝、外出および外泊に関する事項。行事に関する事項。食事に関する事項。安全および衛生に関する事項。
従業員代表になることのできない人として、管理監督者が挙げられます。労働基準法では、監督または管理の地位にある労働者、すなわち管理監督者につき、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用除外としています(同法41条2号)。管理監督者は従業員代表になることが認められていません(労働基準法施行規則6条の2第1項第1号)。理由は、管理監督者は経営者と一体的な地位にあるため、事業場の労働者を代表するのにふさわしくないからです。管理監督者に該当するかどうかは、いくつかの要素を総合的に考慮して判断されます。
従業員代表になることできない人として、使用者の意向に基づき選出されたものが挙げられます。使用者の意向に基づき選出された者は、従業員代表として認められません(労働基準法施行規則6条の2第1項第2号)。なぜなら、従業員代表は、事業場の労働者を代表して、会社と対等に交渉すべき立場であるからです。会社の意向に基づいて選出された者は、会社の意向を忖度するなど対等な交渉が期待できないため、従業員代表の資格がないとされています。
従業員代表に対する使用者の義務として、従業員代表であることを理由とした不利益な取り扱いの禁止が挙げられます。使用者は、労働者が従業員代表であることや、従業員代表になろうとしたこと、または従業員代表として正当な行為をしたことを理由として当該労働者に対して不利益な取り扱いをしてはいけません(労働基準法施行規則6条の2第3項)。その例としては、解雇・降格・出勤停止・減給・閑職への配置転換・賞与の減額などが挙げられます。
従業員代表に対する使用者の義務として、従業員代表の義務を円滑に遂行できるように配慮する義務が挙げられます。使用者は、従業員代表がその事務を円滑に遂行できるように、必要な配慮を行わなければなりません(労働基準法施行規則6条の2第4項)。使用者が行うべき配慮の例としては、労働者の意見を集約するために必要な事務機器や会議や事務を行うスペースの提供などが挙げられます。
従業員代表の選出方法として、民主的な方法が挙げられます。まず、就業規則の意見などを通じて36協定を締結するため従業員代表の選任を実施するという旨を社内全体に伝えます。そして、投票や挙手などを通じて選出手続きを行います。ただし、この際はあくまで従業員の過半数が代表となる者を支持する事実が明確になる手続きを行っているかが重要です。よって、話し合いや会議などで決定することも可能です。
従業員代表の選出方法として、立候補による方法が挙げられます。まず注意すべきなのは、手を挙げてくれる従業員が誰もいないというケースは決して珍しいことではありません。そのため、制度の意図を明確に説明し従業員代表になることで不利益を被ったりはしないことを伝えることが重要です。そうすることで従業員になる不安が解消され立候補を検討する可能性が高まるでしょう。加えて、会社の人事労務をより良くする機会に主要人物として関われるなど、希少な経験が得られることやメリットを伝えることも効果的です。
従業員代表の選出方法として、リモートによる方法が挙げられます。現在は、テレワークなどを推奨する企業も多く、様々な業務や会議がリモートで行われることは珍しくありません。希望する従業員を集めることが難しい場合は、従業員代表として選出する者に関する同意書のデータなどを送り承認の有無を回収する方法も良いでしょう。また、正社員だけでなくパートやアルバイトも手続きに参加できる必要があるため、普段からコミュニケーションツールなどのネットワークを整備しておくことが重要です。
従業員代表の選出の際の注意点として、事業場ごとに選出することが挙げられます。事業場とは、1個の事業を行っている場所を指します。原則として同一の場所にある事業所等が1つの事業場とされますが、出張所や支所などで規模が著しく小さいものについては、直近上位の機構と一括して1つの事業場と取り扱われることがあります。就業規則の作成・変更については、常時10人以上の労働者を使用する事業場においてのみ従業員代表の意見を聴くことが義務付けられています。
従業員代表の選出の際の注意点として、労働者側を主導として選出する方法が挙げられます。使用者の意向に基づいて選出された者は、従業員代表として認められません。そのため、会社は従業員代表の選出手続きに関与せず、労働者側主導で従業員代表を選出させることが重要です。特に従業員代表との間で労使協定を締結する場合、従業員代表が管理監督者であるかまたは会社の意向によって選出された事情が認められると労使協定が無効となってしまいます。また、悪質なケースでは刑事罰が科される可能性もあります。
従業員代表の選出の際の注意点として、選出に関する記録は残しておくことが挙げられます。従業員代表が適切な方法によって選出されたことを示すためには、選出方法などに関する記録を残しておくことが重要です。例えば、従業員代表を選出した会議などの議事録を労働者側に作成させた上で、会社に提出させることが考えられます。また、実際に従業員代表として選出された労働者については、その当時の労働条件などを立証できるようにしておくことが大切です。従業員代表の選出方法は、労働基準監督官の調査における指摘や、労働者側とのトラブルのリスクが高いため注意が必要です。
このように、従業員代表は労働組合と同様に労働者の意見をまとめ会社と労働者の間に立つ役割があります。また、労使協定や36協定の締結にも必要なポストです。労務関係の法律の下こうした事項は定められているので、これらに関する法律の知識をしっかりと理解し従業員代表を選出していく必要があります。是非この記事を参考にし従業員代表の役割や選出について理解を深めてください。最後までお読みいただきありがとうございます。
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