記事更新日:2025年09月17日 | 初回公開日:2025年09月17日
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相談役とは、会社の経営について助言する役割のことです。主に社長や会長といった役職を退任した人物が、経験と知見を基に現経営陣へ助言を行う役割を担います。会社法で定められた役職ではないため、法的な権限や責任は伴いません。設置は各企業の任意であり、具体的な業務内容は委嘱契約によって定められます。経営戦略に関するアドバイスや重要事項の諮問に応じ、意思決定そのものには直接関与しないのが一般的です。企業の成長を後方から支える、経営の指南役やご意見番といった存在といえるでしょう。
相談役と顧問の違いは、人物の出自と専門分野にあります。相談役は、その企業の社長や役員を長年務めた人物が就任するケースが一般的で顧問は弁護士、公認会計士といった特定の高度な専門知識を持つ外部の専門家が就任します。相談役は経営全般にわたる包括的な助言を期待されるのに対し、顧問は専門領域に特化したアドバイスを求められます。自社の状況に応じて、内部に詳しい相談役か外部の専門家である顧問かを選択する必要があるでしょう。
代表取締役と相談役の違いは、会社を代表する権限と業務執行に関する最終的な責任を負うかどうかにあります。代表取締役は会社法に基づいて登記された企業の最高責任者で、業務全般に関する意思決定を行い、その結果に対して全責任を負う立場にあります。一方、相談役は会社法上の役員ではなく、企業の代表権を持ちません。経営会議に出席して意見を述べることはあっても、あくまで助言の範囲に留まります。最終的な経営判断を下す権限はなく、法的な責任も発生しないのが通常です。
取締役と相談役の違いは、取締役会における議決権の有無にあります。取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関である「取締役会」の構成員です。重要な経営課題について審議し、一人一票の議決権を行使して経営方針を決定する権限と責任を持っています。一方、相談役は議決権を持たず、取締役会でオブザーバーとして意見を求められるケースはありますが、会社法に基づいた決議に加わることはありません。経営の意思決定機関の一員である取締役に対し、相談役は外部から助言を行う存在といえるでしょう。
"近年、相談役制度を廃止または見直す企業が増えてます。背景には、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を求める社会的な要請があります。役割や権限が曖昧になりがちな相談役の存在が、経営の透明性を損なうリスク要因と見なされるケースが増えてきました。特に、株主や海外投資家からは、報酬や待遇の妥当性について厳しい目が向けられるようになっています。上場企業を中心に制度そのものの必要性を問い直し、廃止する企業が目立っています。企業の社会的責任が重視される現代において、相談役制度は大きな変革の時期を迎えています。
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相談役を廃止する企業が増えている理由として、その役割の透明化の動きが進んでいることがあげられます。相談役の職務内容や権限は会社法などで定義されておらず、企業ごとに位置づけが異なり、社外のステークホルダーから活動実態が見えにくいという課題がありました。株主から「高額な報酬に見合う貢献をしているのか」という疑念が生じやすく、金融庁や東京証券取引所は、役員経験者の処遇に関する情報開示の強化を企業に求めています。ガバナンス上のリスクを回避するために制度の廃止を選択する企業が増加しています。
相談役を廃止する企業が増えている理由として、院政による不適格な経営判断のリスクがあげられます。社長や会長を退任した相談役は、社内に依然として強い影響力を保持していることが少なくありません。相談役の影響力が、現経営陣によるスピード感のある経営判断を妨げる可能性があります。過去の成功体験に固執するあまり、市場の変化に対応した新たな戦略策定の足かせとなり、企業の成長を阻害するリスクとして認識されるようになりました。健全なガバナンス体制を構築するため、相談役(旧経営陣)が現経営陣の意思決定に影響を及ぼす余地をなくすべきだと判断する企業が増えています。
相談役を設置するメリットとして、専門知識に基づくアドバイスを受けられる点があげられます。企業のトップとして長年経営に携わってきた人物は、業界特有の知識や事業運営のノウハウだけでなく、課題を乗り越えてきた経験があります。外部のコンサルタントから得られない、自社の歴史を理解した上でのアドバイスは、経営判断の精度を大きく向上させるでしょう。経験豊富な相談役は、企業の持続的成長を支える貴重な羅針盤となります。
相談役を設置するメリットとして、人脈を活用できることもあげられるでしょう。業界のキーパーソンや金融機関、行政機関との関係は、一朝一夕に築けるものではありません。相談役の貴重な人脈は新規事業の立ち上げにおけるパートナー探しや、大手企業とのアライアンス締結、資金調達といった局面で効果を発揮します。現経営陣だけではアプローチが難しい相手との橋渡し役を担ってもらうことで、事業展開を加速させる可能性も秘めています。相談役の持つ人脈は企業の新たなビジネスチャンスを創出する上で、強力な武器となります。
相談役を設置するメリットとして、取引先との関係を維持できる点があげられます。創業者や長年トップを務めた人物が退任した場合、個人の信頼関係で成り立っていた取引が不安定になるリスクも否定できません。相談役として会社に残り、引き続き会社に関与することで、取引先に対して安心感を与えることができます。重要な商談や記念行事といった場面に相談役が顔を出すだけでも、信頼関係を継続させる効果が期待できるでしょう。相談役は経営のバトンタッチにおいて、築き上げてきた取引先との関係をスムーズに次世代へ移行させる潤滑油の役割を果たします。
相談役の報酬は大企業の最高額帯で、年間2,000万円から3,000万円が相場とされています。役員報酬とは異なり、業務委託契約に基づく顧問料として支払われるケースがほとんどで、中小企業だと更に低い相場となります。報酬額を決定する際は期待する貢献度や稼働時間、他の役員との報酬バランスを考慮して、報酬額が妥当なのかを、株主に対して根拠をもって説明できるようにしましょう。透明性を確保するためにも、なぜその金額になるのかという決定プロセスを明確にしておくことが、後のトラブルを避ける上で重要になります。
相談役を置く流れは、「委嘱規程」の作成が第一歩です。会社法上の根拠規定がない相談役という役職は、委嘱規程が基本となります。規程には設置の目的、具体的な職務内容、権限の範囲や任期など項目を具体的に盛り込むことが不可欠です。特に、権限の範囲は前述した「院政」のリスクを防ぐうえで極めて重要といえるでしょう。規程を整備することで相談役というポジションの透明性を確保し、社内外への説明責任を果たすことにもつながります。安易に人事を決めるのではなく、まず規程で役割をデザインすることが成功の鍵です。
相談役を置く流れとして次に、候補者を選定します。一般的には社長や会長を退任した人物が就任しますが、旧経営陣だけが選択肢ではありません。重要なのは、作成した委嘱規程に定められた職務を遂行するのに適した人物を選ぶことです。経営課題の解決に貢献できる知見や人脈があるか、現経営陣と協力関係を構築できるかなどを選定の基準にして、時には外部から特定の分野の専門家を招聘するのも有益です。相談役の候補者の選定は、企業の未来を左右する重要な人事判断です。
相談役を置く流れとして次に、報酬を決定するプロセスに移ります。報酬額は、委嘱規程で定めた職務内容や想定される貢献度に基づいて、算出します。報酬額は常勤か非常勤か、月にどの程度稼働するかで変動します。算出根拠を候補者に提示し、交渉を通じて双方の合意を形成して、後の金銭トラブルを避けましょう。報酬体系には固定の月額報酬だけでなく、新規事業の成功といった貢献に応じたインセンティブ報酬を組み込むことで、双方のモチベーション向上が期待できます。最終的に合意した内容は、必ず委嘱契約書に明記しましょう。
相談役を置く流れの最終ステップとして、取締役会で承認を得ましょう。相談役は会社法上の役員ではありませんが、設置は経営上の重要な決定事項です。コーポレートガバナンスの観点からも、取締役会の公式な承認が必要です。取締役会では、なぜ相談役が必要なのかという設置理由、候補者の選定プロセス、委嘱規程の内容、報酬の妥当性などを説明して審議を求めます。取締役会で説明責任を果たすことで経営の透明性を担保しましょう。取締役会の承認をもって、候補者と正式な委嘱契約を締結します。
相談役を設置する際の注意点として、社会保険等の扱いがあげられます。相談役との契約が、「業務委託契約」であれば企業の従業員ではないため、原則として社会保険の加入義務は発生しません。しかし、出勤日や勤務時間が厳密に管理されている、業務上の具体的な指揮命令を受けている、など労働者と認められた場合、社会保険の加入義務が発生する可能性があります。税務調査などで指摘されるリスクもあるため、契約内容と勤務の実態が乖離しないよう、専門家に相談しながら慎重に運用することが求められます。
相談役を設置する際の注意点として、任期や定年を定めておくことが重要です。任期を設けないと相談役の存在が形骸化してしまったり、組織の新陳代謝を妨げたりするリスクがあります。コーポレートガバナンスの観点からも、任期を1年や2年といった期間で区切り、更新の際に必要性や貢献度を取締役会で改めて判断する仕組みが望ましいでしょう。相談役に就任できる年齢の上限や、定年を規程で定めることも組織の若返りのために重要です。健全な世代交代を促し、組織の活力を維持するために、任期や定年を制度に組み込みましょう。
相談役のデメリットやメリットを理解し、自社の経営状況や課題に合わせて任命するか判断しましょう。相談役は元経営者の豊富な経験や人脈という経営資源を活かすことで、企業の成長に貢献する可能性を秘めています。一方、役割や権限が曖昧なままでは院政リスクやガバナンスの低下といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。なぜ自社に相談役が必要なのかを明確にし、委嘱規程によって役割と責任を明確にしましょう。世の中の廃止の流れに安易に同調するのではなく、相談役の果たす役割を見極めることが重要です。
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