改正健康増進法のポイントを分かりやすく解説【飲食店・喫煙室の基準は?】

記事更新日:2020年07月16日 初回公開日:2020年07月12日

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2020年4月から、タバコに関する法令が改正・全面施行されたのをご存知でしょうか。喫煙をめぐっては本法令に限らず色々な場所で議論がなされており、喫煙可能な場所が年々減りつつあるのは実感があるかと思います。ただ、本法律の施行により受動喫煙への配慮はマナーではなくルールとなりました。喫煙習慣の有無に関わらず全国民に関係する法律で、プライベートだけでなくオフィスシーンにおいても大変重要な問題となりました。本記事ではこの「改正健康増進法」に関して、その成立背景や規則のポイントを解説します。日々の生活と照らし合わせながら確認していきましょう。

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改正健康増進法とは

2020年4月1日に改正された健康増進法の事

「健康増進法」は国民の健康維持と現代病予防を目的として2002年8月に公布された法律ですが、その内容の一部を改正するものが「改正健康増進法」です。2018年7月に成立し、2019年7月から一部施設での施行を経て、2020年4月1日より全面施行されました。主にタバコの煙を非喫煙者が吸い込むこと、いわゆる受動喫煙を防止するための法律です。この法改正により、受動喫煙を防止するための取り組みは、これまでの「マナー」から「罰則付ルール」へと変わります。タバコを吸う人も吸わない人も、国民の一人一人が当事者意識を持ち、主体的に向き合うことが必要な問題になったということですね。

望まない受動喫煙を防止するためのルール

この法律の基本的な考え方は「望まない受動喫煙をなくすこと」です。受動喫煙が他人に与える健康影響と、喫煙者が一定程度いる現状を踏まえ、特に屋内において、受動喫煙にさらされることを望まない者がそのような状況に置かれることのないようにすること。これが本法律の目的です。なおこの改正法で言及する「タバコ」には紙巻、葉巻など燃焼による煙が発生するものと、「IQOS」「glo」「プルーム」など燃焼による煙が発生しない「加熱式タバコ」の2種類が想定されています。近年普及が進んでいる加熱式タバコも、規制の対象である点をしっかりと覚えておきましょう。

改正健康増進法の目的

未成年者や病気を持つ方への配慮

次に、本法律の改正の目的を考えてみましょう。一つ目に、受動喫煙に関して子どもなど20歳未満の者、患者等に特に配慮をしようという動きがあったためです。子どもや患者等は受動喫煙による健康影響が大きいこと、また自らの意思で受動喫煙を避けることが難しい点が懸念されています。すでに、病院や行政機関庁舎、保育園・幼稚園から各種学校、児童福祉施設では2019年7月より本法律が部分的に施行されていました。このような未成年者・患者が主たる利用者となる施設では、屋内だけでなく屋外も原則全面禁煙が義務付けられます。

世界最低レベルの日本のタバコ評価を改善するため

そして、この改正法は日本社会だけでなく世界へのアピールも目的としています。世界保健機関(WHO)は、タバコの対策について一定の基準を設け、国ごとの政策を評価していますが、現在、日本は「世界最低」ランクに位置づけられているのです。今回の改正健康増進法は、この評価基準を考慮したものになっています。実は、この改正健康増進法が施行されたとしても、最低ランクから1段階しか上がらないことが指摘されてはいるのですが、今回の改正は今後の日本政府の受動喫煙対策の第一歩だと考えることができるでしょう。

改正健康増進法が注目される背景

東京オリンピックまでに喫煙者を減らし生活しやすい国にするため

次に、この法改正が注目される背景についても考えていきましょう。まずはこの法改正が2020年の東京オリンピックを見越したものであり、オリンピックを意識した社会変革であるという点。国際オリンピック委員会(IOC)はWHOと共同で「タバコのない五輪」を提唱しています。ロンドンでは建物内禁煙、リオデジャネイロは敷地内禁煙とするなど、近年の五輪開催国はどの国も全面禁煙に向けた政策を罰則付きで打ち出していました。世界的イベントの実施にあたり、受動喫煙の撲滅は国際的なスタンダードになっており、それと比べると今回の法改正はまだ甘いようにも思えるくらいです。

健康について考える人が増えてきているから

日本社会全体を見ても、健康への意識の高まりが伺えます。特にたばこの煙に関しては、喫煙者が吸い込む主流煙と周りの人が吸い込む副流煙の2種類があり、主流煙に比べ副流煙はニコチン、タールなど科学物質が何倍も多く含まれていること。受動喫煙を原因とする肺がんや虚血性心疾患の年間死亡者数は推定6,800人で、その半数以上が職場の受動喫煙が原因とされていること。こういったデータはテレビなどマスコミでも頻繁に取り上げられていますよね。年々「肩身が狭い」思いをしている喫煙者も増えており、その割合が7割を超えた調査もありました。

改正健康増進法のポイント

屋内が原則禁煙

次に、本法律のポイントを解説します。まず大原則として、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等の施設において、屋内が原則禁煙となること。「屋内」とは、「外気の流入が妨げられる場所として、屋根があって、かつ、側壁が概ね半分以上覆われているものの内部」のことを指します。また「多数の者が利用する」とは、「2人以上の者が同時に、又は入れ替わり利用する」ことを指しています。ただ、施設における事業の内容や経営規模への配慮から、これの類型・場所ごとに、喫煙のための各種喫煙室の設置が認められています。

喫煙室にも決まりがある

本改正法で認められる喫煙室は、「喫煙専用室」「加熱式タバコ専用喫煙室」「喫煙目的室」「喫煙可能室」の4種類に分類されます。喫煙専用室と加熱式タバコ専用喫煙室は、原則禁煙の施設の一部に設置可となっており、つまり屋内を全面禁煙にしなくても良いというルールです。喫煙目的室を設置できる施設は、シガーバー、タバコ販売店、公衆喫煙所など、喫煙をサービスの目的とする施設のみ。喫煙可能室は経過措置扱いで、小規模飲食店のみに制限されています。また、喫煙専用室以外の3種類では飲食物の提供も可能です。このように、喫煙空間もその要件により細かく分類、規制されています。

タバコの煙防止にかかる技術的基準が定められた

加えて、本法律では、喫煙専用室等における「タバコの煙の流出防止にかかる技術的基準」が定められるようになりました。出入口において室外から室内に流入する空気の気流が0.2m毎秒以上であること、タバコの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること、タバコの煙が屋外または外部に排気されていること。これら3点が罰則付きルールとして厳格に規制されるようになります。なお、施設内が複数階に分かれている場合においては、この技術的基準に代えて、壁、天井等で区画した上、喫煙階と禁煙階を分ける取扱いも可能となります。

既存の飲食店の事業継続を考えた処置

一部先にも述べましたが、既存の経営規模の小さな飲食店については、本法律が事業継続に影響を与えることが考えられることから、経過措置として喫煙可能室の設置を可能としています。喫煙可能室は飲食を提供できる喫煙室のこと。2020年4月1日以前から営業している飲食店で、客席面積100㎡以下であること、資本金5,000万円以下の中小企業もしくは個人経営であること、従業員がいないこと、この4点を全て満たした場合はこの経過措置を利用することができます。喫煙可能室を設置した場合は保健所に喫煙可能室設置施設届出書」を提出する必要があるので注意してください。

事業者への支援金等が付与される

事業者が受動喫煙対策として各種喫煙室の設置を行う際の支援策として、財政・税制上の制度が整備されています。財政支援においては、一定の基準を満たす各種専用の喫煙室等を設置する際、その費用について助成を行います。社員数、資本金、喫煙室の機能など幾つかの要件を満たせば、上限を100万円として経費の2分の1が受動喫煙防止対策助成金より補助されるので、是非確認してみましょう。他にも税制上の支援として中小企業等が経営改善設備等を取得した場合について、喫煙専用室に係る器具備品等を、特別償却又は税額控除の対象とするものがあります。

喫煙室の標識掲示の義務化

改正法では、屋内に喫煙可能な設備を持った施設に対し、指定された標識の掲示が義務付けられています。施設管理者は施設の出入口と喫煙室出入口の両方に、誰が見ても一目で分かるような標識を掲示することが義務となります。飲食店の場合は禁煙の場合でも掲示義務ですので、注意しましょう。標識デザイン例は厚生労働省ホームページなどで公開されており、誰でもダウンロードができるようになっていますが、このデザインは必要事項が記載されていれば独自で作成し掲示するのも問題はないようです。

20歳未満の方の喫煙エリア立ち入り禁止

改正法のポイントとして是非覚えておかなければいけないのは、20歳未満の未成年者の喫煙エリアの立ち入りを徹底的に禁止としている点です。これはたとえ喫煙を目的としない場合であっても、屋内、屋外を含めた全ての喫煙室、喫煙設備へは立入が禁止となります。さらに、これはたとえ従業員であっても未成年者は立ち入ることができません。万が一、20歳未満の方を喫煙エリアに立ち入らせた場合、施設の管理者は指導・助言の対象となります。これは特に飲食店の学生アルバイトなどを想定しての規則といえますね。

従業員の受動喫煙防止対策

また改正健康増進法では、各施設の管理者に対し、従業員の受動喫煙を防止するための措置を講ずることを努力義務として設けています。併せて労働安全衛生法において、事業者に対して屋内における労働者の受動喫煙を防止するための努力義務を課しています。具体的な対応策は国のガイドラインで示し助言指導が行われたり、助成金等で支援されたりするので、所属する自治体等で確認しましょう。なお、同様に2020年4 月より施行された職業安定法において、従業員の募集を行う際にも、このような受動喫煙対策の取組について募集や求人申込みの際に明示する義務を課すこととされています。

義務違反時の罰則について

本法律の施行に伴い、義務に違反する場合については、まずは指導にて対応、指導に従わない場合等には、義務違反の内容に応じて勧告・命令等が行われます。改善が見られない場合に限って、罰則(過料)を適用することがあります。過料の金額については、都道府県知事等の通知に基づき、地方裁判所の裁判手続きにより決定されますが、最大50万円と覚えておきましょう。喫煙器具の撤去がされていなかったり、喫煙室の基準が適合しなかったりという場合には、最大額の50万円以下、立入検査への対応を拒んだ場合などは20万円以下の過料とされています。

改正された健康増進法は国のルールです

ルールを守り暮らしやすい国を作っていきましょう

以上、改正健康増進法に関してその成立の背景や守るべき義務の内容をまとめました。喫煙習慣は個人の嗜好ですが、今後、それを正しく楽しめるかどうかは社会環境に帰する部分が大きくなってきます。あくまでも、マナーではなく国全体のルールであり、喫煙者はその影響を理解した行動をとっていく必要があることを注意しましょう。一方で、非喫煙者も喫煙者側の意識を汲み取る必要がありますし、より良く暮らせる社会にするための工夫は双方の歩み寄りが必要ですね。全ての人が健康に暮らしやすい社会となるよう、まずはルールをしっかりと理解し、日々の生活を見直していきましょう。

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